覚醒と継承:届かない星に手を伸ばし続ける普通怪獣考
皆様こんばんは。十六夜まよです。
「新たな挿入歌が来たら更新する」と言っていたこのブログですが、危なく挿入歌が来たのに更新できなくなるところでした。第6話が強すぎました。
2期第6話挿入歌、凄まじいの一言でしたね。
というわけで、今回は
MIRACLE WAVE Sounded by Aqours
についての掘り下げを行いたいと思いますが…
この曲はどうしても本編の内容とリンクが強く、曲だけで語れる要素を物語が軽く押し流していく感じなので、いつもよりもアニメ本編感想を多めに取り入れた考察になるかと思います。
念のため、本編未視聴の方はネタバレ注意です。
注)歌詞は下線と斜体で引用とします。が、耳コピのため本来のものとは異なる場合がありますのでご了承下さい。
・覚醒と継承
膨大なメッセージの込められた第6話でしたが、私は千歌の「主人公としての真の覚醒」、そして果南からの「Aqoursのリーダー及び精神性の継承」が行われた回だったと感じました。
そして、それらの要素を包括し、さらに後述するもう一つの要素を加えて完成した曲がMIRACLE WAVEであり、それはAqoursが1期では越えられなかった「地区予選の壁」を突破する一手として放った奥義とも言える曲だったのだと考えています。
・目醒める普通怪獣
「普通怪獣ちかちー」というフレーズは既にアニメ1期の1話から登場しており、基本的には千歌自身が「自分には何もなく、普通の存在である」と自虐的に語るために使われてきた言葉でした。
1期の物語の中では、そんな「普通」の存在が輝きを求めて精一杯走ろうとし、μ'sという「特別」の背中を追う姿が描かれていましたが、だからこそ彼女は他のメンバーの持つ「特別」を誰よりも肯定し、全力で応援していくことでその力を味方につけ、Aqoursを形作っていきました。
梨子のピアノ、花丸やルビィの「やってみたい」という気持ち、善子の堕天使、3年生のスクールアイドルへの未練、そして曜の「千歌と一緒のことがしたい」という願い。
それらを知ってか知らずか、彼女は自然と正しく可能性の広がる方向へ導き、結果、μ'sの後を追うだけではない、Aqoursとしての輝きを手にしました。
しかし、結果は地区予選敗退。
渾身の「MIRAI TICKET」でしたが、AqoursがAqoursとして輝くためにはどうやらピースが一つ足りなかったようです。
それが、千歌自身の輝き。
砂浜で期限ギリギリまで粘るも、なかなか成功に辿り着かない千歌へ、曜と梨子が最後の後押しをします。
「まだ自分は普通だって思ってる?」
「普通怪獣ちかちーで。リーダーなのに皆に助けられて、ここまで来たのに自分は何も出来てないって。違う?」
「今こうしていられるのは誰のおかげ?」
「一番大切な人を忘れてませんか?」
「今のAqoursができたのは、誰のおかげ?最初にやろうって言ったのは誰?」
「千歌ちゃんがいたから私は、スクールアイドルを始めた。」
「私もそう。皆だってそう。」
「他の誰でも今のAqoursは創れなかった」
「千歌ちゃんがいたから、今があるんだよ。そのことは忘れないで。」
「自分のことを普通だって思っている人が諦めずに挑み続ける。それができるってすごいことよ。すごい勇気が必要だと思う。」
「そんな千歌ちゃんだから皆頑張ろうって思える。Aqoursをやってみようって思えたんだよ」
「恩返しだなんて思わないで。皆ワクワクしてるんだよ。」
「千歌ちゃんと一緒に、自分たちだけの輝きを見つけられるのを。」
ここに来て、1番近くで千歌を見ていた2人から、そして恐らくは千歌自身が「この2人は本当にすごい」と思っている曜と梨子から。あらん限り、最大限の肯定です。
月並みですが、「キミは本当はすごいんだよ」と、そういった言葉を投げかけられるのは、千歌に取ってきっと本当に意外で、だからこそ"目が醒めた"のだと、そう思います。
本番直前、決意に満ちた千歌を見つめる曜の表情は、誇らしげでした。
・奥義の存在、「Aqours」の継承
Aqoursというグループは、2年前にも存在していたのは周知の事実です。しかしその知名度や実力等の具体的な情報は明らかにされていませんでした。
第3話で予備予選を勝ち抜いた「MY舞☆TONIGHT」が1,3年生主体で創られたものでしたが、そのパフォーマンスは「決勝出場グループに引けを取らない」という評価を得ました。
