P.S.「ありがとう」:旅立つあなたへ贈る唄
皆様こんばんは。十六夜まよです。
唐突ですが、単発で楽曲考察をしてみようと思います。
今回のテーマは
P.S.の向こう側 Sounded by CYaRon!
です。
Aqoursから派生する3人組ユニットのうち、千歌・曜・ルビィからなるこのユニットは、正統派アイドル!といった感じの可愛らしい曲と、シリアスな顔がギャップの魅力を生むバラード曲とを巧みに操る元気系ユニット、といったところでしょうか。
そんな彼女たちの楽曲の中でも熱狂的なファンが多い(?)この曲は、様々な観点から歌詞考察ができ、私の親交の深いフォロワーさんの中にも素敵な記事を書いている方がいます。
ぺこさん(@pecopeng)の書いた以下の記事は、読んだことのある方も多いのではないでしょうか?
この記事でぺこさんが語る「次元超越説」は非常に興味深いもので、楽曲の持つ可能性や歌詞の広がり、キャラとキャストが2人3脚で成長していく2.5次元コンテンツにおいての相互作用やさらにはコンテンツ終焉後の行く末等、深い考察が歌詞に沿って非常に納得のいく形で展開されていますので、まずはご一読をお願い致します。
ぶっちゃけこの曲についての解釈はぺこさんのこれで十分というような気が私自身してしまっていたりもするのですが……。
実はこの曲、私も結構好きです。CYaRon!の魅せる可愛い中にもアンニュイさや淋しさが滲んでくる絶妙な表情感は他の曲では味わえないものですし、描写されている世界観が本当に柔らかく、温かい。
だからこそ私は、別のアプローチでこの曲を読み解いていきたいと思います。
ぺこさんの記事を読む前に実際に私の頭のなかで展開されていた解釈を、TVアニメ2期が終わったこの段階で根拠を補強する形でアウトプットしようと思いますので、お付き合い頂ければ幸いです。
注)歌詞はいつものように下線と斜体で引用とします。
●手紙の行方
まずはポップなイントロからスタートするこの曲、Aメロ→Bメロの間はロ長調での展開だと思われます。このロ長調という調性は「積極的になると、大胆な誇りを表し
消極的になると清潔な純粋さを出す」と評されることがあり、この曲の持つ明るく動的なアクションと、ピュアでもの淋しげな感傷との2面性が見事に表れていると思います。
誰もいない カフェのテーブル
頬杖ついて考える
どうしてるかな 君は今ごろ
誰と過ごしてるの?
というルビィパート、この「君」が誰であるかは曲の解釈において注目点となりそうです。
この時「誰もいない」というのは、この曲の主人公が誰かと相談するわけではなく、ひとりで考え事をしている、ということが想像できますね。
なんとなく さっき買った
ポストカードを取り出して
「お元気ですか?」 書いてみたけど
次の言葉が探せない
千歌のこのパートではポストカードが登場します。「なんとなく」という気分は「さっき買ったポストカード」にかかっているように感じられて、何らかの目的を持った主人公がポストカードを購入することを決め、何かのメッセージを書き始めたことが推察できますね。
毎日 話しても足りないって 思ってた
曜のアンニュイなこのパートで、毎日話しても足りないと思ってた存在と、次の瞬間には「毎日話せない」関係になってしまう、別れが近いことが想像できます。
サビからは転調が入り、メロディのイメージもガラッと変わってきます。
調性は変イ長調、「夢想的で繊細、抒情的で壮麗」と表現される調です。
いまは遠いんだね さみしい気持ちで
つめたくなった 紅茶飲んでるよ
でもいつかいつかね
また会える気がするからさ
落ち込んでないよ
「さみしい気持ちで」と唄った直後に「落ち込んでないよ」というのは矛盾した感情ではあるのですが、淋しさを感じないわけもなく、だけど彼女たちは落ち込む素振りは見せずに、別れを迎えねばなりません。
「今は遠い」という心境は未来の自分たちを想像してのことか、ここは少しだけ、楽曲としてのアンリアルな部分が含まれる表現だと感じています。
「いつかまた会える気がする」という表現は、決して近くはない場所へ相手が行ってしまうことを逆説的に表現しているように感じられ、希望を持つような歌詞が逆にその淋しさを引き立てます。
こういった心の機微を繊細に表現するメロディはそれでもなお明るく、テンションの高い構成となっており、こちらでも裏に潜む淋しさが強調される形となっているように感じられます。
手書きだと照れちゃうね
ちいさな文字をながめ
だんだん下手っぴになってきたみたい
ボールペン くるりとまわした
2番頭は曜のソロパートからです。
現代の女子高生として描かれる彼女たちの普段のやり取りは、やはりメールやメッセージアプリなのだと思います。そんな中で敢えて手書きでのメッセージを贈るというのは照れもあるのでしょうか。
「下手っぴ」という言葉のチョイスがすごく可愛くて、等身大の魅力が溢れてきますよね。真剣に相手を想うからこそ、その字が下手に、不格好に見えてきてしまい、息をつくためにペンを回す。適当な手紙ならば、文字が下手っぴであることなんて気になりません。
離れてしまうなんて
ありえないことだよと 笑ってたね
こうやって笑いあった仲であっても、自然と時間は流れて別れはやってきます。
だからこそ、
最後にひとこと オマケみたいに
伝えておこう (P.S.…)
「どうもありがとう」
だっていつかいつかね
また会えるはずだからきっと
その日を待ってる
伝えるべき一番の言葉は「感謝」。
さあ、このP.S.が届く先、即ち「向こう側」にいるのは誰?という話になってきます。
●一瞬の気持ちの揺らぎ
前述のように、この曲は別れを迎える関係性を前に感謝とありったけの愛情を伝える物語を唄うものです。
そんな気持ちを伝えるため、少女たちは精一杯の明るさで一抹の淋しさを隠し、アップテンポなメロディを奏でるのですが……。
曲中に1箇所だけ、「淋しさ」の方が表に出て隠しきれなくなるポイントがあります。
返事なんかいらないけど
楽しかった季節
すこしだけ思い出して
胸がしめつけられて
切ないんだ
それがこのCメロ。
伴奏のメロディもこの瞬間は凪のように一瞬鳴り止み、3人の歌声だけが響きます。
「返事なんかいらない」から、せめて「すこしだけ思い出して」と願うのは、「楽しかった季節」。
再びのぺこさんです。
「季節」の解釈についてはぺこさんの記事でこの上ない説明がされているので、こちらを引用させて頂きます。
「楽しかった季節」の「季節」という言葉。ラブライブ!及びラブライブ!サンシャイン‼の楽曲では度々出てくる言葉で、私がとても好きな言葉です。
ラブライブ!シリーズの楽曲における「季節」という言葉は、単に春夏秋冬という意味ではなく特定の期間、瞬間、時間の流れといった意味を含みます。
この場合は「楽しかった季節」。昔の、「君」と一緒に過ごしていた時間、ということでしょうか。スクールアイドルである彼女たちの目線で考えると、それはスクールアイドルとして輝いていた瞬間と捉えることもできますね。
春夏秋冬それぞれの想いを紡ぎ、走りきった1年間。ともすればこの「季節」は「四季」。つまり1年間のスクールアイドル活動と取ることもできそうです。
では、3人が別れを告げる、スクールアイドル活動を共に過ごした人たちとは?
結論へといく前に、もう少しだけ曲を見ていきます。
大サビは1番2番のサビの繰り返しですが、
でもいつかいつかね
また会える気がするからさ
気のせいかもね
で少しだけ変奏があり、勢いを保ったままサビのメロディが繰り返される演出はポップな音使いをしながらも滝が落ちるような強烈な圧力をもたらす効果があり、ダメ押しと呼ぶに相応しいラスサビへとエネルギーを高めていきます。こういうの大好きですね。
歌い出しや、ライブの立ち位置から考えると、センターはルビィなのだと思います。
それでは、この曲は姉であるダイヤに宛てたものでしょうか。
それともCYaRon!が歌っていることを鑑みて、将来進学などで内浦を離れた曜を想い、千歌が歌う曲でしょうか。
それぞれそういった解釈も可能だと思いますし、聴く人の数だけ曲の世界は存在するはずなので先のぺこさんの解釈も含め、色々な可能性を考えながら曲に触れるというのは大変おもしろいことだと思います。
ではいよいよ、この曲にまつわる物語を、私の視点で展開していきましょう。
●3月、ある日の浦の星
「「「引退式?」」」
部室に揃ったメンバーが口を揃えて私に疑問符を投げかける。
まあ……いきなり言われても何のことだかわからないよね。
千歌「そう、引退式だよ、引退式!私達は部活動としてAqoursをやってきたでしょ?」
梨子「それと引退式?ってどういう関係が……?」
千歌「だから!どの部活も、最後の大会が終わったら3年生とのお別れ会みたいなのをやるでしょ?私達スクールアイドル部も、3年生の引退式をやる必要があると思うんだ!」
曜「あー……たしかに言われてみれば、そういう部活がほとんどだよね。水泳部でも夏の大会の後にはやってたかも。」
ルビィ「ラブライブ決勝大会が3月だったから、バタバタしてそれどころじゃなかったもんね……。もうすぐ卒業式で、そっちのことばかり考えちゃってたし。」
善子「なるほど。それで1,2年生だけが集められたってことね。クックック……我が眷属の旅立ちを祝福する最後にして最大の儀式、この堕天使ヨハネも全身全霊をもって……。」
花丸「善子ちゃんがやる気で何よりずら。でも千歌ちゃん、時間はあまりないよ?」
「ヨハネよっ!」という善子ちゃんのいつものセリフを聞きながら、私は皆にアイディアを説明する。
「--手紙と、唄が良いと思うんだ。」
と、いうわけで、少々私の妄想を垂れ流してみました。(やっぱりSS書くの難しいですね)
皆さんは学生時代に部活動をやっていましたか?
スクールアイドルに限らず、全ての学生の部活動やサークル活動には必ず期限があり、時が来れば最高学年の部員は引退という形で部を去ることになります。
大会の時期やその部の活動時間によってタイミングはまちまちだとは思いますが、いずれはその時が訪れ、部に残る他学年に送別される形で彼らは引退していきます。
そんな部活の引退式、心のこもった手紙や色紙等……温かい想いが、部に残るメンバーからプレゼントされるものではないでしょうか。
例えば私が所属していた合唱部では、3年生の引退によせて1,2年生は1曲新たな曲を練習し、引退の手向けとして演奏したりしました。
人数が多い部活だと色紙に寄せ書きをするパターンが多いですが、9人のAqoursだったら、手紙やポストカードといったメッセージを個人で用意することになるかもしれません。
そして浦の星女学院のスクールアイドル部でも、その例に漏れず3年生の引退式がひっそりと行われるのではないでしょうか?
もうおわかりかと思いますが、この「P.S.の向こう側」は、そんな3年生の引退式で、3つのうち唯一「3年生が含まれない」ユニットであるCYaRon!が手向けとしてプレゼントする、送別の1曲なのではないか、というのが私の解釈となります。
善子と梨子、花丸はそちらも3人でチームを組むかもしれませんし、それぞれ独自の方法で何かを用意するかもしれません。
ですが少なくとも、CYaRon!の3人はアイドルとして、今後も部に残る(浦女が廃校した後のAqoursの所在については明言されていませんが、ここでは特に気にしないこととします)メンバーとして、今できる精一杯のことは何だろう?と考えたときに「曲をプレゼントしよう!」となるのは自然のことかと思うのです。
そして同時に手渡されるメッセージカード。それを作成する際に悩んだり、淋しくなったり、そんな物語が紡がれた1曲。
サプライズ的になるのでしょうか。部室に3年生を招待し、突然始まるパーティ。
3年生へ口々に告げられる感謝の言葉達。
そんな中、あの軽快なイントロが流れ出し……。
曲の最後にはきっと、「ありがとう」の言葉とともにポストカードが手渡されるのだと思います。
真剣な想いを込めた、唄と手紙。
P.S.の向こう側には、苦楽を共にした最上級生、3年生の3人がいるのでした。
以上、如何だったでしょうか。
「こういう解釈もありだよなぁ」と、一つの可能性の形として。
いつかこの曲に再び触れた時に、そんな浦女での日常の一コマを「すこしだけ思い出して」貰えたら嬉しいな、と思います。
だらだらと続けてもこれ以上は説明ができそうにないので、今回はこのあたりで。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました!
Curtain Call:みんなが叶える物語
ーーみんなで叶える物語。
例えばそんなキャッチコピーをもつ、伝説となったグループがこの曲を唄ったのなら、タイトルは「WONDERFUL STORY」だったのかもしれません。
皆様お久しぶりです。十六夜まよです。
TVアニメラブライブ!サンシャイン!!が大団円を迎え、早くも2ヶ月近くが経とうとしております。
挿入歌に絡めて感想や曲考察をまとめていくこのブログですが、しばらく13話を真剣に考える時間を取れず、ズルズルとこんな時まで引っ張ってしまいました……が、そろそろ自分の言葉をまとめる時かなと思いやっと筆を執った次第です。
今回は2期第13話挿入歌
WONDERFUL STORIES Sounded by Aqours
2期最後の挿入歌となるこの曲について、感じたことをつらつらとまとめていこうと思います。
だいぶ時間が経ち、各々の中で第13話が、この曲が、そしてアニメ2期全体が整理され理解を深めている段階かとは思うので、新しい視点や奇抜な考察等は含まれていないと思いますが、お付き合いいただけると幸いです。
注)歌詞はいつものように下線と斜体で引用とします。
●STORIES
私が一番最初に気になった部分は、タイトルの「STORIES」が複数形であったことです。
勿論これは「STORY」=「物語」の複数形です。
つまるところ、「WONDERFULな物語"たち"」が唄われるこの曲ですが、この「物語たち」は一体誰の、どんな物語たちなのでしょうか。
まずは私なりに考えた数パターンの「STORIES」の解釈についてをまとめてみようと思います。
- Aqoursの物語
グループとしてのAqoursが、これまでに辿ってきた"キセキ"。
輝きに触れた千歌が自身も「輝きたい!」と始めたAqours。
実はこのAqoursには既に歴史があり、3年生が2年前に結成し、一度は夢破れ、そしてダイヤの働きにより再び動き出した物語。
夏の大会では一度敗退するも、新たな目標を得て再度走り出したAqours。
初の決勝大会出場を決めるも、廃校を免れることはできず再び目標を失ってしまったAqours。
最後は浦女生徒全員の希望を繋ぐため、歴史に名を刻むことで「物語」を永遠のものとしようとしました。
そして3年生の卒業を迎え、Aqoursのこの先は……?
