AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

十六夜まよ(@daimarco16)がおんがくを考えるところです

舞舞と 不死の双翼 揺蕩うて

皆様こんばんは。十六夜まよです。

 

ラブライブ!サンシャイン!!アニメ2期 第3話「虹」放送されましたね。

そして劇中で初公開となった挿入歌、実に艶やかで素晴らしい完成度となっていました。

今回、楽曲の分析・考察を行うのはその

MY舞☆TONIGHT Sounded by Aqours

です!

注)例に倣い、歌詞は下線と斜体で引用とします。が、耳コピのため本来のものとは異なる場合がありますのでご了承下さい。

 

 

・雨の音から生まれた和の曲

まずは音と歌声から聴き取れる情報を整理していきます。

冒頭、和琴と篠笛の音色からしゃなり、しゃなりと始まるこの曲は、一瞬でテーマが「和」であることを感じさせます。カメラアングルが上向きになり、映るステージの天井が和傘の骨格のように見えるのも印象的ですね。

そして我らが黒澤姉妹のソリによる

踊れ 踊れ 熱くなるため 人はうまれたはずさ

という曲の導入。

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口元だけをアップにする少し妖艶なカットも取り入れつつ、2人の魅力を存分に引き出す素敵な歌い出しとなっています。

ダイヤの持つ和の雰囲気にしっかりと合わせるため、ルビィの歌声がトーン低めで調和するようにコントロールされており、降幡愛さんの演技力が光る場面でもあります。

勿論誰もが気付いていることでしょうが、このメロディは第2話「雨の音」にて、1,3年生組が雨宿りで訪れたお寺で、雨漏りを器で受け止めた時の「雨の音」がモチーフになっています。

劇伴として流れたBGMが曲のモチーフとなっている例は1期11話挿入歌想いよひとつになれに関わる「想いのかけら」と「海に還るもの」で強烈に我々なインパクトを残しており、今回の「雨の音」も挿入歌のメロディラインとして採用されるだろうと多くの人が予想していました。

そこは予想を裏切らない形で取り入れられており、に関わる音から曲の着想を得るというスタンスは1期の時から変わらないAqoursのテクニックの一つとして確固たるものになったのかなという印象です。

 

そして、曲はイントロメロディへと突入します。

冒頭のソリから一転、アップテンポにギアチェンジし加速していく様子はアイドルソングらしい展開となっており、1小節ごとに訪れる強拍部分でメンバーのポーズがビシッと決まっていくカメラワークは曲に寸分違わずマッチし、最高に気持ちが良い演出となっています。個人的にはテンポが早くなる直前、気分を一気に高めてくるピアノのグリッサンドAqoursらしくてお気に入りのポイントです。

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ここのようよしのカットが格好良くて大好き

 

・「焔」は何を示しているのか

Aメロの歌詞、
今小さく燃えてる まだ小さな焔が ひとつになればキセキが生まれ

の部分はAqoursのメンバーひとりひとりの輝きを小さな焔(ホムラ)と例えています。

ここをではなくと表現するあたり、厨二病患者である善子の作詞センスが混ざっている要素なのかなと感心しつつ、焔は「火群」とも言い換えることができるため、ただの「炎」よりも「集合体」であるという意味が強いように思えます。

また、ここのダイヤのパートでピタッと止まる伴奏の演出はイントロとも似ていますがより休符を意識した構成になっているように感じます。

これは第2話で花丸が提言していた「無」の概念を音楽に落とし込んだ時に、休符という「無音を奏でる」表現となったものであると言えるかもしれません。

「休符も音符である」とはよく言ったもので、音楽の中には静寂を挟むことでその前後をより強調し、エネルギーを蓄えるような表現が存在します。

そこがただの「無」ではなく、「無という音がある」と思えば、その瞬間に雑音を挟もうとするようなことがいかに無粋であるかは想像に難くないですが……この話は完全に別の話題となってしまうので深くは触れないこととします。

 

ところでこの焔、2度も「小さく」「小さな」と強調されています。これは現段階ではまだまだキセキを起こすには足りないAqoursの輝きを暗示しているのかなと思うと同時に、別のものを比喩しているのだと私は考えています。

それが、蝋燭の炎です。

これまた第2話にて、お寺には電気が通ってなく、1,3年生は蝋燭の火で明かりを確保し夜を過ごしたわけですが、この炎が、光が彼女たちにとって大切で暖かいものだったのは間違いないでしょう。(現に消えてしまった時には悲鳴が上がっていました)

サビに採用されている

踊れ 踊れ 熱くなるため

というフレーズ、この「踊り」「熱く」なっているのは蝋燭の揺蕩う炎なのではないかと思うのです。

暗く心細い夜を照らし、安心を与えてくれる炎。それは太陽の光に比べれば小さく、心許ないものかもしれませんが、「炎」は古来から人類が暗闇に負けないよう知恵を絞り獲得し、発展の礎となってきた文明の象徴です。