また、2年前に鞠莉の怪我により発表を断念した曲が、「決勝へ進むためのもの」だったことがダイヤの口から明かされました。
第2話で曲作りの話になったとき、ダイヤからは「スクールアイドルの先輩として負けていられない」といった言葉も出ており、彼女たち初代Aqoursは、現在のAqoursの一員となりつつも、先輩としての矜持やプライドをまだ持ち続けているのではと思います。
これは決してマイナスの意味ではなく、誇り高い心が2年のわだかまりを解かれた今、完全に復活し現Aqoursの力となっていることの証だと考えています。
とにかく、そんな初代Aqoursの3人から見た現在のAqoursのパフォーマンスは、どうやらこのままでは地区予選突破には少し届かないようです。
3人での会話で、禁断とも言えるノートを手にする果南に、ダイヤと鞠莉は
「状況はわかっているでしょう?それに賭けるしかない」
「学校の存続のためにやれることは全てやる」
と言い放ちます。
これは、現状のAqoursではやはり決勝大会進出には何か力が足りていないと3年生は判断しているものと考えられます。
より高度なものを求め「奥義」とも呼べるフォーメーションダンスを提案しようとするも、2年前にそれで無理をし過ぎて鞠莉が怪我をしたことが頭をよぎり、消極的な果南。
「否定しないで。あの頃のことを。私にとってはとても大切な想い出。だからこそ、やり遂げたい。あの時夢見た"私達のAqours"を完成させたい」
9人となったAqoursに所属しながら、2年前の初代Aqoursの完成を未だ夢見る鞠莉。この想いは、千歌に託されることとなります。
屋上のシーン、フォーメーションの存在が明かされ、それでも乗り気ではない果南が
「千歌にそれができるの?」と問いかけるも、「大丈夫、やるよ、私」と即答されます。
「できるかどうかじゃない、やってみたいかどうかだよ」と以前花丸に言った千歌の気持ちは、あくまでも足掻き続けることを求めていました。
「MY舞☆TONIGHT」の歌詞にもあるように、諦めない心で手を伸ばし続けることだけがキセキを起こす条件である、という物語の本質は変わりません。
ところで、練習の仕切りや、終了とするタイミング等、実質的な発言や決定権の数々は、どうやら3年生に多くあると言えます。
さらに言えばその中心にいるのは果南でしょう。
そんな果南が、新フォーメーションダンスの採用に当たって「危険が伴う」と消極的なのは、それとは別に、無意識にでも千歌に足りていないものを感じていたから、なのかもとも考えられます。
3年生3人が感じていた「このままではダメだ」という危機感は、意外と共有されたものだったのかもしれません。
・継承の儀式
一生懸命練習をするも、なかなか成功に辿り着かない千歌。
これ以上は危険と判断した果南が出した条件は「明日の朝まで」というもの。
王道バトル展開が大好きな私に取ってこういう流れは大好物で、期限ギリギリで技を自分のものとし、師を越えていく主人公……みたいな流れはアツいとしか言いようがありません。
ただし、これには条件があり、千歌が「今の足りないモノ」にどこかで気付き、目醒めることと、それが全員に認められて真のリーダーと成ること、が奥義継承の条件だったのではないかと考えています。
前述の曜と梨子の台詞で千歌の覚醒は済んでおり、各所に傷を負いながら良い顔で彼女を見守るメンバー達は同じ苦労を共有することで彼女の行動に信頼と応援の気持ちを抱いています。
そして、最後に自分にまっすぐ向かってくる千歌の姿を見たからこそ、これまで、2年前は親友2人のために、現在は幼馴染の千歌と、さらに5人の後輩達のために自分にも人にも厳しくあらねばならなかったストイックな果南が、千歌を本当の意味でAqoursのリーダーと認め、果南のAqoursを千歌に受け継ぐことができる、と考えて発した言葉が「ありがとう、千歌!」だったのではと考えています。
Aqoursという波の起点・中心にいながら、これまで自分自身の輝きと向き合えなかった千歌ですが、こうして真のリーダーとして覚醒し、初代Aqoursからの想いと力を受け継ぐ形で認められたことは前回大会にはなかった大きな進化です。
目覚めたら違う朝だよ
「勇気はどこに?君の胸に!」のこの歌詞も随分意味が違って聞こえますよね。
この曲の考察記事ではないので少し触れるだけになりますが、2番Bメロの
信じてあげなよ 自分だけのチカラ
君が君であろうとしてるチカラ
確かめに行かなくちゃ
元気にさあ出発だ!