実はまだ終わっていないAqoursの物語は、それだけでも多くの場面、歴史を切り取ることができ、この数々の"キセキ"はそのまま「STORIES」だと言うことができるでしょう。 - Aqoursメンバーそれぞれの物語
「スクールアイドルとして、輝きを目指しがむしゃらに駆け抜ける、9人の少女たちのストーリー。それがラブライブ!サンシャイン!!です。」
浦ラジでよく耳にするこのフレーズは、そのまま「STORIES」の答えになっていそうです。
勿論、1つの目標を目指し力を合わせているメンバーですが、ことAqoursに関してはその活動の中で各々が個人の自己実現のため、多くの葛藤や経験を通して成長を遂げています。
特に2期に入ってからはその描写は多く、メンバーそれぞれにフォーカスした時に9人分の色濃い物語が展開されていました。
Aqoursの活動を通して語られた、9人9色の青春の物語。これも「STORIES」となるでしょう。 - Aqoursの音楽の物語
私は挿入歌について、過去の記事で「節目節目でその歌詞には意味があり、内容は物語に寄り添ったものである」としていますが、それはつまりストーリーの中で物語を象徴する大きなまとめであるということです。
歌詞の中にも
思い出からは 流れるメロディー
とあるように、思い出(=物語)とメロディー(=挿入歌)は密接な繋がりがあります。
そしてこの曲の映像では、過去の挿入歌の場面、衣装を1期からすべて挿入してくる、という超必殺技が炸裂しました。
これまでのAqoursのキセキの中で、節目節目を飾ってきた挿入歌達が、最後のこの場面で一堂に会し、目まぐるしく画面を彩る光景はまさにキセキの共演と呼ぶに相応しく、それこそが「Aqoursが奏でてきた物語たち」なんだと言えます。 - "みんな"の物語
そして、ラブライブ!サンシャイン!!を通して輝くのは、千歌達Aqours9人だけではありません。劇中に登場した浦女の生徒たちをはじめ、応援してくれた家族、そしてSaint Snowの2人、決勝のAqoursを見た少女たち等、Aqours以外の登場人物について、それぞれの物語がそこにはありました。
さらにはキャストのあんちゃん達9人のAqours、楽曲のクリエイター陣や制作スタッフなどなど……現実世界まで広げると、そこには無数の輝きが存在します。極めつけは、私達ファン一同でしょうか。これまでのAqoursの輝きを目撃し、それぞれの形で自己実現を目指し、「輝きたい」と願う気持ちは、既にひとつひとつの「物語」として動き始めているはずです。そんな、輝きに触れたすべての人々の物語。これら全てについて素晴らしいものなんだよ、気がついてよ、と唄うこの曲は、まさしく「WONDERFUL STORIES」の名を冠するに相応しいのではないでしょうか。
冒頭で触れた、「μ'sなら『WONDERFUL STORY』だったのでは」という考えは、比較してどちらが良い悪いという話ではありません。
μ'sは、穂乃果は常に「みんな」との同調を大切にし、多くの問題は皆と分かち合うことで解決してきました。(責任感を一人で抱え込んでしまったために問題が起こったこともその一端だとは思います)
そうやって紡がれた物語は、μ'sが、そして地域の人々とが強く結びついて実現したひとつの大きな夢でした。それはまさしく「みんなで叶える物語」であり、「WONDERFUL STORY」と呼べるものでしょう。
一方Aqoursは、特に千歌は常に個々との対話を大切にしてきたように感じます。例えば1期第10話の梨子との場面、第11話の曜とのやりとり。
他のメンバーも3年生はそれぞれが悩みを抱えた時に別の2人が動く形でしたし、2期第8話ではルビィに対してダイヤだけが対応していました。
そして2期第12話の「勝ちたいか」を全員に問いかけるシーン。穂乃果だったら9人で会話し、「気持ちは一緒だよね」というようなまとめ方をするところを、千歌は全員と1対1で会話し、全ての想いを拾い集めていました。(直前の神田明神でのお参りのシーンも、願いをそれぞれが口にするというμ'sとの違いが印象的でした)
上記2.の項目とも関わりますが、Aqoursの活動の中で「Aqoursとして」とは別の形で、それぞれが「私はこうしたい、こうなりたい」という想いを持って、それぞれの輝きを求める物語が「ラブライブ!サンシャイン!!」だったというように感じているので、それぞれの想いを大切にする、というAqoursのスタイルは「みんなが叶える物語(達)」、即ち「WONDERFUL STORIES」と言えるのではないか、と私は結論づけました。
●千歌の「輝き」
そんな、それぞれの輝きを実現したい少女たちの物語で、主人公である高海千歌は、結局何を求め、何がしたかったのでしょう。
彼女の求めた「輝き」とは?という部分について、曲の内容ともリンクするので少しだけ考えてみようと思います。
- 紙飛行機の件
千歌の母と、志満、美渡がいる場面での会話で、「紙飛行機」に触れる部分があります。
紙飛行機についてはOPの中や2期第1話の段階から登場しており、当初から何を象徴するものなのか、という考察は色々されていたように感じます。
これが「自分の力で飛ばすもの」「自然には動き出さないもの」であり、夢や目標、輝きといった空へはばたくためには、最終的には自分の強い気持ちや胸に秘めた情熱のようなものを原動力としていかねばならない、という象徴であると私は感じました。
それはさておき、この高海千歌という人物、やはりなかなかに大変な人生を歩んでいるように感じています。
老舗旅館を切り盛りする夫妻のもとに生まれた、3人姉妹の末っ子ということになりますが……。
長女はその手腕から女将の不在を預かる若女将と言える存在で、器量もよく常に周囲からの期待を受け、また本人も努力を伴いつつそれに応えてきたと思います。
次女は多少ガサツなところがありながらも要領よく立ち回ることができ、竹を割ったような性格は人を惹き付け周囲の人間関係に恵まれているのだと思います。
そんな2人の姉と共に育った千歌にとって、どうしても超えられない壁はこの2人だったのではないか、というのが私の考えです。
達筆な「お年玉」を披露した千歌だけど、彼女、自虐的に普通って言う割に器用に色々できてて、フィジカル特化型の化物幼馴染がいるのは勿論なんだけど、歳の離れた姉がいることも無意識の枷になってたのかもなぁって思った。二人とも要領良さそうだし、比べられて育ったらやっぱり卑屈になるかなぁ、と
— 💎十六夜まよ🍭 (@daimarco16) 2017年12月16日以前Twitterにこの考えの元になる思考を投下していましたが、果南や曜の存在以前にやはり姉2人は「普通怪獣」を生む理由となり得るのかな、と。
幼少期の遊びとして姉と一緒に作った紙飛行機、千歌のものだけ上手に飛ばない、長い時間飛ばせない……そんなことがあって、真っ先にやめるようなことがあったのではないか。
美渡に憧れて「みとねえと同じことがしたい!」と始める習い事やクラブ活動なんかも、少し歳の離れた姉には敵わず、そして美渡も性格上千歌に容赦することは少なく……もしも千歌が普通以上に何かをできていたとしても、常にその上に立つ存在はいたのではないか、そんな風に思えてならないのです。
これは志満や美渡が悪いという話ではなく、姉妹という存在の設定上避けて通れない構造であると思いますし、末っ子はそういうもの、とも思えます。
私自身の経験上、どうしても弟妹には負けたくない、とか格好良いところは見せたいとか……守るべき存在であると同時に、やはり負けられないライバルみたいな感覚も存在しました。特に美渡に関しては、千歌との関係の中で図らずとも「敵」として君臨した次期は存在するのかと思います。
そんな千歌のある種「敗北の人生」を親として見てきた彼女の母親は、やはり心配になるのでしょう。
「紙飛行機の件」でも、今回のスクールアイドルの活動でも、自分ではどうしようもない壁とぶつかり、折れそうになった時に「今度は諦めない」という選択肢を娘が掴み取れたこと。それは親として本当に喜ばしいことであったのだと思います。 - 歩いてきたこのキセキが、輝きだった
そして千歌は結論を手に入れます。「輝き」はこれまでの自分の歩んできた全ての道にあった。そのものが「輝き」だった、と。
ラブライブ大会を制覇し、得た喜びは、もしかすると期待していたものとは少し違ったのかもしれません。 「わかった。私が探していた輝き、私達の輝き。
足掻いて足掻いて足掻きまくって、やっとわかった。
最初からあったんだ。初めて観たあの時から。
何もかも、1歩1歩、私達の過ごした時間の全てが、それが輝きだったんだ。
探していた私達の、輝きだったんだ……!」
曲の間奏でそう語る彼女の、この一瞬の表情が本当に印象的で、この瞬間についに千歌は自分の「本当にしたかったこと」に気付くことができたのだなぁ、と感慨深いものがありました。
そんな彼女、もしくは彼女達が辿り着いた「輝き」の形はシンプルで、それが歌詞の
本当は持ってたんだよ
という部分に繋がっていくのだと思います。
この「求めた幸せや夢、大切なものは、自分の手近なところにあった」という結論を得る物語は、俗に言う「幸せの青い鳥」理論だと思います。
メーテルリンクのこの『青い鳥』は、「2人兄妹のチルチルとミチルが、夢の中で様々な国に幸福の象徴である青い鳥を探しに行くが、結局のところそれは自分達に最も手近なところにある、鳥籠の中にあった」という物語で、Aqoursの活動の中で鳥の羽が青に変わっていったことや、歌詞中の
青い鳥 探してた 見つけたんだ
でも カゴにはね 入れないで 自由に飛ばそう
の部分等、モチーフだと見ることができる根拠は多いと思います。
- 夢みたものは
少し話が逸れてしまいますが、私の好きな合唱曲の中に「夢みたものは…」という曲があります。
作詞立原道造、作曲木下牧子による混声4部合唱なのですが、私は第13話を観て、WONDERFUL STORIESを聴いた時にこの曲のことを強烈に想起しました。
モチーフはこちらも「青い鳥」となっていることは想像に難くないですが、その上で歌詞の内容がだいぶAqoursのこととリンクするなあ、と、感動を覚えた次第です。
本来、物語と無関係な曲や詩を持ってきて「似てますよね」という話はさほど意味を成さない……というか、様々な意味がそれぞれの音楽に含まれるのでそれをつなげることはこじつけに近いのですが、だからこそ「この曲は実質ラブライブ!サンシャイン!!なのでは」という考え方は面白く、他のアニソンやポップスからも「輝き」を見出している人が多く感じられたので、私なりの立ち位置からひとつの可能性を提示させて頂きます。
名曲なので、皆様にも是非聴いて頂きたいです。
『夢みたものは』
夢みたものは ひとつの幸福
ねがったものは ひとつの愛
山なみのあちらにも しずかな村がある
明るい日曜日の 青い空がある日傘をさした 田舎の娘らが
着かざって 唄をうたっている
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが 踊りをおどっている告げて うたっているのは
青い翼の一羽の 小鳥
低い枝で うたっている夢みたものは ひとつの愛
ねがったものは ひとつの幸福
それらはすべてここに ある と
●誰のためのカーテンコール?
それでは曲本編に入りましょう。
とはいえ、あまり語るべき部分は多くありません。ほとんどの要素はこの記事のここまでで触れてしまいました。
スタートの調性は変イ長調で、これは「未来の僕らは知ってるよ」や「WATER BLUE NEW WORLD」のサビと同じ調……平たく言えば「ラブライブ!サンシャイン‼」2期を象徴するメロディセットです。(本当にざっくりですが)
この曲の最大の特徴はそのてんこ盛り感といいますか、これまでの挿入歌衣装が全て登場し、めまぐるしく場面転換していくところですが、これがまさに私が「カーテンコール」と呼ぶ理由となっています。
カーテンコールとは、舞台などで演目が全て終わった後、役者さんが全員出てきて観客に挨拶をする、というものですが……これは「終演」時に行われる挨拶です。
本編最後にこうやって幕が下りたため、それについて「Aqoursのカーテンコールだ」と考える人もいるとは思いますが、私は少し解釈が違います。
「STORIES」の項目でも触れましたが、これまでの物語を彩ってきた挿入歌達は、その映像と、衣装と共にありました。
Aqours9人は今後の劇場版等でまだまだ姿を見せることとなるため、言わば「出番がある」状態ですが、各挿入歌の衣装達はどうでしょうか。
アニメ2期を締め括るにあたって、1期から通して「曲の顔」として輝いてきた衣装達……これらは、十分に「登場人物」と呼べる存在ではないかと私は考えます。
そして、だからこそこの曲はその挿入歌達・衣装達にとっての最後の顔見せである「カーテンコール」なんだ、というように感じました。
常に挿入歌という名の物語達と共にあった物語。その締めくくりとして、またさらに先への展開として、今は一旦幕を下ろす。そんな意味を持たせるものとして、この演出は素晴らしいものだなあとただ涙を流すばかりでした。
●思い出からは流れるメロディ
蛇足かもしれませんが、順にその物語達を観ていきましょう。挿入歌と共にあったこのブログにとっても、それは必要な振り返りだと感じます。
まずこの段階でズルいですよね。
千歌と曜と梨子、3人が出逢うことで始まる最初の一歩の曲の再現を、9人で、しかも最後に「寄せ書き」を行った校舎をバックに行うなんて……。
あの時の桜が、今では180℃別の意味を持っていて、でもだからこそ先に進める。
いつもいつも 追いかけていた
届きそうで 届かない ミライを
この歌詞は、ただただ憧れて燻る、千歌の最初の心だったのでしょう。
だから だから 君に会えたよ
一緒に いてくれて ありがとう
梨子との出逢い、そして曜がいつも一緒にいてくれたこと。
その2人に支えられ、3人のAqoursは最初のステージを迎えます。
善子が変装してたり、ダイヤの足元に発電機があったりと、完全に当時を再現する芸の細かさ、大好きです。
足りないって気分 悔しかったんだ
もっと 欲しくなる
特別な何か 探す冒険
そして ここに来て
やっと みつけた!
「悔しい」という気持ちは、東京で「0」を突きつけられて、初めて手に入れた感情でした。
ここからAqoursが、Aqoursだけの特別な輝きを求める活動に入ります。東京のエピソードに合わせて初代Aqoursの姿がちらっと見えるのも、愛が詰まっていて素敵だなぁと思いました。
そしてサビです。
ここで未熟DREAMERを持ってくるのも本当にズルいですよね。
曲の冒頭、9人揃ってスタートするこの曲のサビメロディを、本サビのタイミングで「9人が初めて揃った曲」とリンクさせて展開する流れは鳥肌モノです。
主題である
本当は 持ってたんだよ
僕たちは みんな持ってた
胸に 眠る輝き めざめる前のチカラ
この歌詞をこの曲と、次の曲で1番のサビとして使う演出は、1期からこのアニメを愛してきた人たちにとってどれだけ感動的なものかは、この記事を読む全ての人が知っていることでしょう。
まあ、今更私が何か言うことはないです。本当にありがとうございました。
本来のフォーメーションとは違い(いや、これが本来のフォーメーションなのか)、梨子のスペースがあること、1期11話に比べて客席のサクラピンクが満開であること等、この曲に付与された新たなストーリーが反映されているのは流石としか言いようがありません。
リピートしてのサビメロディ2回目は1期のラスト、MIRAI TICKET。
夢を 駆けて来た 僕たちの 物語
この「駆ける」という歌詞が本当にこの曲とマッチしていて、さらに腕を振って足を上げる振り付けがそれを強調しています。
サビ全般に言えることですが、この振り付けはなんとかコピーしてライブの時には一緒に踊りたいくらいですが、少々難易度が高いですよね……。
そして!
「MY舞☆TONIGHT」
「MIRACLE WAVE」
「Awaken the power」
思い出からは 流れるメロディー
あたらしい夢が 聞こえる
怒涛の2期挿入歌ラッシュです。
音楽は、時に歌詞そのものと密接にリンクした表現がされることがあります。
例えば「冷たい」という歌詞で暗く低く響く音を出したり、「ノロマ」という歌詞の時には長い音符をじりじりと演奏し、鈍重な感じを出したりします。
「風」という歌詞に対しては途切れない、繋がった音を細く美しく繋いだり……そういった、歌詞と同じイメージのメロディを流すことでお互いが強調される手法があり、ここではそれが用いられているように感じました。
つまり、「流れる」というフレーズに合わせて一気に「思い出」となる2期の挿入歌たちを順に繰り出すことにより、流れる思い出=一種の走馬灯のような、駆け抜ける青春のイメージを歌詞以外の部分でも表現しているのがここのパートなのだと思います。
そんな「流れるメロディー」からは「あたらしい夢」、つまり2期からの新曲が「きこえる」という、詩と曲が多重に絡み合った濃厚な演出がこの数フレーズに詰め込まれています。
「WATER BLUE NEW WORLD」
遠くへまた 行こうよ
DREAMING DAYS
最後はWATER BLUE NEW WORLDでシメ。完璧な流れです。
「ミライへ向かおう」と唄ったこの曲の衣装で「遠くへまた行こうよ」と、何度でも夢を見られるよと言ってくれるのは救われた感じがしてこみ上げるものがあります。
最後が「DREAMING DAYS」というフレーズで締め括られているのは、「WONDERFUL STORIES」と同じ意味なのかなという気がします。
●輝きのメロディ
間奏の千歌のセリフを挟み、曲はCメロへと展開していきます。
青い鳥 探してた 見つけたんだ
でも カゴにはね 入れないで 自由に飛ばそう
前述の通り、ここで「青い鳥」という言葉が出てきます。
大きな丸い輪をかいて、田舎の娘らが踊りを踊っているんですよね……。
答えはいつでも この胸にある
気がついて 光があるよ
歩んできた道が、輝きだった。その言葉が、その全てがこのCメロに詰まっています。
「光があるよ」の声とともに、Aqoursは天を仰ぎ、体育館の窓からは降り注ぐサンシャイン。まさに、といった感じで、そこからいよいよのクライマックスです。
そうだね!
本当は!
ここにきてサビのフレーズリピートからの転調ですよ!転調!
大好物です。本当にありがとうございました……。
そして、転調後の調はイ長調。「勇気はどこに?君の胸に!」や「WATER BLUE NEW WORLD」のクライマックスと同じ、前回の記事では「輝きの調」だと定義したメロディです。
「ラ」という音は、度々音楽の基本点となります。
例えばドイツ音名のABCD…はA(ラ)からスタートですし、楽器のチューニングに使われる基準ピッチはA440と呼ばれる、440Hzの音で、これがラの音です。
赤ちゃんが生まれて初めて泣く時の鳴き声は、世界共通でラの音なのだそうです。他にも時報がこの音だったり、サイレンだったり、響きやすくて耳で認識しやすい音だからなのでしょうか。
イ長調は、そんな「ラ」の音を基本とする、音楽の王道とも呼べるメロディだと言うこともできるでしょう。
「輝かしく確信と希望に満ちる。単純、純粋、快活。誠実な感情に適する」
と表現されるこの調は、まさしく「ラ」ブライブ!にぴったりで素敵な調性といえるのではないでしょうか。
キーが上がって、本格的にクライマックスといった雰囲気のサビは、光溢れる校庭の風景も相まってとてつもなく大きな力を感じるものとなっています。
調性が同じなので当然といえば当然なのですが、「勇気はどこに?君の胸に!」でも感じるこのグランド感というか、世界の素敵な響きを全て内包しているような壮大で突き抜けるような高さの、青空と青い海のメロディはまさにAqours、といった感じで感動的と言わざるを得ません。
ラストは虹の"輝跡"でシメ、と徹底しております。
本当に、キラキラしていて壮大な「物語たちの物語」となりました。
いつかまた はじまるんだよ
次の DREAMING DAYS
「次の」という部分に「終わりではない」という明確な意志が感じられて、希望に満ち溢れる終わり方が本当に大好きです。
●L
最後に、この曲の振り付けで私が一番好きな部分を紹介して終わりにします。
いつかまた!で掲げられるこの指の形は、空を指差し上へ向かう紙飛行機の心を、
それが前に向けられる様は「前へ進み続ける」意志を。
そして同時に折り曲げられる手首は「手招き」のようで、「あなたも一緒に」というAqoursからのメッセージにも見えます。
また、「L」の形は「ゼロからイチへ」進んだAqoursの精神そのものでもあり、ひいては「Love Live!」の「L」でもあります。
行進のようにテンポよく刻まれる伴奏に合わせてLの字にした指を徐々に下ろしていくこの振り付け、どう考えても「皆で一緒にやろうよ」って言われているように感じますし、私はこの曲が演奏される場面ではきっと一緒にやると思います。
輝かしく希望に満ち溢れたこの挿入歌でアニメ2期が終わりを迎えられたことは、本当に嬉しく思えますし、そんな曲の考察で幸せな気持ちでアニメ2期の記事を書き終えることができることは素敵なことだなぁと改めて感じます。
挿入歌は節目で物語を彩るものである、という中でカーテンコールとなったこの曲の立ち位置については、挿入歌というよりもエンディングテーマに近いものだとは思いますが、そもそもの主題が「これまでを振り返る」「ここまでの道程が輝きである」というテーマの曲なので、アニメ全体を振り返る形で幕を下ろす、最高の挿入歌であることは間違いないと思います。
といったところで、今回の記事を締め括ります。
放送終了後からかなりの時間が経ってしまいましたが、改めてアニメ本編を振り返りつつ、やっぱり感動的な話だったなぁと再度涙することができたので素晴らしい機会だったと思います。
今後の予定はしっかりとは考えていませんが、曲の考察ブログらしく、各曲を唄うそのメンバーの歌声に焦点を置いた記事なんかを書いてみたいと画策していますので、そちらの更新の際には改めてよろしくお願いいたします。
それでは、またの機会に!