例え小さくても、その力が集まり、大きく燃え上がることでいつかは夜に打ち勝ち、日の出を迎えることができる。そんな不安の中に秘めた確かな決意と覚悟が蝋燭の炎には込められているはずです。

この曲のサビ前までの調性は変ロ短調で、不安や憂鬱といったものも表現されているようですが、私はその中に燃える信念のようなものも感じ取れました。そのあたりも、この蝋燭の炎のイメージと合うのではないでしょうか。

作詞は果南も行っていたということでしたが、暗闇を一番恐れていたのは彼女でした。きっと蝋燭の炎に1番安心を貰っていたのが彼女だったのかなと想像すると、こういった歌詞が生まれるのも納得がいきます。

そんな気持ちが現れているのがAメロ後半からBメロの歌詞、

この世界はいつも 諦めない心に
答えじゃなく 道を探す 手がかりをくれるから
最後まで強気で行こう!

の部分であるのかなと思います。

「答え」そのものではないけれど、暗闇を照らし道を探す「手がかり」となる人工の光。諦めない心でそれをかざしていれば、いつかそれが大きな光となり、キセキと呼べるようなことだって起こせるはず。

そういった決意と覚悟、信念の歌。それがこのMY舞☆TONIGHTなのではないかなと。

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場面転換で映像が切り替わるところでも、炎のエフェクトが効果的に使われ、炎と一緒に、焔として舞い踊るAqoursの姿が鮮明に表現されています。

サビやアウトロの振り付けにも、上げた手のひらをゆらゆらと下ろしていく表現が使われており、これも「炎」を表現する要素の一つであると感じられました。

 

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そして、鞠莉のエアギター善子の手首にあしらわれた黒猫。

これはそれぞれ鞠莉のロック好きという作曲スタンスがただの和風曲ではなく和ロックとしてアレンジされたことに、また寺で出会った黒猫が衣装のイメージとして取り入れられたこととして、まさにこの曲が1,3年生のお寺合宿の集大成、と呼べる曲になっていることを表しています。

また、ステージの照明そのものが白色ではなくオレンジ色に近い照明であること、床や壁が木造であることは第2話のお寺の中のイメージと一致しており、ライティング演出でも和の雰囲気を表現していますね。

 

サビからはキーが上がり、見え隠れしていた決意や覚悟といった要素がよりハッキリと前に出てきたように感じます。

揺らめいていた炎はさらに強く燃え上がり、冒頭のフレーズを繰り返します。

踊れ 踊れ 熱くなるため 人は生まれてきたの
踊れ 踊れ きっとそうだよ だから夢見て踊ろう

MY舞☆TONIGHT DANCING TONIGHT 最高の
MY舞☆TONIGHT DANCING TONIGHT 今日にしよう

このサビの歌詞は焔として、人として夢見る明日を勝ち取るための決意を明確にするものですが、「最高の今日にしよう」とも歌っています。

これはOP「未来の僕らは知ってるよ」でも歌われている

希望で一杯の 今日が明日を引き寄せるんだ

というフレーズの、「今日を、今を精一杯希望に溢れたものにすることで明日(=未来)を引き寄せることができる」という考えにも通じるものがあり、2期に入ってから千歌が言い続けている「やれることに一つずつがむしゃらにでも手を伸ばし、可能性を信じ続けること、そうすることで少しずつ未来を変え、キセキと繋げていくこと」という大きなテーマ(だと私が想像しているもの)にも繋がっていくものだと思えます。

 

そして、メロディを「雨」が、詩を「焔(=光)」がそれぞれ表現するこの曲によって次にもたらされる未来が「虹」だったのだなというのが私の解釈となります。

これについては挿入歌として出てきた君のこころは輝いてるかい?へと繋げる独自の解釈であり、劇中で実際に降っていた「雨」とAqoursそのものが表現する「輝き」によって「虹」が生まれるという考え方の方が自然だとは思います。

 

 

・焔と黒澤姉妹のもう一つの役割

さて、ここからは曲のイメージと私の推しである黒澤姉妹にまつわる考察です。

徐々に「こうであれば良い」という幻想に近くなっていくので、そういう考え方もできなくもない、くらいで読んで頂けると嬉しいです。

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この曲のセンターは黒澤ダイヤルビィ姉妹によるダブルセンターなのは疑いようがないと思います。ダイヤがセンターと考えることもできますが、冒頭のソリが黒澤姉妹によることや、第2話で1,3年生をまとめるべく奔走したのがこの2人であったこと等がその裏付けかと。