水色の新世界:「今」を重ね向かう「未来」は
皆様こんばんは。十六夜まよです。
ラブライブ!サンシャイン!!TVアニメ2期 第12話「光の海」、そして挿入歌の
WATER BLUE NEW WORLD Sounded by Aqours
素敵でしたね。
今回も挿入歌があり、「歌」を中心としたストーリーの展開、そして物語の本質である高校生の部活動と、その大会出場への意味や意義、「勝つ」こととは?等多くの感動を引き寄せる内容が盛り沢山だったと思います。
この記事では私なりの視点から「大会に出場し、勝つこと」と、挿入歌の楽曲分析を中心に第12話を読み解いていこうと思います。
注)歌詞は例に倣い下線と斜体で引用とします。
●いってらっしゃい!Aqours!
いきなりですがアバンのここで学校に向かって「行ってきます!」と宣言するところ、なんかすごく泣けたんですよね。
学校の名前を、そして生徒や地域の人々の期待を背負うことを覚悟して、いよいよ大会へと臨む出発の段階で、各々がこれまでを振り返って順番に集合し、合流した最後に発する「行ってきます」。
今回、本番直前にAqoursメンバーがそれぞれ向き合うのは、自分自身と、そして「勝ちたいか」という大会出場への本質的なテーマでした。
その一番の動機となる学校のことを踏まえた上で、ここの出発のシーンを観ると感慨深いものがあります。
●「勝つ」とは
少し本編の内容とは逸れますが、ラブライブ大会は高校生の部活動における全国大会であり、そこには順位をつけ、優劣を決める競争のシステムが取り入れられています。
例えば得点を競う球技や、ゴールへの到達スピードを純粋に比べる陸上競技等と違い、スクールアイドルの大会も審査員や観客の投票というある種の「見えづらい」基準で優劣を決定する芸術分野の大会であると思われるのですが、こういった大会に付き纏うように考えられる1つの不思議な思想があります。
「勝ちたいか。勝つために(音楽を)するのか。」です。
……少し自分語りが入ります。
私も高校・大学を通して合唱団に所属しており、各種コンクールや大会への出場を経験しました。全国大会で金賞を取るレベルまで勝ち進んだこともありました。
それでもやはり皆壁にぶつかるのです。「勝つために演奏をするのか」と。
「いい演奏をすれば満足だ」「自分との戦いなのだから相手は関係ない」といった声もありますし、それはとても高尚なことでしょう。当時は私もそういった、いわば「平和主義な」考えをしていたかもしれません。
ですが同時に、「勝つこと」を見失ってしまうと何も叶えられないという限界も確かに存在しました。
大学時代、私の学年が中心となる年に、その年の開催を目指して計画していた他大学とのジョイントコンサートが頓挫しました。その活動予定だった時間を埋めるため、では何をしようかとなった時に出場を決めたのがコンクールでした。(毎年、コンクールに出るかどうかは協議の上で決める団体でした。)
傍から見れば八つ当たりです。仕方なく出ることにしたのか等と言われることもありました、が、我々はそこに情熱を集中させました。
結果は全国大会初出場、そして金賞獲得。プロの指揮者ではなく、学生指揮者による演奏での快挙でした。
成し遂げられなかったことの悔しさをぶつけ、歴史に名前を刻む。思い返してみれば、あれもある種の「キセキ」の物語だったのでしょう。
「今はただ、勝ちたい」という闘争心のようなものを、当時の私達は確かに持ち、それこそが結果へと繋がるエネルギーであったのは間違いありません。
「勝ちたい」も1つの根源的な欲求であり、「楽しむ」や「良いパフォーマンスがしたい」というキレイな動機にも迫るエネルギーを持つことができる。そんな「大会」としての本質に、真っ向からAqoursが挑むのが今回の話の根幹だったのではないかと思うのです。
μ'sは、今を精一杯楽しんで、一生懸命走ったら結果がついてきたという奇跡の物語を展開しました。それは本当に眩しくて、誰から見ても王道の素敵な神話です。
Aqoursの物語は、そんな神話に憧れた、ただの人間たちのお話でした。「やれることはなんでもやる」と千歌が宣言したように、やはり大会だって「楽しむ」「輝く」といった気持ちだけでは先に進めなかったのでしょう。
足掻き、もがき、自分を乗り越えて決勝への切符を手にした時に改めて考えるべき「勝ちたいですか?」という問い。
1期第12話の意趣返し。たまらないですね。
当時は「勝ちたい」というSaint Snowの思想は、どちらかというと不純なものとして見られがちでした。音楽や芸術の分野では、どうしても「相手を倒す」という考え方は直接的には避けられているのかもしれません。
夏大会にAqoursとSaint Snowの差として現れた「勝利への渇望」については下記記事でも触れているのでお時間があれば目を通してみて下さい。
ともあれ「勝ちたい」という本来であれば「楽しむ」とは正反対となり兼ねない要素を持つこと。そのくらいの覚悟と決意がなければ最後の舞台では戦えないこと、を最後に聖良からアドバイスされる形になったのだと思います。言わば、Aqoursが気付くべき「最後の勝利条件」とも言えるでしょう。
そして「勝つ」ことを意識すると同時に見えてくる他者の存在。
第7話で「他のグループなんて関係ない」と宣言した千歌でしたが、自分たちが、学校の皆が勝利への強い想いを抱いていると気付いた時に、他者もまた同じ想いと物語を背負って大会へやってきていることに気付きます。
「勝つ」とは、そんな他の存在すらも薙ぎ倒し、最後に自分たちだけが立っていることを望むということ。
敗者の物語を辿ってきたAqoursには、負けることの悔しさは誰よりも理解できます。
自分たちが勝つことで、他の誰かは敗者になる。そういった気持ちも全て背負って尚「勝ちたい」と言うことは、実際どれだけ強いことか。
神田明神に飾られた他グループの絵馬は、そんな「大会の残酷さ」を際立たせ、Aqoursが勝利へ向けて並の覚悟ではないこと、それでも勝つという選択をする意志の尊さを描写していたように感じました。
●春の息吹のリフレイン
一夜明け、メンバーは本番前にそれぞれの気持ちと向き合うために個人行動を取ります。
ここで梨子の弾く「想いよひとつになれ」からの「海に還るもの」は、それぞれの想いを紡いでいく演出と見事にマッチし、非常に感動的なものでした。
そもそもこの曲が上手に演奏できないことがキッカケでオトノキを飛び出し、内浦へとやってきた梨子。そこで千歌達と彼女が出逢ったのがAqoursの始まりのひとつでした。
その因縁とも言える曲を音ノ木坂学院の音楽室で晴れやかな表情で演奏できるようにまでなった梨子の成長と、その歩みには確実に意味があったことが感じられて、とんでもなく涙腺に来る場面でしたね。
梨子がオトノキの思い出をリフレイン。素敵でした。
そんな演奏をバックに千歌が他メンバーとの「勝ちたいか」というやり取りを思い返す演出は、決戦前の意思確認というような感じで王道を辿っており、徐々に高まるボルテージを彩るものでした。
「勿論、勝ちたいですわ。」
と言い切る我らがダイヤさん。
スクフェスでパートナーに設定してあると聴けるボイスに、「黒澤家に相応しいのは常に勝利のみ。覚えておきなさい。」というものがあるのですが、メンバーで一番負けん気が強いのは彼女なのではないかな、と密かに思っています。
それと同時に、生きていく中で当然のように勝利を義務付けられている、なんて側面も存在するのかもしれません。
そしてその上で、「Aqoursの黒澤ダイヤとして誠心誠意歌いたい。どこであろうと心を込めて歌を届けるのが、スクールアイドルとしてのわたくしの誇りですわ!」
と晴れやかに語る表情には迷いがなく、本当に「好きなこと」であるスクールアイドルと向き合える喜びに満ちているように思えました。
この想いは「ルビィは一人じゃ何もできなかったのに、スクールアイドルになれてる。それだけでも嬉しい」と語るルビィと共通するもので、スクールアイドルを愛した姉妹の想いはここで繋がっているのだとしっかり確認できました。
勝つことと同時に自分たちの満足をも求めている姿勢、実はとっても欲張りで難しくて、だからこそ「何かを掴むことで何かを諦めない」と唄う「想いよひとつになれ」がBGMとして添えられているのかもしれないと思いました。
そんな、様々な理由を持ちながら、それでも全員がハッキリと「勝ちたい」と口にする決意の確認。少しずつ「想いの欠片」を集めていく、そんな千歌のリフレイン。温かかったです。
そして動機をめぐる物語は千歌本人へ。
1年前、全てが始まった場所で曜とともに再び走り出す千歌。
伊波杏樹さんが一番好きだと語る1期第1話のアバンシーンと構図を重ねる演出は、24話越しの長く遠いロングパスとなって我々の記憶を掘り起こします。劇伴も重ねてきているあたり本当に憎い演出ですよね。
ラブライブ!サンシャイン!!そのもののリフレイン。あの時と同じ春風に乗せて、いよいよ最終局面へ動き出します。
残るは2年生の決意の確認です。
「勝ちたい?」という千歌の問いに曜はノータイムで「勿論!」と返します。
「やっと一緒にできたことだもん。」と。そしてその上で
「未来のことに臆病にならなくて良いんだよ。」と今の千歌の僅かな迷いを拾い、想いをぶつけることに対して、曜自身ももう臆病ではありません。
ここまで積み重ねてきた千歌と曜の関係が最高の形で昇華され、この2人はもう大丈夫なんだと安心させられます。曜ちゃん、良かったね。
そして梨子です。「奇跡」の文脈を用いた上で、
「この道で間違ってなかったって証明したい。今を精一杯全力で、心から!」
「"スクールアイドル"をやりたい!」
1期第2話のリフレインです。ずるいですよね。ここにきてついに梨子が「スクールアイドルをやりたい」って願いを持ってくるなんて誰も思わないじゃないですか。
普段あまり涙を見せずに、冷静に全体を見ていた彼女が、ここまで感情を露わに「勝ちたい」と叫ぶ。これぞ青春です。
「ありがとう。ばいばい。」
そして千歌は、最後に「あの頃の自分」と別れを告げ、勝つために普通のまま、怪獣で良いという決意で前に進みます。
「全力で勝ちたい!」という宣言は、先述した想いの全てを背負って勝者になるということ。ここで覚悟完了したことにより、最後の勝利条件はクリアされました。
あとは、演るだけ。
●過去から今へ、その一瞬の交差点
考察と言うほどのものではないですが、集合のシーンでメンバーが集まっていく際に各学年ごとに時間軸が決まっているように感じました。
過去を話す3年生。ですが、「ずっと一緒に」というダイヤの「書いたこと」が実現しているこれからは、過去であり未来です。
離れていても、同じ空の下、心は繋がっている。これ本当良い言葉ですよね。
1年生は未来のことを語ります。きっと来年にもこの3人は一緒にいるのでしょう。
なんとなくそれを不安に思う善子も、それを察して大丈夫、と元気づける花丸とルビィも、1年を通して逞しく成長しました。
そして「今」を駆ける2年生。千歌のこの後姿、EDと同じですよね。
この背中を追いかけて、皆が走ってきた。そんな「今」のAqoursそのものである千歌と2年生に引っ張られて、1年生も走り出します。
そしてそこへ合流する3年生ですが、いるのは道の反対側。
初代Aqoursと2代目Aqoursが、歩道橋という道の交点でその運命を交わらせます。
この後はまた、それぞれの道を歩む3人と6人が瞬間的に1つになれているその交点こそが、「今」そのものであり、その瞬間の輝きこそがAqoursそのものだという、刹那的な輝くの美しさを描くスクールアイドルの描写だったのかなと考えることができる気がします。
●高空から望む新世界
さて、いよいよライブパート、曲分析です。
今は今で昨日と違うよ
明日への途中じゃなく 今は今だね
この瞬間のことが
冒頭、鞠莉→花丸→梨子のソロが繋がる歌声は、鞠莉の柔らかいタッチを活かす形で花丸がふんわりと引き継ぎ、梨子がさらに後続の黒澤姉妹に受け渡す構図となっています。一番槍となり先陣を切るまるまりこ。春の風に乗り、ハリケーンブロッサムの本領発揮です。
重なっては消えてく
心に刻むんだ WATER BLUE
ダイヤとルビィ、それぞれが曲の雰囲気に合わせてかなりの音色の変化をつけているように感じます。ダイヤは重たさを無くし、ふわっと軽い声に、ルビィはキンキンした高音を抑え、しっとりと優しい響きに。それぞれをキャラの声をキープしながら表現してきている小宮さんと降幡さんの、技術レベルの高さを感じるソロでした。
歌詞は「昨日(=過去)」とは違い、さらに「明日への途中」でもないという「今」を刻むというAqoursらしい内容です。
神田明神でSaint Snowの2人が語った、「まるで雲の上を漂っているようだった」という表現がそのまま演出となっているのですが、この「雲」は「憧れの舞台」の象徴でまさに「雲の上」の場所であること、そこでの演奏は天にも昇る気分である、という心理描写なのだと思います。その上で、もう一つ仕掛けがあるのですが……。それは後述します。
ギターの疾走感あるイントロを抜けたAメロはまず残りの千歌→果南→曜→善子のソロとなります。
悔やみたくなかった気持ちの先に
広がった世界を 泳いできたのさ
"諦めない!" 言うだけでは叶わない
"動け!" 動けば変わるんだと知ったよ
先述したダイヤとルビィの声質コントロールに合わせるような形で、曲前半では全員一貫してしっとりめの音色で声が作られているように感じます。普段高めでピリッとしがちな果南の声も、音程の割に上手く抑えられており、極めつけは善子の「知ったよ」の抜け方が本当に優しく、丁寧に表現されていました。
歌詞の「言うだけでは叶わない 動けば変わるんだと知ったよ」は「ユメ語るよりユメ歌おう」で唄われる、「理想を語るよりもまずは行動」という「輝きへの第一歩」の条件を提示しているものであり、Aqoursのこれまでの道のりを端的に表す素敵なフレーズだと思います。
ちなみに、大量の転調(=キーの変更)で印象をくるくると変えてくるこの曲ですが、このAメロからBメロの頭までは「MY舞☆TONIGHT」のサビと同じキーが使われており、「道のり」を示すイメージとリンクさせているのかな、と考えることもできます。
ずっとここにいたいと思ってるけど
きっと旅立ってくってわかってるんだよ
3年生パートと1年生パートの対比は歌詞の内容と振り付けそれぞれが真逆のことを行っており、去る者と残る者、送られる者と送り出す者の立場をハッキリと描写しています。
この曲は、大会での決戦曲であると同時に、Aqours1,2年生から3年生への卒業ソングでもあると思っています。だからこそ、3年生は今を重ねた先の未来を見つめ、最後の舞台での輝きを精一杯に楽しんでいるのでしょう。
だから この時を楽しくしたい
最高の ときめきを 胸に焼き付けたいから
そして、Aqoursを復活させて、「今」を創り出した2年生が「この時を楽しくしたい」と歌い上げます。
転調したキーは届かない星へ手を伸ばし、奇跡の波紋(=MIRACLE WAVE)を起こす変ホ長調。千歌が掴み取った、決勝へ繋がるメロディです。
1年生と3年生のハイタッチは、先述した「送る」「送られる」関係の現れのように見えました。立場のスイッチは、これからのAqoursを担うのが現1年生であることを示唆しています。
そして、この曲最大の演出であるスカートのパージ。
舞い散る青い羽根は、Aqoursの掴んだ希望の象徴か、新たな輝きの可能性か。
モニターの前の少女達にも、その輝きは羽根の形で届けられます。かつてμ'sが掴み、飛ばした白い羽根は「SUNNY DAY SONG」で全てのスクールアイドルに平等に振り撒かれました。
1期ではそれを掴んだ千歌でしたが、あくまでもその輝きはμ'sの考え方の上でのもの。2期第7話で透明に消えかけるも、浦女の生徒の声で青く色づき再び舞い上がったWATER BLUEの羽根こそが、Aqours色の新たな輝きの形だったと言えるでしょう。
そして、「羽根を飛ばす」ことでAqoursは空から海へと降りてきます。
先に述べた「雲」のもう一つの仕掛けがこれで、サビ前に上昇音階で盛り上がりを演出するギターと同時に、舞台の視界が一気に晴れ、会場一面のWATER BLUEのペンライトが輝きます。これがまさに「光の海」。
水の名を冠するAqoursは、「雨」を味方にし虹をかけ、「波」となってついに憧れの舞台へと届き、北の地では「雪」と共に秘めた可能性を呼び起こし、空に昇っては「雲」となり、そして最後にWATER BLUEの「海」に還るものとなります。
全てが自由に形を変える「水」だからこその柔軟な世界観の形成。2期の物語はそんなAqoursの成長と変化の物語だったのではないでしょうか。
●衣装イメージに込められたメンバーの役割
ここでロングスカートをパージしたのは冒頭で最初にソロがあった鞠莉・花丸・梨子でした。この3人の衣装は共通で、純朴な「村娘」のようなイメージに見えます。
そして次にソロがあったダイヤ・ルビィ・千歌の3人が同じモチーフです。これは正統派の「お姫様」でしょうか。
最後に果南・曜・善子の3人がセットとなっていますね。こちらもドレス風ですが、黒が取り入れられ少し攻撃的に、「女王」といった印象です。
「村娘」は途中でそのスカートを脱ぎ捨て、ドレス風の衣装へと変身を遂げます。
梨子・花丸・鞠莉。「変化を望んだ」のがこの3人だったのではないでしょうか。
花丸は本の世界に篭っていた自分から、梨子はピアノも、何もかもが楽しくなかった生活から。
鞠莉の場合は他2人と少し違い、最初からティアラが頭にあります。これは生まれがロイヤルな家系でありながら、果南やダイヤと一緒にいること(=普通であること)を望んでいた彼女を表すものとして描写されているように思えます。
「姫」は各学年の実質的・精神的な「支柱」であると言えます。
千歌は言わずもがな2代目Aqoursの発起人であり、梨子も曜も彼女がいたからこそAqoursとして活動しています。
ですが、彼女だけ頭の飾りが逆に少し「村娘」っぽいのは、普通怪獣の名残でしょうか。
ルビィは函館でのライブを通して、Aqoursの次の時代を担えるリーダーへと成長しているのは第9話を観ても明白でしょう。
そしてダイヤは、空白の2年間を耐え忍び、千歌達にAqoursの名前を引き継ぐことで「Aqours」そのものを守り、繋げてきました。果南と鞠莉を再び繋げたのも彼女の働きです。
「女王」はその学年でのバランサーとして働くと同時に、もう一つの役割を持ちます。
現実的な意見を口にし、勢いづくAqoursへブレーキをかける役割が多い善子と果南に、千歌のストッパーである曜。
そしてこの3人は特に「勝ち」を意識した言葉を口にしていたように感じます。
もともと1流のアスリートである曜は、やっと見つけた「千歌と一緒にできること」で迷いなく「勝ちたい」と述べました。
学校のため、生徒のためと立場を気にするダイヤや鞠莉に対して、「その2人ともこれで本当に最後だからこそ勝ちたい」と言った果南の気持ちは相当に大きいでしょう。
「勝ちたい?」の問いかけに対して「あんた何言ってるの!?」と反応していた善子にとって、勝つことは当然の目的であり、「感謝しかない」と言った先輩への恩返しであると思われます。
そして「勝ちたい」という気持ちは、北海道でステージを共にした仲間であるSaint Snowのシンボルとも言えます。
菱形の髪飾りや全体的な色使いは彼女達の想いを受け継いでいるような気がして、さらに「村娘」も「姫」も全体的なドレス感は「Awaken the power」を演奏した時の衣装とイメージが一致しているように思えます。
惜しくも勝利を逃し、決勝では同じ舞台に立てなかった彼女達ですが、そんな想いもAqoursは引き連れて、この舞台に立っているように思えてならないのです。
●海を渡る歌声
そんな最高の盛り上がりを見せて入ったサビです。
MY NEW WORLD 新しい場所 探す時がきたよ
次の輝きへと 海を渡ろう
3年生の卒業ソングである、と前述しましたが、このフレーズは特にそれが強いと思います。
それぞれの新しい場所を探して外の世界へと出ていく3年生。
「海を渡る」は海外へ飛び出す鞠莉や果南のことでもありますし、「次の輝き」が次世代のAqoursだとすれば、初代Aqoursを乗り越え、先へ進むことになります。その初代Aqoursを乗り越えるという行動は、大きな海を渡るにも等しい、偉大なことだと言えるでしょう。
夢が見たい想いは いつでも僕たちを
繋いでくれるから 笑っていこう
ここにきてメンバーごとのカットが渾身の笑顔で映され、最後の転調で「輝かしく確信と希望に満ちる」と評されるイ長調へキーが受け渡されます。
「勇気はどこに?君の胸に!」もこの調で作られており、きっとこのメロディは「輝きのメロディ」そのものなのではないかと思います。
今を重ね そして 未来へ向かおう!
そしてラストフレーズは、そんな「今」を重ねて、その先にある「未来」へ向かうというもの。千歌がぐりんぐりん動きます。
「過去」を大切に振り返りながらも巻き戻すことは望まず、「今」が最高と唄ったμ'sに対して、そのμ'sが残した最大の遺産とも言えるドーム大会の場で、「今」を重ね「未来」へ向かおう!という言葉はAqoursの明確な前進と新たな道を歩いて行く覚悟とで彩られていると思います。
キラキラとしたステージから「未来」を指差す彼女達が見るものは。
転調を多用する曲の構成は「MIRAI TICKET」と通じるものがあり、梨子が繰り出す気合の入った曲ではそんな傾向があるのかなと感じたと同時に、「想いよひとつになれ」の佐伯高志さんの作曲であるこの曲は、そんな「想いの欠片」を集めた第12話の、ひいてはラブライブ!サンシャイン!!のこれまでを総括する、最強の挿入歌であったように思えます。
このパフォーマンスがどういう結果を残すのであれ、次回でいよいよAqoursの物語は一旦おしまいとなります。
ホンキをぶつけ合った先に、どういったミライを手に入れたのか。楽しみに見届けることとしましょう……!
次回は最終話挿入歌によせて。
それでも「Come on」と呼ぶ相手は:吹雪と姉妹の円舞曲
皆様こんにちは、十六夜まよです。
Saint Aqours Snowの挿入歌シングル「Awaken the power」、いよいよ発売しましたね。
どの曲もフルバージョン音源が解禁となり、予想以上の盛り上がりが2番以降に用意されていて興奮が止まらない!といったところです。
今回はその中でも特に破壊力が高かった、
DROPOUT!? Sounded by Saint Snow
この曲の分析・考察をしていこうと思います。
アニメ本編の文脈から独立した、曲単体での分析は久々ですね。
……と言いつつ、アニメの描写からの推測も多く含まれますので、実質第8話・第9話の感想の続きとも言えるかもしれません。
注)歌詞は例に倣い下線と斜体で引用とします。また、フルバージョン音源の感想が含まれますので、未視聴の方はご注意下さい。
●もうひとつの「輝き」を求める物語
TVアニメ1期では「なんとなくイヤな印象のライバル」として登場するも、2期に入り彼女達をピックアップする物語が展開され、その内面や背景が明らかになったSaint Snow。
アニメ本編では敗者として描かれたSaintSnowですが、彼女たちや他のスクールアイドルにも人生があって、矜持があって、物語がある。
当初、理亞にはあまりいい印象を抱いておらず、「スカしたヤツ、なんかいけ好かないヤツ」というイメージでした。
#8・#9を観た今ではもうそんなことは言えません。鹿角理亞のファンです。
「知ることは好きになること」の第一歩、というのが個人的な持論です。
Aqours 1stライブにて伊波杏樹さんが口にした「Aqoursをもっと知ってもらいたい」という言葉、これはAqoursだけじゃなくてSaintSnowもずっと思っている気持ちのはずです。
そんなSaintSnowを、鹿角理亞を好きになるためにこの物語を作ってくれた、「知る」きっかけを作ってくれて、ただなんとなく散っていったライバル的なキャラで終わらせるのではなく、SaintSnowを愛せるようになったことに感謝したいです。
私の敬愛するブログ書きである瀬口ねるさん(@_Sengnel_)の第9話記事は全編通して素敵で美しい日本語に溢れていますので、是非ご一読を。
その中で「知ることは好きになることへの第一歩」という言葉は本当になるほどだなぁと思ったところですし、鹿角姉妹がここに来てすんなりとファンに受け入れられているのも、本編での彼女達を「知らせてくれる」描写が多かったことが大きな理由となっていると思います。
そんな彼女達の曲、「DROPOUT!?」ですが、私は自分の記事内で以下のように「役割付け」を行いました。
ちなみに時系列的には間違いなくこの曲は「ラブライブ決勝に進むため」作られているものなのではありますが、物語の効果として挿入歌という形を取った時に「Saint Snowの敗退の後悔を映すもの」という役割を持つものに変化してしまっています。
冷静に考えればおかしいのですが、だからこそ本編では歌詞が明かされず、その終了後に内容が公開されています。
そのあたりは、演出材料としての挿入歌が持つ役割ということで素直に受け取るのが1番なのではという風に思います。
Aqoursを中心とした物語の上で、挿入歌の意味を考えたときにはこの曲はそう位置づけられる、と考えるのですが、今回はその文脈を一旦横に置いて、純粋にひとつのスクールアイドルグループであるSaint Snowの、北海道地区予選大会で歌われた曲としての「DROPOUT!?」を読み解きたいと思います。
それだけのことを考えさせてくれるエネルギーがある曲だというのが最初に音源を聴いて思ったことですし、とにかく込められたメッセージが重く、切なく、でも暖かい。
彼女達もまた、スクールアイドルとして「輝き」を求めて大会を勝ち上がろうとした物語の主役の一人であり、そこにもAqoursに負けないくらいの想いがある。
そんなことを思いながら、曲を考えていこうと思います。
●極寒の闇で「見える」光とは
曲を聴いた時に見えてくる風景や色といったものは、皆さんあるでしょうか。
「共感覚」といった鋭敏な能力を持った人には、例えば音を聴いた時に色が視えたり、味や匂いを感じたり、といった現象が起こっているらしいのですが、そうではない人にとってもイメージや印象に自分の経験や記憶を重ねることで、曲の表す世界を想像できることがあると思っています。
私はこの曲を聴いた時に、暗闇に冷える雪原と、容赦なく吹き付ける吹雪を感じました。
イントロで柔らかく始まるピアノのメロディも束の間、アップテンポに鳴り響くダブルバスドラムには、風に舞い叩き付けられる吹雪の厳しさが表現されています。
「勝って、その頂きに立ち、そこから見える景色を見てみたい」
以前に彼女達がAqoursへと語った大会出場への動機は、ともすれば勝利至上主義にも見え、「楽しむことは輝くこと」とするAqoursとは相反するもののように思われました。
しかし、言わば「スクールアイドル戦国時代」ともなったサンシャイン!!の時代では「楽しむ」程度の動機では先に進めなかったのも事実であり、夏の大会ではSaint Snowが本大会へ出場する中Aqoursは地区予選敗退と、結果の差が出ているところでした。
その後Aqoursは様々な経験から「自分たちの輝き」を見出して決勝へとコマを進めますが、「勝ちたい」という純粋な欲求が足りないという弱点は、ある意味夏の段階で聖良によって既に指摘されていたとも言えます。
そんなSaint Snowが決勝大会へと進むために作ったこの曲ですが、この吹雪のような厳しさは、勝利を目指すにあたり彼女達が自らへ課した高く厳しいハードルなのでしょう。
ここまで来ても 答えが わからない
迷いの中 つかんだはずの光は
本物じゃなかった 闇に 飲み込まれて
勝利を目指し、研鑽を積んでもまだまだ見えない「頂点」という目標。
「自分たちの輝き」としてつかんだはずの光はまだまだ弱々しく、不安という闇へと飲み込まれていきます。
必ず 手に入れるはずの 輝きは どこにある?
地区予選の場面では、未だ届いていない「輝き」。それを模索している最中にあるという苦悩と、それをまだまだ諦めないという挑戦がこの曲のテーマなのかなと感じました。
それでも go to the world!
止められない 出口のない 夢の先を
探そう go to the world!
孤独がほら 今を 引き裂いてる
出口のない夢の先を探す、というのもその「挑戦」であり、「それでも行く」という強い意思は極寒の闇の中にあっても消えない情熱を唄っています。
雪の少ない地域の方にはピンと来ないかもしれませんが、雪が降る夜は明るいのです。
雪の結晶が僅かな光を反射し輝くことで、闇を照らし視界を作ります。
吹き荒ぶ吹雪は厳しさの象徴ですが、同時に背景で優しく支えるピアノの音色は、「雪」そのものであるSaint Snowの姿に見えます。
2番歌詞の
空の色が見えないのに 輝きを感じてる!
の部分は、闇にあっても尚もがきながら自らの力で輝きを見出す雪に自分たちの姿を重ね、戦う意思と強烈な感情を表しているように思えます。
曲の調性はハ短調。「悲劇的な力、超自然的な感情が込められる」と表現されると同時に、「柔和の中に真剣な情熱を持つ」とも言われています。*1
未だ及ばない頂点に対して悲観することはあれど、その中で輝く「真剣な情熱」という言葉は、まさにSaint Snowの2人を的確に表現していますね。
●吹雪のワルツ
ところでこの曲、テンポが独特ですよね。
イントロのダブルバスドラムと、理亞のラップパートを除いて、他のパートは三拍子の動きで進行しています。
※四拍子系は「ワンツースリーフォー」、や「いちに・いちに」という、1小節を4個に区切る音の並べ方をするのに対して、三拍子系は「ズンチャッチャ」という3分割の動きです。
激しいロックの中に優雅なワルツのイメージを持つ三拍子の動きが加わると、独特の浮遊感が曲の中に生まれ、激しさの中に柔和さが入り交じる複雑な感情を表現してきます。
その上で、途中最も激しいドラムの連打は四拍子で力強く、また理亞によるラップもそのテンポから「足を踏み外す」ことで切り取られたような世界観を演出しています。
SELF CONTROL!!を披露した時やその前の神田明神でのシーンには、彼女達の漲る自身やプライドといった強さが表現されていました。
しかしそこまで順調に勝ち進んだ中で本大会では8位という敗北(それも充分にすごいのですが)を味わい、世界の広さを知った2人にとって、それは"DROPOUT"とも言える衝撃として自尊心を盛大に傷つけられたのではないでしょうか。
2番のサビにある
痛みで Out of the world 胸が裂ける
こぼれ落ちた夢の欠片 ひろえば Out of the world
嘆きのあと いつか動きだせる だから顔上げて…
この部分は、負けた後の「次」を目指す気持ちとして、冬大会に臨む姿勢とそこに至る復活の姿を歌っているのだと思います。
そんな「まだ力は優勝には遠く及ばない」という苦悩を曲に表現した時、強烈な感情をダイレクトに打ち出せるラップのパートは特にその気持ちが表に出る部分であり、だからこそマイルドなニュアンスを含む三拍子のリズムからは独立させたのかなと考えることができます。
そういった複雑なテンポの中で歌声を踊らせる姿は、雪と聖良と理亞の三者が舞うワルツのようで、敵とも味方ともなる雪の存在が、その美しさと危うさを同時に表現しているようにも思えます。
(だからこそ難しいステップが導入され、本番でミスが出ることになるのかなとも思えますが、そこは曲の本質には関係しないため、掘り下げは行いません。)
●誰を呼びたいの?
理亞にとって、やはり姉は世界の全てで、スクールアイドル活動をする上で必要不可欠なものでした。本編ではルビィの活躍により、「新しいグループで頑張る」と決意を新たにしていますが、この段階ではやはり「姉と勝つため」活動している側面が大きいと思います。
SELF CONTROL!!で見せた力強い「聖良、Come on!!」の叫びには、「私の姉様はこんなにもすごいぞ」という誇りや自慢が見え隠れしていました。
彼女にとって「Come on!!」と誰かを呼ぶことはある種「自分の限界を超えるために新たな道を探す救援の意味を持つ」、ということは第9話の記事で述べた通りです。
そして、この曲でも「聖良、Come on」が再び使われています。
ですが、前回のような自慢げな様子ではなく、今回は儚さと優しさを持った、丁寧な「Come on……」というニュアンスでした。
そこから続く聖良のパートは、ドラムが鳴り止みピアノ伴奏一本で歌声を聴かせる、孤高のソロパートです。
理亞が彼女に信頼を置き、決戦の場面で全てを託せる、そんな気持ちを込めて呼ぶ「Come on」の声には、きっと聖良も勇気をもらって歌い出せることでしょう。
抑えることなど できない力
持て余してるこの想い
普段、冷静に丁寧な口調で話す彼女が内に秘めた情熱。その想いがここで爆発しており、そこまでの演出も相まって最高に泣かせる落ちサビになっていると思います。
明日が描けない時も夢は 熱く蠢いてる
続く理亞のパートもその想いを受け継ぎ、燻る感情を存分に歌い上げていますね。
ここからのラスサビには強烈に気持ちが乗り、戻ってきたドラム伴奏の勢いとで歌声は非常に熱く、激しく踊ります。
誰を呼びたいの? 呼べばいいよ!