さらに「舞舞」という単語は曲舞(くせまい)という中世芸能の別名であるらしく、「舞」の字がふたつ重なるのは「2人で舞う芸能であるから」という説があるそうです。

タイトルの「MY舞(=舞舞)」の部分はこの曲には主役が2人いる、ということを示しているのではないでしょうか。

そして前述してきた「焔」の曲であること。

アニメでの時系列や曲が公開されている順番、タイミング等に関しては無視しますが、Next step projectを通して彼女たちには魂の色として「不死鳥」という属性記号が与えられていることを、我々は既に知っています。

説明するまでもなくデュオトリオコレクションCDのインフェルノフェニックス」によるものですね。

「炎から生まれる」「小さな焔からのキセキ」そういった表現は不死鳥伝説と通ずるものがあり、さらに劇中、抽選番号24を引いた善子が「24(ふし)…不死鳥!」と、ライブにおける不死鳥の存在を示唆(?)しています。

さらにはこの曲の調性である変ロ短調およびサビからのロ短調は「ロ」の音、つまりドレミで言うところの「シ」の音が主音となっている曲であり、「2つのシ=ふし」というメッセージが隠されている、と考えることもできる、かもしれません。

そして何より、この曲が「次のラブライブの予選用の曲である」という点。

前回東海地区予選まで駒を進めていたAqoursは、それでも突破とはならず、予選敗退という形で大会を終えました。さらに突きつけられた廃校が不可避であるという現実。

そういった諸々の逆境から脱却するための"逆襲の一手"、"復活の狼煙"として繰り出されたこの曲は、まさに炎の中から何度も復活する不死鳥の如く、Aqoursの再出発を象徴する曲なのではないかと思えてならないのです。

なればこその黒澤姉妹ダブルセンター。これは不死鳥をデュオ名に宿す2人にとっては必然と言えることだったのではないでしょうか。

 

 

・衣装に見る黒澤姉妹の絆

この曲の演奏前、黒澤姉妹の会話シーンがありました。

「ルビィ、ずっとずっと思ってたんだ。」

「……お姉ちゃん、絶対似合うのに、って。」

 というルビィの台詞。

「(こういう衣装が)絶対似合うのに(着る機会が無いのは残念だと)ずっとずっと思ってた」という言外のニュアンスが汲み取れます。

第2話で明かされた、初代Aqoursの衣装製作にルビィも関わっていたという事実。そしてその初代Aqoursは夏までで活動を休止していました。それをきっかけに姉は「それ、見たくない」と言うほどにスクールアイドルから離れてしまったこと。

これらの事実から、ルビィは2年もの間、姉のためにどんな衣装が良いのか、どんな衣装を着せてあげたいのかを考え続けてきたことが想像できます。

2年前、完成間近に迫っていた未熟DREAMER。あの曲も琴の音色を冒頭に使い、花火大会での披露を予定する「和」ベースの曲でした。

今回の衣装、ルビィが2年越しにダイヤに着て欲しかったその衣装は、未熟DREAMER」の衣装から「和」要素をさらに強調し深化させた、ダイヤのための「和風Aqoursの完成形」だったのではないでしょうか。

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2年前は誰もが未熟で完成には到達しなかった曲や衣装を、時が経った今だからこそ9人の力でもう一度復活させ、完成版として今度こそ姉に着てもらいたい。

そんな願いが叶ったからこそのあの台詞だったのかなと想像すると、「ルビィ……」とだけ呟き、妹を抱きしめたダイヤの心中は、想像している以上に尊く美しい感情によるものなのではないでしょうか。

 

そんな姉妹の絆が込められたこの1曲、挿入歌版は1コーラスだけで終わり、その後の展開が忙しいというメタ的な原因もあったためにあっさりとした印象になってしまっているのは少し残念な気もします。

が、これから発売される挿入歌シングルによるフルバージョン、そしてライブでの生演奏等、この曲の果たすべき役割はまだまだこれからたくさんあるはずです。

そんな活躍に期待しつつ、多くの人にこの曲のことをもっと好きになって貰えたらという願いを込めて今回はこの辺にしておこうかと思います。

 

「水」「輝き」というテーマをメインに扱うAqoursにとって、「焔」「宵闇」という真逆の要素を取り入れているこの楽曲は、意外にもイメージと調和し新たな色として違和感なく表現することができているような気がします。

これは、それらの要素を反発することなく受け入れられる多くの伏線の配置によってなされているもので、その説明の多くが第2話にちりばめられていました。

こういった丁寧な作りの中で発表された新曲が挿入歌であることは本当にありがたいことですし、アニメ2期の今後の展開、次の挿入歌がどんなものになるか期待と想像を膨らませつつ、毎週土曜日を楽しみにしていきたいですね。

 

ちなみに、手前味噌ではありますが以前に書いた「真夏は誰のモノ?」の記事もございますので、この記事で共感していただけた方にはそちらも目を通して頂けると嬉しいです。

デュオトリオ「承」:姉妹が夢見た情熱と幻想 - AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

 

それでは!

 

次回は…次の挿入歌が公開されたタイミングでお会いしましょう!