このメッセージには、聖良の「いつでも私を頼って下さい」という妹への祝福の想いが込められているのではないでしょうか。
そして、「聖良」と呼ぶ理亞の台詞について。
普段彼女は聖良のことを「姉様」と呼びますが、曲の中では強気に、もしくは慈愛を含ませて「聖良、Come on」と呼びますね。
下の名前で呼び合うことは、対等な関係の「仲間」として信頼している証。
ステージの上で、スクールアイドルでいるその瞬間は、姉妹という関係よりも「仲間」として姉に並び立ちたいという理亞の想いが表現されている素敵な台詞のように感じます。
●一瞬の静寂が魅せる光明
この曲で私が好きなポイントの1つに、アウトロの終わり方があります。
ラスサビ終了後から再びダブルバスドラムの強烈なビートが叩き付けられ、ワルツメロディの程よい安心感は吹雪の中に消えようとします。
ですが、イントロとは違う演出として、一瞬だけ存在する「間」。
吹雪の夜に、風も雪も両方がふと止み、静寂と安寧が訪れる瞬間があります。
この曲を通して過酷な吹雪と戦い、諦めずに自分たちの輝きを失わず手を取り円舞曲を踊る姉妹の姿から、「次の可能性」が見えてきます。
その時、闇は晴れ、新たな光が見えるかもしれない。そんな光明が感じられるアウトロの一瞬の間は、厳しい曲調の中で最後に現れた救済の形なのではないかと思えてならないです。
ここまで魅力的で独特の世界観を持つSaint Snowのステージが途切れてしまっているのはとても残念なことではありますが、彼女達の持つ可能性はAqoursとの交わりの中で、新たな姿で喚び起こされました。
この曲の失敗の後に、「Awaken the power」を演奏するステージが持てたことは鹿角姉妹にとって本当の救済になったことを考えると、同じシングルCDの表題曲がAwaken the powerであることは喜ばしいことだと思います。
以上、「DROPOUT!?」を私なりに読み解いてみました。
彼女達がこの曲を完璧に演奏し、Aqoursと決勝で戦うという歴史も本当は少しだけ気になりますし、その時に彼女達が作る曲は、これを乗り越えたものになっているのではと想像すると切ないものですが、「Ah もしもは欲しくないのよ もっとが好き」と歌う先代に従い、ifを想像するよりも今ある全てを愛そうと思います。
解釈は無限にあると思いますので、これが全てではないですが、この曲が良い!と感じた人に取って、その良さを考える1つの手段として参考になる内容であれば良いと願います。
次回は、第12話挿入歌の考察記事でお会いしましょう。
●オマケ:Saint Snowの名前について
彼女達のことを考えた時に、曲とは関係ない部分でぼんやりと思い浮かんだことをメモっぽくまとめておきます。
Snow=雪=北国・冬のイメージ、及び海や夏のイメージが強いAqoursのライバルとしての位置づけ
Saint=聖良の「聖」、「函館聖泉女子高等学院」の学校名判明からは学校の名前を背負うという意味もあるのかなと考えていました。
理亞の「亜」には「次」とか「続くもの」という意味があるので、次女であることは勿論、聖良が抜けたSaint Snow(「聖」が抜けるため「Saint Snowは終わり」にもつながる)の「次のグループ」を継ぐものであるという役割。
雪は上から下へ降るものであり、μ'sのライバルであったA-RISE(昇りつめる者)とは対極のイメージ。「A-RISEとは全く違うライバル」と言われていた通り、ただ目の前に立ちはだかる壁の役割では終わらなかったですね。
以上、黒澤姉妹に負けないくらい魅力的な鹿角姉妹の、Saint Snow大好き記事でした。
ここまでお読み頂き、ありがとうございました。
イカロスの翼~太陽に近づき過ぎた男が灼かれて堕ちた話~
ギリシャ神話のエピソードの1つ、「イカロスの翼」。皆様はご存知でしょうか。
背景や設定を全て説明すると長いので要点だけ述べると、「鳥の羽根をロウで固めた翼で空を飛んだイカロスが、調子に乗って高く飛びすぎた結果太陽の熱で翼が溶け、落ちてしまった」というお話です。
身の程を弁えずにあまりにも高望みをする者への戒めとして引用されることが多いと思います。
まあそんなことはどうでも良いのです。
皆様こんばんは。十六夜まよです。
もうかなりの時間が経過し、需要はあるのか?とも思われますが、一度やってみたかったことなのでイベント参加レポなるものをやってみようと思います。
記憶の風化が激しいためトークパートのボリュームは少なめですが、音楽を語るこのブログのテーマに逆らわず、ライブパート感想多めで参ります。
●SAPPORO
来る12月9日・10日に行われた、「ラブライブ!サンシャイン!! Aqoursクラブ活動 LIVE&FunMeeting~Landing action Yeah!!~」札幌公演に参加してきました。
地元から夜行バスに乗り、揺られること約5時間、到着した時にはまだ朝の5時半でした。
バスから降りると丁度さっぽろテレビ塔が見えたので撮影した1枚。少しだけ雪も降りましたが、概ね晴れていて過ごしやすい気候でしたね。
久々の札幌でテンションが上がり、地下に潜ったり地上に出たりして散歩しているうちに会場のコトリニトリ文化ホールへ。勢いで物販の整理券配布待機列に並んでしまいましたが、今にして思えばあんなに無理する必要なかったですね。ひたすら寒い思いをしただけでした。慣れているとはいえ、-7℃の寒空の下2時間程度棒立ちは流石に冷えます。
あれだけ事前に「防寒しっかりね!」なんてドヤ顔で関東の人へ言っていた癖に、自分は持参したヒートテックを未装備のまま列に並ぶという舐めプ。
さむい!さむいです!ここにバカな道民がいます!!!
なにはともあれ物販も終わり、無事会場限定ブロマイドとルビィの生首を購入。
生首、ダイヤさんだけのつもりだったんですけど8話9話がエモすぎてやっぱり姉妹揃えたくなっちゃいました。オタクあるある。
ブロマイドは10枚中5枚が伊波杏樹さんという謎の推しっぷりを発揮して満足でした。サイン?そんなものあるんですかね?
今回、地元ということでアオめがねさん(@aomegane0919)主催のスタンド企画にも参加させていただきました。
ツリーの形にまとめられた花と、それを彩るイルミネーション。そして9人……かと思いきや11人の可愛いポップ!
鹿角姉妹が採用されていたのは本当に嬉しかったですね。素敵な企画をありがとうございました。
●入場~開演
宿で身を清め、荷物の準備をして再び会場へ。
ライブ前の雰囲気って好きなんですよね。なんかこう、血が冷たくなるっていうかさ……
これからすごいものが始まるぞ!っていう期待感と、ちょっとした緊張感と。興奮と謎の冷静さが入り交じった不思議な感覚を覚えながら、ペンライトの点灯確認をし、携帯電話の電源を切り、余分な荷物は鞄にしまい、タオルを取り出す。
何度も経験する直前の準備ですが、隣にいる人や目の前の景色、流れる音楽、会場の温度や匂い……そういった5感全てに感じるその瞬間、一期一会の空気を味わいながらドキドキが加速していく高揚感は、誰しもが味わったことのある心地良い緊張だと思います。そんなところも含めて、ライブイベントへの参加って、好きです。
そうこうしているうちにアナウンスが流れ、スピーカーからは聞き慣れた3人の声が。私が参加した初日は3年生、2日目夜は1年生による注意喚起でした。
1年生組のアナウンス、途中明らかに台本とは違うとちり方をしたルビィの声が聞こえ、「あ、やややっちゃったー!やっちゃったー!」と一瞬素に戻っていた降幡愛さんが最高に可愛かったことだけを覚えています。
ちなみにこれただの自慢なんですが、大変幸運なことに、初日は2列目ドセンターという素敵な席で参加させて頂くことができ、スクリーンを見ずともしっかりとメンバーの表情が見える場所にいることができました。眼福です。
そして、いよいよ客席が暗転し、夢の時間がスタートします……。
●OP~挨拶コーレス
まずは「Landing action Yeah!!」の1コーラス版に合わせて、Aqoursの登場です。
最初に目に入ったのは衣装。1年前、豊洲で初めてAqoursを生で観た時の、あの「ジングルベルが止まらない」の衣装です。
今回はセトリに入ってくるだろうと予想はしていましたが、衣装までこれで来るとは思っていませんでした。ケープでモコモコして見えるんですけど、その下の胴体部分がウエストに合わせてキュッと締めてあったり、実はノースリーブだったりと結構見どころの多い衣装だと思います。白と赤の色使いがTHE・冬!で、札幌の地で再びあの衣装を纏うAqoursと再会できたことには感謝しかありませんでした。
クリスマスミニライブの段階では下に「君のこころは輝いてるかい?」の衣装を着込んでいる早着替え対応版だったため細部がありませんでしたが、今回は完全版。素敵でしたね……。
曲の中、ひたすら観客席へ手を振ってくれるAqoursメンバー達。
散々言われていることではありますが、改めて
待ってるだけじゃ伝わらない だから……来たのさ!
という歌詞の素晴らしさを噛み締めて、生まれ育った北海道の地でAqoursを迎えることができたこと、「会いに来てくれた」ことに感謝しまくる瞬間でした。
恒例の挨拶では突如「したっけ!」(それじゃあね、的な別れの挨拶)と爆弾を投入する逢田さん(今年の目標は「知らない言葉を迂闊に使わない」)や、何故か「未来だべー!」とスタートする小林さん(高槻さんはそれを受けて膨れ面でした)等、北海道方言を取り入れてくれたコーレスが。ご当地イベントって感じがして良かったですよね。
毎度お馴染み諏訪さんのハグロシアンルーレットですが、札幌では安定の鈴木さんロックオンで、メインMCとなる鈴木さんを安心させようという彼女なりの紳士な気遣いが感じられてほっこりしました。
2日目はこの先で紹介されたさらなる「ご当地コーレス」が実際に使われ、会場は大いに盛り上がっていました。なまらイイ感じ!
●Aqours MEETING
Aqoursが着席し、まずはおたよりのコーナー。
何例かご当地挨拶が紹介されましたが、個人的には「したからヨハネっしょ!」の後にツルッと滑る小林さんのアクションがコミカルで可愛かったです。
そして圧倒的存在感を発する「のぼりべつクマ牧場」のCMトーク。
の・ぼ・り・べ・つ!と言えば、ク・マ・ぼ・く・じょ!*1……なんすよね。
鈴木愛奈さんはその後のラップパートまで歌っており、流石道民……となっていました。無駄に上手いのがまたあれでした。
画伯イラストのコーナーでは、初日が「自分のキャラが○○怪獣だったら」、2日目夜は「左隣の人のキャラを雪像にするとしたら」というテーマで、逢田さんがいつものように文明発掘していたのは良いのですが、降幡職人の相変わらずの画力に目を奪われっぱなしでした。飴くれぇ~であの凶悪な形相は反則です。
2日目夜、席順の関係で逢田さんがルビィを描くことになったのですが、それを受けて「えっマジで!?」とガチ困惑していた降幡さんも素敵でした。そんな降幡さんはダイヤお姉ちゃんの裸体(時間が足りなくて服が描けなかった)を書いていたのですが、透明感あるシンプルな美しさはまさしく雪像で造られた芸術作品という感じでしたね。
ちなみにさっぽろ雪まつりでは一般参加の枠も存在するので、我こそはという人は彼女達の描いた「雪像」の再現に挑戦してみては如何でしょうか?
●なりきりAqoursのやつ
コーナー名うろ覚えです……。
くじで決めたキャラを演じつつ、お題を達成するという所謂「演技のお時間」亜種。
初日は布団から出られない人を起こす、2日目夜は3人でのデート、でしたね。
個人的にはダブルでルビィを演じる伊波さんと降幡さん、そしてさらにルビィを演じる小宮さんの、それぞれの演技力が垣間見えるところはエンターテインメントだなぁと思いました。
伊波さんのルビィは目の前に本物のルビィがいるので忠実にそのトレースを行い、本当に2人ルビィがいるかのような感覚(若干やかましい)でしたし、一方小宮さんは一歩引いた及び腰で初期設定に近いルビィを再現しており、彼女なりの役の落とし込みが既に完了しているのだと感銘を受けました。
2日目夜のデートは伊波さんの演じる曜ちゃんの声色が完全に「渡辺曜」で、声優としての底知れないポテンシャルを感じる一幕でした。結局ツッコミ役に回ってしまうあたりも、リアルに曜ちゃんだったなぁと。
●褒めフェス
コーナー名は完全に違います。
回答者・鈴木愛奈さんの「良いところ」をメンバー皆に聞いた結果を公開し、途中で伏せられる部分を当てるというもの。これ冷静に考えると本当に恥ずかしいですよね……。「この子は自分のこういうところが好きなんだ」って思っているところを自分の口から言わせるって相当です。いいぞもっとやれ。
「歌が上手い」「笑い声が好き」「エビは虫」等の意見が上がる中で諏訪さんの回答が空欄に。
ここですわわ持ってくるあたり運営解ってるよなあ……と思いつつ、どんな答えだ?と想像していましたが、あいにゃの答えた「笑い方」「笑顔」「身長」「バカなところ」は悉く外れてこの時点で鈴木さんは恥ずかしさで撃沈。画面外で終始にっこにこの諏訪さんとの対比が愉快でしたね。
最終的に諏訪さんがビシっと「全部!」とキメて鈴木さん完全敗北。真っ赤でした。ついでに我々も撃沈。可愛すぎたんですよね……。
●利きハグ選手権
2日目夜はこれでした。大阪レポで見て、「ずるぅい!私だって利きハグ観たいのに!」ってなってたやつです。生で観られて良かった。
回答者は小宮さんで、本命は高槻さん。ダミーは逢田さんと降幡さんでした。
進行役の逢田さんが「じゃあ1人目のダミー……」と口走ってしまい、「ん、1人目はダミーなんだね」となる中、裏をかいて1人目に本命の高槻さんを投入する謎の高度な心理戦。いやズルいでしょ笑
身長で悟られないためにしゃがむ高槻さんと逢田さん、反対にめちゃくちゃ背伸びして頑張る降幡さんが本当に可愛かったです。
結局「2人目」と答え、結果は不正解。3人目が誰だったか、という話題に対し、「いい匂いがした」「めっちゃ背伸びしてたからちっちゃいやつだ!」と言いつつ最後まで降幡さんを当てられない小宮さんに「気付いてよお姉ちゃん!!!」と地団太を踏む降幡さんが最高にキュートで黒澤姉妹うわーいって感じでしたね。ありがとうございました。
トークコーナーの記憶はこんな感じでしょうか……。もっと色々「これ終わったらレポとして上げるぞ!」と思っていたことがたくさんあるはずなのですが、この後のライブパートと、お見送りで私の記憶は彼方に吹っ飛ぶのでした。
●ライブパート
「OP」
一旦捌けた後、いつものオープニングムービーに乗せて順に登場するAqoursの面々。
この登場時の各個人のダンスは1年前のクリスマスミニライブと同じだったように思えますが、指先までの感覚や表情、動きのキレなんかが格段にキリッとしており、数多の本番ステージを乗り越えてきた経験値の蓄積が伺えます。
登場順は千歌→梨子→果南→ダイヤ→曜→善子→花丸→鞠莉→ルビィと並ぶ、所謂「出席番号」順。ラブライブレードのデフォルト順でもあるので、この並びのものを1本用意しておくと色変えがスムーズです。
そしてメンバーが出揃い、1曲目のフォーメーションへ。中央に佇む伊波さんの表情が引き締まります。
「未来の僕らは知ってるよ(TVsize)」
ホンキをぶつけ合って--
冒頭の千歌パートの始まる直前、覚悟を決めて吸い込む伊波さんのブレス音が大好きです。
CLUBReportの動画で、T-SPOOKの舞台直前の様子が映っていたものがあったのですが、その中で舞台に挑む伊波さんは、ずっと一人でこのフレーズを繰り返し練習し、呼吸を整えていました。
大切な曲の、大切な歌い出し。ソロという重圧がかかる中で高海千歌として歌声をコントロールしつつ、伸びやかなスタートを切る。これがどれほど大変であるかは、規模の違いはあれどステージを体験した者として少しは理解しているつもりです。
そんな緊張が感じ取れる僅かな間のブレスも束の間、歌い出した瞬間に彼女は本当に彩り豊かに、毎週何度も観ている"あの"ステージをその場に生み出すのです。
全員が加わって「未来を!」と歌い、イントロに入る頃には緊張感などどこぞへ吹っ飛び、周囲からは、勿論自分の喉からも「ハイ!ハイ!」といつもの2・4コール。
ライブだなぁ、と。始まったなぁ、と。少し遅れてやってきた肌のざわつきを抑えるように、初手から全力で声を上げました。
フルでの「I live! I live LOVELIVE days!!」は3rdツアーへの楽しみにしつつ、ラストの「We got dream!!」を高らかに会場全体で歌い上げ、次の曲へ。
「ジングルベルが止まらない」
高揚感と熱気を引き継いだまま、次の曲のイントロがかかると会場はさらにヒートアップ。1年ぶりにこの曲が帰ってきましたよ……!
衣装が完全版となっており、ダンスパフォーマンスも、歌声も1年前とは比べ物にならない完成度。曲の雰囲気に合わせて眩しすぎる笑顔をぶつけてくるAqoursのメンバーにつられて、きっと私も最高の笑顔でいられたと思います。
サビに入る直前の「Yeah!! Happy Christmas!!」で全員が中央に集まり、「皆もおいでよ」と言わんばかりに両手を広げたポーズで一瞬静止する、あのちょっとだけ「曲が緩む」感じ、たまらなく好きなんです。
大事なときはいつも 一緒に過ごしたいから
この大切なひとときを、同じ土地で、同じ空間で共有できる喜びは、ファンミーティングというイベントならではで……。サビの歌詞が沁みました。明るい曲なのに、ちょっと目が潤んでいたのを覚えています。
~MC~
給水しつつ、簡単なMCへ。2曲連続で演奏を終え、疲れているはずなのに、水を飲んだ途端にそそくさとセンターに戻り、リズムを作りながら身体を動かす斉藤さんが全身で「楽しい!」と言っていて、しゅかはしゅかなんだなーって思っていました。トーク中何かの話題で腕の筋肉見せてましたけど、あの人本当にアスリートなんだなぁって。体力おばけってやつです。
「ライブはまだまだ始まったばかりだよ!」という鈴木さんの号令で、ステージは次の曲の準備へと入ります。
「聖なる日の祈り」
こっちも来てくれるって信じていました。
それまでの熱狂とは一転、バラードとなり会場は優しい空気へと変わりますが、熱量そのものは冷めるどころか加熱を続けます。
じりじりとレガートに響くメロディラインと、豊かなコーラスパートとの掛け合いが見事なバランスで混ざり合い、3拍子系の心地良いリズム感と包み込まれるような暖かい曲調と合わさって、ホール全体が幸福の波動に包まれました。
Holy night 祈りのことば
ふいに(ふいに) こぼれてきた
しあわせがキミと (キミと共に)
ありますように
Aqoursのライブの魅力は、コーラスパートもしっかり生歌で演奏してくれるところだと思っています。普通、こういう曲のコーラスは録音だったりするものですが、彼女達は当然のようにパート分けし、全パートを歌い上げます。
分かれるパートに対応して振り付けも分担され、サビの「Holy night」に1拍遅れて入るコーラスの「Holy night」を歌うメンバーは振り付けも1拍ズレてきます。
その折り重なる声とダンスの立体的な交差は、より響きに深みを持たせてくれました。
アニメ8話9話を視聴したタイミングでこの曲を聴けたことは私の感性をより豊かにしてくれましたし、9話のメッセージ性をさらに感じ取るきっかけとなりました。
優しい祈りと祝福は、今も胸に消えず残っている気がします。
「待ってて愛のうた」
待ってたよ、愛のうた。
何を隠そう、わたくし十六夜まよはこの曲が一番好きです。
未だ恋へと辿り着かない無垢な少女たちの、恋に恋する未達のラブソング。
内浦の、決して都会とは言えない土地で、恋を知らない女子校の生徒たちが、教室で、屋上で、そして浜辺で口にする愛のうたとは。
この曲の背後に見え隠れする、大きな憧れと少しの不安と、秘めた情熱は、至上のバラードとなって私達の耳をくすぐります。
待っててくれるかい? もっとステキになりたいよ
恋はまだまだ 謎に満ちた遠くのパッション
今はまだ自分に早いと自覚しながら、確実に未来にはその気持ちを受け入れ、自分のものとする覚悟と決意。知らないながらもその片鱗を感じ取り、少女から大人の女性へと覚醒を遂げようとする、その直前の焦れったさ。
客席からステージへと響くハンドクラップは寄せて返す波のようで、微妙な乙女心を唄う彼女達の表情は、それでも遠くの期待を知る、美しくも儚い「女性」の顔でした。
降幡さんが以前、「待ってて愛のうたのソロパートがルビィからのスタートで、『愛』という単語で歌い出せるのが嬉しくて泣きそうになる」と語っていた記憶があります。
Cメロの連続ソロパートは私が一番好きな部分です。ここで情感豊かにソロを歌う彼女達は直に心を掴み、揺さぶってくるのです……。そんなの無理じゃないですか。
愛のうたの響きは
優しく悲しいんだね
なぜかは知らずに
ねえ胸が痛いよ
愛のうたの香りは
潮風より青くて
もっと確かめたい香りさ
降幡さんが、「愛」を紡ぎ始めます。この声色はルビィよりもきっと降幡愛本人に近くて、「愛のうたの響き」が感情と一緒にモロに乗っているのだと思います。冒頭、「あ」の前に少しだけ「ぅ」と入る閉口母音の処理がルビィらしくもありつつ、それでも特有の幼さが残らない、凛としたソロはやはり降幡さんの歌声なのかと。
次いで、小宮さんがその響きに優しくも悲しい色をつけ、高槻さんがハッキリとした子音処理で明朗に受け渡しを行います。
諏訪さんはそれを受け止め、切ない痛みを感じながら鈴木さんへリフレイン。
再び名に「愛」を冠する鈴木さんが香りを朗々と歌い上げると、斉藤さんの素直でまっすぐな歌声が「潮風」の語とともに涼感を呼び、最後となる小林さんはライブ特有の丁寧かつ大胆なダイナミクスでフレーズをぎゅっと抱き締める。「香り」を彼女が再び歌うのは、「愛香」の名前故でしょうか。
とにかくこのソロパートに、憧れと情熱と未知への不安と期待と……全ての感情が詰まっているように感じます。
生で聴けて、本当に良かった。
この後休憩となり、Aqoursは一旦下がるのですが、その間放心状態となり、気付けば次の曲が始まっていました。
事前に聞いていたセットリストとは既にパターンが大幅に変更されている状況で、予想できない次に飛び出してきたのは始まりのメロディでした。
思えばこの曲も1年前のクリスマスミニライブではTVsizeでの演奏で、それが今ではAqoursを代表する定番曲として、安定のパフォーマンスを見せているというのが感慨深いですよね。
夢をつかまえに行くよ どんなことが
起こるのか分からないのも 楽しみさ!
サビの最後、人差し指を前方に突き出してクイッと持ち上げるあの振りが大好きで、Aqoursに合わせて一緒に動いたりするのですが。
指を指した先に、彼女達は何を見据えるのか。1年前と今とで、観ている景色は違うのか、同じなのか。そんなことを思いながら彼女達の視線を想像すると、きっとそこにあるのはいつも変わらない、まばゆいサイリウムの光。
今年1年、様々な場面でこの曲を演奏してきたAqoursがこの光と一緒に成長を遂げてきたのだと思うとこみ上げるものがあり、途中から声が枯れていた気がします。
記憶が定かではないのですが、このあたりから視線は降幡愛さんに固定されていました。どうにもステージでぴょんぴょん動き回る彼女の一挙手一投足が気になって仕方なかったようです……。
青ジャン終了からの、円陣フォーメーション。うん、その並び方知ってます!
アニメ2期3話を通して新たな文脈が追加された、もう一つの始まりのメロディ。
今…
みらい、変えてみたくなったよ!
だって僕たちはまだ 夢に気づいたばかり
ここで円陣の中央に向かって一人ひとりが手を伸ばしていく振り付け大好きなんです。Aqoursという存在そのものの、内なる「こころ」の方へ輝きを求めて伸ばす手が重なって1つになるような、「Aqoursが生まれる」、そんなイメージが走り抜けていく気がしています。
客席側も、一番多くの演奏の機会があった曲として、一糸乱れぬコールで応対します。
この曲の2番歌詞、
君はなんども 立ち上がれるかい?
胸に手をあて "Yes!!" と笑うんだよ
という部分、本当に好きなんですよね。倒れるような場面でも、何度も立ち上がって。胸に秘めたその輝きを握りしめ、そんな逆境でも「笑う」という不敵さ。
逆境の中で戦い続けるAqoursの根本の強さが光り輝いていて、本当に勇気をくれるフレーズだと思います。
そして落ちサビのちかりこソリ。
この日のハーモニー、今までのどの演奏よりも2人の声が調和していたように感じました。
正直、本番で火がつくと伊波さん・逢田さんともに主張が強いタイプの発声へと切り替わっていく(それ自体は悪いことではない)ため、ライブ後半でのこの2人のソリは決まりにくいと思っていました。個人の技量が上がる度に完成が遠のくというのは残念だと思っていたのですが、今回、初めてと言っていいくらいに揃いました。
絆のユニゾン。
イヤモニの存在のため互いの声が聴けない状態で、ハーモニーを揃えるためには互いを信頼するしかありません。普段の練習量もやはり多いのでしょう。だからこそ、本番で力が発揮される。きっとこの先も、2人のセンターは際限なく進化を続けるのでしょう。
この曲の真の完成は近いです。
「少女以上の恋がしたい」(投票による選択枠・1日目)
投票の中身はまさかの
・恋になりたいAQUARIUM
・HAPPY PARTY TRAIN
・SKY JOURNEY
・少女以上の恋がしたい
という、企画者潰しの残酷な選択肢。
散々悩みましたが、未だライブ音源では存在しない、"最後まで全員で歌う"「少女以上の恋がしたい」を生で聴けるという魅力には抗えなかったです。
この曲のパート分け、実はデュオトリオで分かれているため、デュオトリオ芸人*2である私はそういう観点からも外せませんでした。
結果は大正解。プレミアって言葉、大好きです。
会いたいからきっと (次は)
触れたくなる (あなたは少年のまま?)
会いたいからきっと (次は)
最後のこのパート、まるまりこの3人が担当なんですけど、埼玉では「夏への扉」のためにこの3人が捌けていたわけです。今思うと大胆な演出ですよね。
逢田さん、高槻さん、鈴木さん、3人共がこの日1,2を争う伸びやかなソロを披露し、ずしっと踏みしめるような濃厚な響きを鼓膜に叩きつけてくれました。歌声に包まれる感覚はここのソロが一番強かったかもしれないです。
「HAPPY PARTY TRAIN」(投票による選択枠・2日目夜)
この日のお昼に恋アクが歌われたということで、空気を読んで実質2択でした。
SKY JOURNEYとも勿論迷ったのですが、単純にHPTが好きだったためこちらを選択。僅差で決選投票までいきましたが、結果この曲が選ばれました。
ソロパートの多いこの曲ですが、冒頭の諏訪さんの入りは活き活きと快活で、弾む気持ちが乗った最高の滑り出しでした。彼女なりに、この曲をモノにしてきているような気がします。
果南パートが決まると相乗効果で後続が一気に盛り上がるのがこの曲の特徴で、続く小林さんはライブ派の面目躍如と言わんばかりにガツガツと表現を膨らませ、勢いに乗ったまま高槻さんは相変わらずの美しい子音処理で列車を更に加速させてくれました。
この日はそれで終わりません。ファン企画の「果南レール」は恐らくしっかりと再現されたのでしょう(席が前方で後ろの様子がわからなかったです)。落ちサビの難しいところを歌う諏訪さんの声が、いつもよりも感情豊かに飛んでいた気がしました。テンションの高まりで歌声がさらに弾み上がり、それがまた観客のボルテージを高める、幸せな循環がそこにありました。
それはいわば幸福の蒸気機関。まさにHAPPY PARTY TRAINだったのではないでしょうか。
「Landing action Yeah!!」
そしてプログラムはテーマソングであり、最後の曲である「Landing action Yeah!!」へ。
合唱って、いいんですよ。声を重ねるというのは心を重ねるということです。響きを合わせるには、呼吸のそのタイミングを揃えて、ステージに立つ仲間と同じ目標へ向かって同時に吐き出すしかないんですよね。
メットライフドームのような広い会場ではなく、2000人規模の小さな箱だからこそ残響による音のズレは無く、全員の声を揃えることができたニトリ文化ホール。あの時、会場の2309人は、ステージ上とか客席とかいう垣根を超えて、ひとつの個として息が揃っていたように感じます。
サビに入ってからクラップのあと、「ここにおいで」の時に手招きする動作を上下に繰り返すところがありますが、Aqoursメンバーは人によってタイミングが違うんですね。誰かが上の時には、誰かが下に、互い違いに動くんです。
客席の我々は、それぞれの推しの動きに合わせる傾向がありますね。そうすると、会場も自然と互い違いに、呼吸を揃えながらバラバラの動きをするんです。
合唱だけでなくて、パート振り分けをしたダンスまで、一緒にできるというこの仕組み。ただのライブイベントではない、ファンミーティングって感じがして私は大好きです。
振りコピとか恥ずかしい……と思っているそこのあなた!次の機会では一緒にやってみませんか?
そんな本当に「楽しい!」雰囲気の中、終わりを迎えるイベント。心地良い疲労感と、周りの同志の満足げな顔とでなんとなく自然と笑顔になります。
荷物をしまい、コートを着て、ではさようなら。
とはならないのがファンミーティング。最後のイベントが待っていました。
(以下、文体が乱れます。お見苦しい点がありましたら申し訳ありません。)
●太陽に近づきすぎた男が灼かれて堕ちた話
実を申しまして、わたくし、声優さんとの接近戦は今回が初めてでした。
そもそも地方に住むオタクがお渡し会や握手会的なライブ以外のイベントのために遠征している余裕は無いわけで、必然的に参加するイベントはライブ中心、他は自宅や職場で指を咥えて見ている。そういう人生だったのです。
そんな折にやってきたお見送り。噂ではかなりの近距離で、ちょっとした挨拶なんかもできるというではないですか。
直前まで、私は様々なことを考えていました。
「あんちゃんに感謝を伝えたい」
「あいにゃに同郷の喜びを伝えたい」
「黒澤姉妹推しとして、ふりりんとありしゃにオッレィ!してもらいたい」
「ありしゃにダイヤ推しであることを伝えたい」
「ふりりんにEnjoy!!」
「ありしゃにぶっぶーしてもらいたい」
「オッレィ」
「がんばルビィ」
「オッレィ」……
その全部が出来るわけもなく、なによりはちゃめちゃに緊張している状態で正常な思考ができるわけもなく。
規制退場のアナウンスに従って客席から通路に出て、誘導されるがままに壁に沿って進みます。
で、ふと見るとそこにAqoursがいるんですよ。どうやらAqoursは実在します。
もう頭真っ白で、とりあえず引っ張り出した言葉が「ありがとう!」これが限界。
と、思ったところで、目の前にいた人が降幡さんに「がんばルビィ!」していて、彼女からもリアクションがあって。それを見た瞬間にガツンと現実に引き戻された感じがして、必死に斜め後方にいる降幡愛さんの方を向き、多分結構な声量で
「ふりりん、オッレィ!(ポーズつき)」
炸裂しました。
それを見た降幡さん、流れるような動作で「オッレィ!」ですよ。
天使はいました。黒澤姉妹推しの私にとって、生オッレィなんてもうこの上ない福音です。
(なんか後ろの方でその日連番だったラジオ塔さん(@llscfg)の「モルディブ行きましょう!」って声が聞こえていましたが、その時はそれどころではなかったです。)
かくして、地方オタクの小さな野望は最高の形で叶えられました。
そこで終わっておけば良かったんです。
2日目、運良く壁際の列に入ることができ、Aqoursに近いルートを通ることになりました。
昨日は降幡さんだったし、今日は伊波さんだ!って、そう思っていたんです。
で、角を曲がってふとAqoursの方を見たら、目の前にちょうどいるんです、降幡愛さん。
あ、本当に小さい……うわ可愛い……みたいなことが頭をよぎった気がしますが、今回はバッチリ目も合ってしまって、笑顔で「ありがとうございました!」って言った、気がします。
それ言い終わっても、まだ彼女、こっちを見てるんです。だったら……と繰り出したのが
「Enjoy!できました!」
の一言。それ見て降幡さん、満面の笑みで「Enjoy!!」ですもん。返してくれました。
天使はいました。その瞬間、Aqoursキャストの中で僕は彼女が一番すきなのだ、と実感しました。どうやら本当に好きになってしまったようでした。
12月10日の出来事のレポを、何故今書いているのか。
そもそも9話の記事が何故あそこまで遅くなったのか。
天高く舞い上がった私の精神は、天使にご挨拶できたほどでした、が。
太陽-サンシャイン-に近づきすぎたためにその翼は不死鳥の炎に溶かされ、堕ち、身を焦がす恋慕の炎に灼かれることとなったのでした。
割と本当にしばらく他のことが手につかず、ぼけっと降幡さんのことを考える日々を送っていたため社会復帰が遅れた次第であります。
今後、Aqoursのファンミに参加される皆様。
お見送りは危険です……存分に注意されたし。
以上で私のファンミ札幌参加レポとさせて頂きます。
だらだらと書き殴った長い文章に、付き合って頂きありがとうございました。
"Come on!!"の喚び声に引き出される可能性:北海道編・後編
皆様こんばんは。十六夜まよです。
唐突ですが、これまでのAqours楽曲には無く、μ's曲にはあったものは、何だったでしょうか?
もう一つ、「SELF CONTROL!!」、「No brand girls」、「Wonderful Rush」、「Super LOVE=Super LIVE!」……これらの楽曲の共通点は、何でしょうか?
正解は、「作曲家・河田貴央」。この一言に尽きます。
今回はラブライブ!サンシャイン!!TVアニメ2期第9話「Awaken the power」と、それに関わる挿入歌「Awaken the power」の分析を中心に、挿入歌の意義や意味、そして河田貴央という作曲家の作る音楽の魅力について触れる内容にしたいと思っています。
また、Saint Snowの挿入歌「DROPOUT!?」についても触れることがあるので、公式から出ている試聴動画でサラッと曲を聞いておくと、より理解が深まるかと思います。
注)歌詞はいつものように下線と斜体で引用とします。
●前回の!\まよログ!サンシャイン!!/
ともあれ今回の第9話、前回からの続きということで、第8話ラストの「お姉ちゃん達へ贈る曲を作ろう!」というところからのスタートとなります。
手前味噌になりますが、まずは第8話の記事(と、番外編)の宣伝をば。
"気付き"の範囲と姉の嘘:北海道編・前編 - AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険
アニメ描写から見る冬の北海道の歩き方:北海道編・番外編 - AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険
前者にて散々触れた「役割」について、今回第9話ではその大幅な配置変更が行われます。
(後者はネタで書いた北海道ガイドでしたが、やきとり弁当や函館山夜景等、第9話の予言がそこそこできていて少し嬉しかったです。)
テーマの変更や、2週も連続で同じキャラにスポットを当てるわけにはいかないというメタ的な都合もあるとは思いますが、第8話が「姉妹の絆」をテーマにすることにより黒澤姉妹と鹿角姉妹を際立たせていた構成なのに対し、第9話は「秘められた力」をテーマに理亞を含めた1年生組にスポットを当て話が進行します。
冒頭、ルビィが花丸と善子に「理亞の手伝いをしたい」と打ち明けるシーンによって、ルビィを補助するポジションがダイヤから完全に1年生組の2人へ移行したと言えるでしょう。
第8話の記事で、花丸のリアクションについて「過度な心配をしないのも信頼の形」と述べましたが、一転、今回正式にルビィの口から「手伝って欲しい」と要請が出たことで彼女は何の疑問も差し挟まずに「面白そうずら」と協力を申し出ています。
「大丈夫なの?準備とか……。」と現実的な理由を出し、若干消極的である善子に対して行動原理が「面白そう」という理由だけで動き始める花丸は少し予想外とも思えましたが、これにはしっかり理由があり、曲の中でも表現されているところなので後述とします。
●人見知り四重奏
第8話次回予告でもこのカットありましたが、「ルビィだけだと思ってたらなんか2人ついてきた」っていう理亞の不貞腐れた顔、めちゃくちゃ可愛いですね。
この4人、「話してみると意外と全員似たような人見知り具合だった」という共通点も見つかり、すんなり意気投合できたようでほっこりします。アイドルやってる高校生が人見知りも何もあったもんじゃ……とは思いますが、偉大な先輩たち*1だって意外と引っ込み思案だったりするので、問題はステージで輝けるかどうかなんです。
ここで理亞の持っていた歌詞
「私は負けない 何があっても 愛する人とあの頂に立って 必ず勝利の雄叫びを上げようぞ」
これも後述しますが、歌詞は心情の最も解りやすい現れです。
善子には「何のひねりもない」とバッサリだった言葉ですが、裏を返せばこれが理亞のストレートな想いと取ることができます。
予選が終わって尚、精神に眠る「姉と一緒に勝つ」という想い。気高く美しいものですね。
ルビィの泣き落とし?により単独北海道に残る交渉に成功した1年生組。
ここの千歌の「いいんじゃないの?1年生同士で色々話したいこともあるだろうし、ね?」
という台詞は、既に1年生組に何かの可能性を感じ取っている千歌特有の直感が働いているように感じます。
●隠された力
場面は一転、理亞の部屋での1年生組の会話。Saint Snow結成の想い出が理亞の口から語られ、ルビィが姉のことでムキになる場面、聖良に対して善子がきちんと振る舞えている姿等、「意外な」ところが沢山発見され、それが花丸によって「歌のテーマ」とまとめられます。
「隠された力」は「秘められた可能性」と意訳でき、第9話のテーマは「未来への可能性」なのだと私には感じられました。
そして残酷ではあるのですが、その可能性を伸ばし、未来において輝きに昇華させられるのは「残された時間」が存在する下級生だけであるとも言えます。
2年生はともかく、ダイヤ含めた3年生が沼津へ帰還したこと、聖良が諸々を知った様子で静かに見守り、背を向けている場面等は、ある種そういった対比とも取れると思います。
●Blessing
イベント出場に際しての面接の場面。
緊張してなかなか話が切り出せないルビィが「お姉ちゃん……。」とつぶやいたとき、思い起こされるのは過去の回想。
ダイルビきたああああああああ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!
とか、そんな騒ぐ場面じゃないんです。違うんです。
額へのキスは、親愛・友情そして祝福の意があります。
姉であるダイヤにとって、妹であるルビィへ向ける感情は常に
「貴女の行く道の先に、安全と幸運がありますように」
という純粋な祈りです。幸福を願う、聖なる祈り-Holy Bless-なんですよね。
「聖なる日の祈り」のサビの歌詞に
Holy night 聖なる日だけど
こころ 揺れ動いて
ひとりぼっち切なくなって
Holy night 祈りのことば
ふいに こぼれてきた
しあわせがキミと共に
ありますように
というものがあります。この場合は理亞と2人ではありますが、直前の場面で
「お姉ちゃんが一緒にいないのがこんなに心細いなんて……。」と言っているので、心境的にはひとりぼっちに近いのでしょう。
そんなとき、昔受けた祝福の言葉と加護のキスが思い起こされ、勇気をくれる。
時は、奇しくもクリスマス直前。
多方面で囁かれている「既存曲裏テーマ説」、私は第9話には「聖なる日の祈り」を推します。
尚、この時ルビィが思い出した「お姉ちゃんがステキだった場面ダイジェスト」、私もこのシーン全部好きです。流石ルビィ。
余談ですが、この時理亞を気にかけ、優しい言葉で支えるクラスメイト達、「なんとなくふわふわした黄色い感じの子」と「ちょっとつり目だけど根は優しい感じの黒髪ロングな子」なんですけど、「姉がいるツインテールの引っ込み思案な子」を支える友人として、すごくどこかの3人組と似ている気がして、理亞にもルビィに負けない素敵な出会いが、今後の可能性がしっかりと用意されているなぁと嬉しくなりました。
「なんでだろう?嬉しいのに、涙が出て来るの。お姉ちゃんに早く会いたいよ。」
前回も触れましたが、ルビィは人のために惜しみなく涙を流せる子です。そうして人のことを思い遣る時に持つ暖かい気持ちが「お姉ちゃんに会いたい」という言葉となって合流シーンへと向かう流れは鳥肌が立ちました。第9話で最も美しい場面転換だったと思います。
●100万ドルの夜景の中で
函館山展望台のシーンは、もう考察も何もあったものじゃないと思うんですよね。
妹の成長と、自分に向けて最高のプレゼントを用意してくれたことに喜ぶ姉。
だって黒澤ダイヤが泣いてるんですよ?これ以上言うことは無いんです。
やり切ったと言わんばかりで満足そうな妹たち。美しいんです。
ここまできたら、あとはもう、演るだけ。なのですが。
●効果的に使われる挿入歌
ラブライブ!サンシャイン!!に限らず、アニメにおいて挿入歌の持つ役割は大きいと私は考えています。
物語の雰囲気作りに一役買うのは勿論なのですが、「その場面で」「このシーンだからこそ」流れるというオーダーメイドの1曲が挿入歌であり、多くの文脈を辿る中で「今この瞬間だからこそ」という魅力を最大限に発揮するために用意されるものだと考えています。
私が挿入歌の登場ごとに記事をまとめるのも、そこが大きな区切りとなるため思考を整理するのに丁度良いという側面もあります。(本音は楽曲分析がしたいからですけど)
だからこそ挿入歌は物語の要所々々で導入されていくわけですが……。
サンシャイン!!2期においては特にその使われ方は顕著で、第3話の「MY舞☆TONIGHT」も、第6話の「MIRACLE WAVE」もそこまでのストーリーを引き締めた上で総括し、莫大なエネルギーに変換する作用を持っていました。
そして、限定的な場面だからこそその歌詞には意味があり、内容は物語に寄り添ったものであると考えています。
第3話での「諦めない心は答えではなく道を探す手がかりとなる」
第6話での「できるかなと叫ぶ心が欲しがる輝きを目の前で君に見せる」
そういったキャラクターの心情を細かく描写し、拾い集める手がかりとなるのがまた挿入歌の魅力なのではというのが私の考えです。
そして、第8話にも挿入歌は存在しました。
Saint Snowによる「DROPOUT!?」です。
この曲はイントロのみが再生され、メロディはおろか歌詞を知ることもできないままEDクレジットで曲名だけを知ることとなりましたが、「DROPOUT!?」ってモロに視聴者が考えたことであり、そしてSaint Snowの2人が1番思っていたことだったんですよね。
特に鹿角姉妹の2人は、物語においてメインキャラクターではないため、どうしてもAqours9人に比べて登場回数や台詞が少なくなりがちです。であるならば、尚更その心情や思想は曲の中に現れて然るべきだと私は考えており、事実第8話の段階では(それしか材料が無かったとも言えますが)「SELF CONTROL!!」を題材に彼女達の心情を推察していました。
なので、「DROPOUT!?」の歌詞が明らかになる時には彼女達の想いがわかるのだなあ、と考えていたのですが……。
第9話放送後に試聴動画が公開され、全貌ではありませんが曲の姿が明らかになりました。
ここまで来ても 答えが わからない
迷いの中 つかんだはずの光は
本物じゃなかった 闇に 飲み込まれて
これが聖良パートなのですが。
前回「私は後悔していません。」と理亞の前で言い切った彼女の本心が、やっぱりこれなんだと思います。
輝きを追い求めるスクールアイドルにおいて、「掴んだはずの光は本物じゃなかった」という心境には、「そこに後1歩及ばなかった」というとてつもない後悔を感じます。
理亞のラップパートからのBメロは、
DROPOUT!?
置き去りの passion
予想外 situation
なにを悔いたって lost sensation
必ず 手に入れるはずの 輝きは どこにある?
予想外のシチュエーションは視聴者もそうでしたが、1番それが意外で、あの日ステージの上にpassionを置き去りにしてしまった理亞の後悔がありありと唄われています。
そしてサビ。
それでも go to the world!
止められない 出口のない 夢の先を
探そう go to the world!
孤独がほら 今を 引き裂いてる
誰を呼びたいの 呼べばいいよ
ここのメロディ、何度聴いても本当に泣かされるんですけど、この先にAqoursとの邂逅があり、次の曲へと繋がっていくんですよね。
ちなみに時系列的には間違いなくこの曲は「ラブライブ決勝に進むため」作られているものなのではありますが、物語の効果として挿入歌という形を取った時に「Saint Snowの敗退の後悔を映すもの」という役割を持つものに変化してしまっています。
冷静に考えればおかしいのですが、だからこそ本編では歌詞が明かされず、その終了後に内容が公開されています。
そのあたりは、演出材料としての挿入歌が持つ役割ということで素直に受け取るのが1番なのではという風に思います。
(尚、2番以降はフルを待つことになりますが、個人的にはこの先に何らかの「救済」があるのではないか、と期待しています。)
そしてこの最後の「誰を呼びたいの」というフレーズが、第9話挿入歌を読み解くにあたっての重要ワードとなっていきます!
●加速するイントロ・河田節の降臨
アバンで2人が背中合わせに立つシーン、間違いなくライブシーンの導入だ……となるので、冒頭で挿入歌を匂わせておいてEDまで引っ張ってくる構成は焦らしにも程がありますよね。
とはいえ妹達の「メリークリスマス!」の声から始まる挿入歌は、どうやらこの2人だけでは完結しない様相を呈し始めます。
ここで千歌達が口にした「サプライズ」に関しては考察の得意な方がなんとかしてくれていると思いますが、そもそもことの発端が「(聖良の)最後のステージで失敗してしまった」と後悔する理亞に対してルビィが「じゃあ、最後にしなければいいんじゃないかな?」という力業を投げたことだったので、少なくとも聖良がステージに立つことはルビィ理亞の間では決まっていたことのはずです。
であるならば、函館山展望台では「妹達からのプレゼント」という形で曲を披露し、姉達がひとしきり感動したところで「じゃあイベントでは全員で歌いましょうか!」っていう流れがあったのかなぁとぼんやり考えていました。
「鞠莉ちゃんに連絡したら、協力してくれるって!」という花丸の話から、ダイヤと聖良以外のメンバーにはその演出は伝わっていたのだと推測できます。
なにはともあれ挿入歌です。
まず印象的なのはイントロの低音部でボーンボーンと鳴り響くコントラバス(?)の弦音。長さは1小節、全音符分です。
音に合わせて映し出される「街の光」もキラキラしていて抽象的ですね。
そしていよいよ主旋律の歌詞が入ってきます。
はじまる時は 終わりのことなど
考えてないから ずっと
続く気がして 前だけ見つめて
走り続けてきたから
1年生である2人にとって、あまりにも早い「姉とのスクールアイドル活動の終焉」。
ですが、それを悲観することなく、彼女達は「次」を見据えます。
どこへ? どこへ? 次はどこへ行こう?
ここの高音、黒澤ルビィとしての歌声で出せる限界を超えているのではないかと個人的には思っていたのですが、降幡愛さんはやってくれました。彼女の成長と、ルビィとして役を演じ切る、という彼女の矜持を改めて見せつけられ、平伏するしかないです。本当に美しく伸びやかで、かつルビィを見失わない素敵な高音だと思います。
からの、テンポアップするイントロ2。低音部のベースは冒頭よりも早くなり、二分音符で加速していっています。ここでも泊が強調される場面でイルミネーションが花開き、どんどんと華やかなイメージが追加されていきます。
そして視点が戻ると路地が色づき、イルミネーションも満開。イントロの加速はさらに増し、ついに四分音符でビートを刻み始めます。
この一連の盛り上げるイントロの動きを聴いての私の最初の感想が「あぁ、ついに河田神がAqoursにも降臨した……!」でした。
この記事の冒頭でも触れましたが、河田貴央さんはμ'sの「No brand girls」、「Wonderful Rush」や「Super LOVE=Super LIVE!」を作曲した方で、「SELF CONTROL!!」も彼の作品です。
私はとにかく彼の作るサウンドが大好きなのですが、これまでAqoursへの楽曲提供が無かったのが本当に残念でした。
そんな神とも言える河田さんの楽曲を、ついにAqoursが歌うのです。
これを皮切りに今後Aqoursへの本格的な楽曲提供が考えられるため、これもまた「開かれた可能性」と言うことができると思います。
話が逸れましたが、もうイントロの段階からわかるワクワク感、盛り上がっていく感情は、この曲が只者ではない……というメッセージを肌にビリビリと伝えていました。
●Come on!!と喚べばいつだって
「Come on!」彼女はいつもそう叫んでいます。
「SELF CONTROL!!」の2番では「聖良、Come on!」と彼女が呼びかけることでAメロが始まり、呼ばれた姉は存分に歌声を振るいます。
そんな彼女が今回呼んだのは、ライバルでもあるAqoursのメンバー。
Come on!!
Awaken the power yeah!!
Are you ready? …Let's go!!
彼女の代名詞でもあるラップ調の歌声から、加速を果たした曲調の中で呼ばれて飛び出すのは、姉である聖良とAqoursのメンバー達。
Let's go!を一緒に歌うルビィが可愛いです、ほんとかわいい。
「DROPOUT!?」の最後にあった「誰を呼びたいの 呼べばいいよ」の答えは、姉だけではなく、味方へと転じたAqoursだった、ということです。
ヤスパースという哲学者の唱える説に「限界状況」というものがあります。
「人が一人でできることには限界があり、必ずそこで努力や意志によっては変えることの出来ない壁に衝突し、挫折してしまう」というものなのですが……。
彼はその状況から抜け出す手段として「他者との交わり」を説いています。
Aqoursがどんなに頑張っても廃校という現実を超えられなかった時、10人目となる浦女の生徒との関わりの中から光を見出したように。
理亞にとっても塞ぎ込むしかなかった予選敗退の挫折から、彼女を救い出したのは姉の聖良ではなく、"他者"であるルビィでした。
Come on!という力強い喚び声は、自身の挫折に向き合った時にそこを抜け出す答えとなる第三者を引き寄せ、新たな存在へと進化する祈りでもあったのだと考えています。
そしてこの「Come on!」は作曲者である河田氏の作品でも、印象的に使われていますね。
「Super LOVE=Super LIVE!」は「Come on!」と「Are you ready?」の曲です。
この曲がフルで解禁された時、もしかすると間奏のあたりで高らかに「Come on!」と叫ばせてくれるソロパート11連打が待っている、かもしれません(願望)
余談ですが、この曲でのAqoursとSaint Snowの衣装カラーはそれぞれ黒澤姉妹と鹿角姉妹の瞳の色がベースにデザインされていますね。
何かを決意した時にルビィが魅せる、この表情が好きなんですけど、その時の瞳の力がすごく好きなんです。
そんな瞳の力をベースに作られた衣装、彼女達の決意と前向きな姿勢が出てきている気がして、すごく素敵だなぁって思います。
●姉の想い、友の想い
言葉って いくつも知ってるはずでも
こんな時 出てこないんだね
聖良パートと、この先のダイヤパートではこの曲を受け取った素直な感謝が唄われています。「作詞も作曲もほとんど姉様がやっていた」と理亞が語るように、聖良はこれまで多くの言葉を紡ぎ、曲を作ってきたのでしょう。そんな聖良が、言葉を失うほどの衝撃。本当に嬉しかったのだというのが伝わってきて私も言葉が出てきません。
思いの強さで 胸がいっぱいで
声になる前に 泣きそうだよ
事実、言葉も少なくただ涙を流し、抱きしめていたお姉ちゃんです。
私だって胸がいっぱいで泣きそうです。
ところで、この聖良のパートのメロディは「青空Jumping heart」のAメロと似ているように感じます。
調性は違うので完全一致ではないですが、メロディラインが似ているので気になりました。「始まり」の歌である青ジャンのフレーズメロディを「これが最後のステージ」である聖良が歌うことは始まりと終わりの円環となっており、「Saint Snowは(もっと言えば理亞は)終わりではなく、始まったばかり」というメッセージのように受け取ることができて感慨深かったです。
姉妹×姉妹×夜景。美しさのトライアングルです。
Bメロ。
がんばるって 決めたら(絶対 負けないんだ)
一緒に がんばってきた(絶対 負けないんだ)
この歌詞は最初に理亞が考えていたフレーズと似ていますよね。
そこにルビィの代名詞である「がんばる」を入れ、さらに「負けない」という強い気持ちを取り入れた上でコーラスをSaint Snowに回す構成、完璧だと思います。
そしてよしまるパート。
できないなんて やんなきゃ わからないね
花丸がAqoursに加入した際に千歌から受け取った「できるかどうかじゃない、やってみたいかどうかだよ」という精神。この言葉は彼女の中でずっと生きているのだと思います。
ルビィに協力を求められた時に「面白そうずら」という理由で行動を決めていたのも、その気持ちの現れなのでしょう。上下の指差しを反転させくるっと回す振り付けは、ネガティブな気持ち(できない)をポジティブ(できる)へ変換させるイメージなのだと感じます。
自分の中 目覚めるのは 新しいチカラ
ここでリーダーである千歌と聖良が手を合わせ、合いの手を理亞が歌うのは、先述した「他者とのまじわり」を強くイメージしている姿です。
考えてみればAqoursの予選に際して、聖良はいつも親身なアドバイスをくれていました。自分たちだけの考えに囚われずに外からの客観的な意見を取り入れる千歌のスタイルは、自然と「限界状況」を突破する手がかりとなっていたのかもしれません。
●壁を壊す「Hi!Hi!Hi!」
サビです。
このサビのメロディがそもそも「Super LOVE=Super LIVE!」と雰囲気が似ています。疾走感でガンガンと引っ張ってきたAメロBメロに対して曲調がメロディアスに変化し、サビで突如まろやかになる(でもテンポは落ちない)という緩急がそっくりなのですが、その上で挿入される「Hi!Hi!Hi!」のコール。これは最早壁を壊すあの曲のセルフオマージュです。
「壁は壊せるものさ」と歌った先輩たちも、強く手を突き上げることでそれを表現していました。
今回Saint Aqours Snowが壊すのは、それぞれが持つ可能性を秘めた自分の殻。
世界はきっと (Hi!Hi!Hi!)
知らないパワーで (Hi!Hi!Hi!)
輝いてる だから いつまでも 夢の途中
世界はきっと (Hi!Hi!Hi!)
知らないパワーで (Hi!Hi!Hi!)
輝いてる なにを選ぶか 自分次第さ (wake up my new power!)
眠る力が 動き始める (start up now!)
じっとしてないで いこうよ
どこへ どこへ
どこへ いこうか?
「可能性」という無限の夢を、眠らせずに解き放て!という覚醒のメッセージであるように感じていますが、これは1年生だけに限らず、まだまだ若い彼女達全員にも関わることであると思います。
高校の部活動としては一旦の終わりを迎えるため、「その先」は無い3年生ですが、人生においてまだまだスタートに立ったばかり。
そんな姉達への新たな出発へ向けた祝福も、この曲にはメッセージとして込められているのではないか、だからこそ、プレゼントとして相応しいのではないかと思わずにはいられません。
そして、千歌が神妙な表情で想うのは……?
今回「自分の力で歩き」、「新たな可能性を導いた」1年生組に対して、今後のAqoursのことや自分や2年生のあり方をどうするのか、そんなことを想ってのこの表情なのでしょうか。何度か本編中に見せた、悟ったような彼女のこの顔は、10話以降の展開と関わりが深い気がします(10話未視聴での感想です)。
函館山からの夜景は本当にキレイなので、皆様是非!
●Holy StarとSaint Snow
アウトロメロディは行進曲的なスネアドラムの心地良い響きとともに、ゆるやかにクールダウンしていきます。
最後の
wake up
wake up
my new world
で言われている「new world」は「DROPOUT!?」で「出口のない夢の先を探そう」と歌われる「world」なのだと思いますし、時系列等は全て無視して、やはりこの曲は「DROPOUT!?」へのアンサーソングである側面はあるのだと思います。
そして最後に11人全員で表現される星。
このフォーメーション、9人じゃ無理なんですよね。(当然2人でも)
これも「他者との交わり」によって限界状況を突破した2グループの生み出した新たな輝きの形であり、さらには裏テーマとなる「聖なる日の祈り」で唄われる「Holy Star」でもあると言えます。
Holy star きよし光よ
いつもそこにあるの
ひとりぼっちじゃなかったみたい
Holy star 祈りのことば
そっとあふれてくる
よろこびはキミの胸を
星になって 照らしてるよ
しあわせがキミと共に
ありますように
新たな出発、新たな可能性の発露。そういったものへの力強い祝福の祈りが、この曲に込められているのではないでしょうか。
つまるところ、「Awaken the power」は「おでこへのキス」ってことなんです。(暴論)
終演後、「Saint Snowはやっぱり続けない。」と聖良に語る理亞。
「これは姉様との想い出だから。世界に1つしかない雪の結晶だから。」
雪の結晶は、その温度や核となる物質、気象条件で様々な形をとり、全く同じものは複数存在しないと言われます。
聖良と理亞が作り上げた「Saint Snow」という雪の結晶はシーズンを終えて溶けてなくなってしまいますが……。
「だから、新しいグループで違う雪の結晶を見つけて、姉様にも、皆にも喜んでもらえるスクールアイドルグループを作る。見てて!」
そう言う彼女の瞳には美しい結晶が1つ。
溶けた雪は水となり大地を循環し、やがて空に昇り、そして冬には雪となって再び舞い降ります。
雪もまた、不滅の象徴。炎の中から蘇る黒澤姉妹の不死鳥に対して、鹿角姉妹は正反対ではありますが同じ精神を持つ「雪」として描かれている、北海道編のラストに相応しい描写かなと思います。
そんな彼女達の姿を見て千歌は何を想うのか。
1つのスクールアイドルグループの終わりに立ち会い、また新たな目覚めを見届けた彼女が想うところは。
最後は陽光に輝くスノードームと共に、ダイヤの
「祝福しましょう。2人の新たな羽ばたきに。」の台詞。
やはりダイヤによる「祝福」が第9話のもう一つのテーマだった、と言えるでしょう。
●喚び起こされた「可能性」達
総括です。
「Awaken the power」における「power」は「可能性」と意訳しますが、このエピソードによりAwaken(=喚び起こされた可能性)は一体どのくらいあるのでしょう。
①新たな"Snow"
スクールアイドルを辞めるとまで言っていた理亞を勇気づけ、「新たなグループを作る」とまで言わせたルビィは、今後2年間に渡って戦い続ける厄介なライバル(そして戦友)を目醒させてしまったようです。彼女の今後の活躍に期待ですね。
②新たな"Aqours"
初代Aqoursは3年生達の物語でした。これはMIRACLE WAVEを通して昇華され、千歌へと受け継がれました。それは、千歌達2年生のAqoursです。
今回1年生組だけで多くの行動をし、結果を出したことを受け、千歌は何か思うところがあるようでした。学校が無くなった来年度、Aqoursは現在の形のまま6人で活動するのか、それとも……?を考えた時に、それでもルビィを中心とした1年生の3人はスクールアイドルとして活動を続けると思います。そんな新たなAqoursの、最初の1歩が北海道で踏み出されたのだと思います。
③新たな曲の広がり
これは現実世界での話で、梨子の作曲レパートリーの中に河田節が加えられたことにより、今後Aqoursへ河田貴央さん作の楽曲が追加される可能性があります。これは個人的には大革命なので、その発表が待たれるところです。
そして、ユニットライブの発表。
今回、アニメ2期のBD特典曲がメンバーのソロで決定したため、単純にBDが全巻発売する頃には9曲もの楽曲が追加されることとなります。
ライブでそれらを網羅した時、全二十数曲というセットリストの中でソロが占める割合は多く、他を削らざるを得なくなります。
函館でユニットに注目したライブをやることで、Saint Snowの挿入歌を回収した上で3rdでユニットステージをキャンセルできる口実を作ることができた、というのはセットリストの構成に当たって非常に賢い選択だと感じました。
実際どうなるかはわかりませんが、各ライブで色のあるステージをするためにテーマがハッキリとする、というのは良いことだと思います。
こうした多くの可能性が今後に向けて提示された第9話分析、如何だったでしょうか。
故郷である北海道を舞台としたストーリーで、アニメのオリジナルキャラである鹿角姉妹にもスポットが当たり、姉妹の絆と可能性という私の大好きなワードで彩られた第8話、9話だったので、時間をかけてしまいましたがこうして感想ブログを連続で上げることとなりました。
大切な北海道編の、皆様に取っての新たな気付きや「好き!」への足がかりになれば幸いです。
次回は……ラブライブ決勝での勝負曲考察!?
*1:特にμ's3年生組はすごいよね
アニメ描写から見る冬の北海道の歩き方:北海道編・番外編
はぁぁああぁぁーーーーーーーーーーーーーーーー
るばるぅーーーー来たぜHAKODATEーーーー!!!!!
このシーンの千歌っちの台詞から、北島三郎さんの「函館の女」を連想できたラブライバーってどのくらいの割合いるんでしょうね???
というわけで皆様こんばんは、十六夜まよです。
第8話感想記事、お読み頂けたでしょうか。めちゃくちゃ長くなってしまいました。
"気付き"の範囲と姉の嘘:北海道編・前編 - AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険
本来ならばその記事の中で触れようと思っていた、アバン他の北海道描写について。
割と冬の北海道へ訪れるにあたっての注意事項っぽいものを読み取ることができ、「これって札幌ファンミーティングで北海道へ来るファンに向けての公式のガイダンスなのでは?」と思ったことが多々あったのでお蔵入りにするのも勿体無く、本編とは分けてオマケの記事にすることにしました。
こちらの記事は本当に力を抜いて書いていますし、校正もきちんと行わずに雑に投下する予定のものなので、まあそんなものだと思ってお読み頂ければと思います。文体もいくらか砕けたものになるはずです。
・地吹雪
じふぶき、と読みます。(「ぢふぶき」では?とか言うのは野暮です)
実際にそんなに雪が降っていなくても、強い風により一度積もった雪が舞い上がり吹雪となって襲いかかる現象。水分の少ない乾燥した雪が降った翌日等に起きやすいため、雪質によっては注意が必要です。
「何も、見えませんわね……!」
とは我らがダイヤさんの言葉ですが、実際ひどいときは完全に視界が奪われます。
尚、札幌市はそのような状態でも自転車に乗るあたまのわるい北大生という生物が生息しているので本当に視界が悪いときは地下に潜ることをオススメします。
札幌駅からすすきのまでのエリアには広大な地下歩行空間「チカホ」(名前がめちゃくちゃみかんオレンジ色している…!)が広がっているため、天候に関係なく快適に移動することができます。
「これがsnow white!ビューティホー……。」
とか言ってますが、雪で視界が無くなる現象は「ホワイトアウト」と言います。鞠莉ちゃんがこのことを言いたかったのかはわかりませんが……。
・北海道の男子小学生あるある
「雪めッ!甘いわァ!避けるべし!避けるべしッ!!」
と遊んでる善子ですが、これ雪の粒が大きめでふわふわしており、風がそこまで強くない場合に、風が自分の身体を迂回して動くことになるため風に乗った雪を本当に自分が躱しているような錯覚に陥ります。それでは聴いてください、
「俺今雪の攻撃全部避けてるからーーーーwwwww」みたいなやりとりは、雪国の小学生男子が登下校中によくやるのではないでしょうか。堕天使よ、そのレベルか。
「なんだか眠くなって……。」
と遭難ごっこを始める曜ちゃん。可愛いんですがやっぱりその発想は小学生男子レベルです。
・ですとろいやー
そんな阿鼻叫喚な地獄絵図の中、割と元気な千歌。
いや実際このデストロイヤータイプの目出し帽、本当に暖かくて良いんですよ。特に地吹雪なんてものは乾燥して細かい雪の粒が強風で煽られて飛んでくるため、肌に刺さってきて痛いんです。なるべく顔の露出を避けるこの装備は、最良の選択と言えるでしょう。
カニ、そこまで好きじゃないんですよね。そういう道民多いのではないでしょうか。
苦労の割に得られるものが少ないのでコスパが…とか理由は様々です。無駄に高いし。
・雪道の歩き方
ここ1番大切です、これだけでも覚えて帰ってください。
通常のローファーだったため盛大にすっ転んだ善子と、しっかり冬靴を準備していたために余裕のダイまり。流石おねぃちぁ!
スパイクを履けとは言いませんが、やはり冬の北海道を歩くにあたっては靴底が複雑にカットされている冬仕様の靴を履くべきかと思います。また、単独で転ぶ分にはまあ良いのですが、他人に足払いをかける感じで横に滑ったりすると迷惑度が一気に跳ね上がるので、やはり転ばない対策は必要です。
「これでこのような雪山もご覧の通り!」
とはいきません。(ここの台詞ユニゾンめちゃくちゃ調和してて良いですよね。)
しかし、この現象は割とリアルで、「両足の時には接地面積が広くて体重が分散するので雪山の上に立っていられても、片足に体重がかかった瞬間に圧力が倍増して埋まる」ということはよくあります。
道を塞ぐ雪山(割とよくある)に登る際は注意してください。
・手に息吹いて暖めるやつ
12月の札幌は外気温が常時氷点下ということもあるので、息をはぁ~とやると暖かいです。
が、ルビィちゃん、これでは暖まりません。
手袋を脱ぎ、素手でやることをオススメします。
・函館国際ホテル
ようちかホテルこと、函館国際ホテルですが、いつだかの「朝食が美味しいホテルランキング」みたいなやつで上位に入り、朝食だけ食べに来る客がいるほどのレストランがあるらしいので、函館巡礼に行く方は是非宿泊してみてください。
ちなみにレストラン名は「アゼリア」です。
って思ったら2018年秋に向けて改装中とのこと。来年まで待ちましょう。
・HAKODATEの観光地
善子が「魔法陣……!」と感動していますが、実際タワーの上から見下ろすと、綺麗に設計された星型の堀が展開されており、美しい、の一言です。何か出て来そう感あります。
市電。
歴史ある町並みの中をゆっくりと進む電車ですが、北海道内で路面電車が存在するのは函館市と札幌市のみです。北海道遺産にもなってます。
情緒ある雰囲気に浸れるので、のんびり乗ってみるのも良いと思います。
ちなみにそんな北海道遺産、雪のシーズンの札幌では初音ミクさん仕様になったりします。未来ずら。
ラッピ。
道民ですら函館に行くと何故か行きたくなるファーストフード店。
花丸ちゃんの食べていたふとっちょバーガーがインパクトありすぎですが、普通のサイズのバーガーも普通にうまいので女性でも安心です。
だが鉄板焼きスパゲティ、てめーはダメだ*1
なお隣のハセガワストアのやきとり弁当も名物です。併せてどうぞ。
ロープウェイ使って山に登ると100万ドルです。
アニメで出てくるかと思いましたが第8話ではこの遠景だけでした。第9話でライブシーンに取り入れられたりしたら感動ですね。果たして。
なお天候に恵まれないことで有名。雨やめー能力を持たない人は徒労に終わる可能性もあるのでお覚悟ですわ。
以上、第8話にて描写されていたHOKKAIDO要素を簡単に解説してみました。
ファンミ札幌で北海道へお越しになる方は、参考にして頂ければ10%くらい役に立つかもしれません。
ついでに宣伝です。
先日、浦ラジやその他のラジオ番組にてよくお名前を耳にする「またおま勢」の一角、DIA様ちゃんのロードローラーさん(@RBYYYYYYYYYYYYY)のリスナーラジオ企画、「ロードローラジオ」に、札幌ファンミ直前SPゲストとして稚拙な喋りスキルながら出演させていただきました。アーカイブで聴けます。
その場で北海道対策や観光地・グルメのことなど地元愛トークを展開しておりますので、気が向いた方がいれば作業の合間にでも流して頂けると嬉しいです。
ブログ執筆のキッカケなんかも話しています。
他にも良く名前を聴くおたより職人さんたちから寄せられたメールや、大喜利のコーナーなど、「声優ラジオ」への愛が詰まった番組となっておりますので、是非に。
第6回 #ロードローラジオ
— DIAちゃんのロードローラー (@RBYYYYYYYYYYYYY) 2017年11月22日
番組初の200分超え!
そしてたくさんのお便りを送って頂き、本当にありがとうございました!
SPゲスト@daimarco16 さんの貴重なお話、心強いサポートにも感謝です!
第7回放送もお楽しみに!!
↓ アーカイブはこちらhttps://t.co/Ns7YoNtlha pic.twitter.com/2FYBNCtD9K
ではでは、番外編はこれにて終了です。
次は本編、第9話の記事でお会いしましょう~