ここのパートが2年生による掛け合いなのは、シングルのリリースタイミング含めて計算され尽くしているとしか思えません。
・届かない星だとしても
それではいよいよ「MIRACLE WAVE」の考察に入ります。
え?違う曲のタイトルが見えていますか?そうですね。
……ところで、劇中の会話に色々と気になるワードがありましたね。
「奥義」の採用に消極的な果南がこぼした
「届かないものに手を伸ばそうとして、そのせいで誰かを傷つけて、それを千歌たちにおしつけるなんて……」
というセリフや、聖良が千歌に話した、
「ラブライブが始まって、その人気を形作った先駆者たちの輝き。決して手の届かない光。」
「届かない」「光」「手を伸ばす」というキーワードから、「届かない星だとしても」を連想した人も多かったのではないでしょうか。
特に聖良の話した内容は、具体名こそ出ていないものの、μ'sやA-RISEといった無印時代の主人公たちを彷彿とさせる話です。
「届かない星だとしても」がμ'sを始めとした先達に少しでも追い縋ろうと手を伸ばし続け足掻く、Aqoursの泥臭さが表現された"挑戦の曲"であるのは明らかであると思います。
そして、不可能と思われる技の完成を求めて、無謀とも言える挑戦を続けた千歌。彼女の視線の先には、μ'sやA-RISE、そして初代Aqoursがいました。
メタ的なことを言えば、新曲が来るのは濃厚でまず間違いなく挿入歌は新曲だろうと思いつつ、この曲が来てもおかしくないとも思っていました。
手を伸ばし続けることの意味、何にでも挑戦するがむしゃらさ、Aqoursの根元。
MIRACLE WAVEの中に、この曲の精神が眠っています。
イントロが始まった瞬間から感じた、「似てる!」という感覚は、フォロワーさんのくれたヒントで確信に変わりました。
サンシャイン考察班への伝言なのですが、
— 林檎好き🍏🌸0.343億秒 (@R_g_jol) 2017年11月11日
楽曲の調性、コード進行、使ってるコード、リズム、掛け合いというエレメント、歌詞のテーマ、それらを全部見て、
「MIRACLE WAVE」と「届かない星だとしても」の関連性を調べるとかなり面白い文章になるのではないかと。
フォロワーの林檎好きさん(@R_g_jol)のつぶやきなのですが、ヒントというかこれがほぼ答えになっているような気がします笑
まずは調性について。
「届かない星だとしても」及び「MIRACLE WAVE」の調は変ホ長調で、共通しています。
この調の持つ一般的なイメージというのがまたすごくて、
「柔和な中にも悠然さを持ち、響きが充実し、華麗で荘重。最大の変化の表出に適すると言われる。」
「特に真剣な感情、壮大あるいは英雄的な気分を表すのによく使われる」
と表現されています。「英雄の調」とも呼ばれるようです。*1
真剣でがむしゃらに向かって行く姿勢、なにより大きな壁に立ち向かう心を奮い立たせるイメージと、その壮大さに負けない華やかさを感じる曲だったので、この説明は本当にしっくりきました。
「最大の変化の表出」というのも、千歌の覚醒というテーマに多分に沿っていると考えられます。
次に、コード進行。
このあたりは自分が1番遠い分野なので、簡単な説明でお茶を濁しますが、「カノン進行」という非常に有名で耳に馴染みのあるコードの進行手法があります。
「パッヘルベルのカノン」をご存知でしょうか。卒業証書授与とかでよく聞くアレです。
あの曲の音の流れと、この2曲の、具体的にはサビに入ってからのコードの進行が共通しており、E♭(ミのフラット)から徐々に音階が下がっていく伴奏の動きになっています。
このコード、「日本人が大好きなコード」とも呼ばれており、数々のヒット曲に組み込まれているものでもあります。
多くの人に魅力的だと思って貰うことができる、王道を征く曲調を選択したのはやはりAqoursの「新たな輝き」を多くの人に知ってもらうためなのでしょうか。
さらにテンポとリズムですが、同じくサビで、入りの「できるかな」「とどかない」が四分音符でビートを刻む動きをしており、曲そのもののテンポもほぼ同じくらいのように感じます。
曲そのものの性質もコールを煽る作りで掛け合いが多く含まれ、観客と一緒に盛り上がることができる楽しさをどちらも持っています。
以上の数々の通じる点から、「MIRACLE WAVE」のバックボーンには「届かない星だとしても」が組み込まれており、"がむしゃらに駆け抜け、手を伸ばし続ける"というテーマをより深めているのだと考えられます。
・新しい波に乗って
あとはひたすらこの曲への「好き」を羅列していくだけなので、皆様気持ちを楽にしてお付き合いください。
Aメロ、2年生(ようりこ)による入りから、3年生のコーラス、
限界までやっちゃえ最後まで(どうなる?ドキドキWAVE)
じれったい自分越える時だよ(そうだWAVE越えちゃうんだ)
さらに1年生パートから再び3年生のコーラスへ。
わかんないこと考えられない(どうなる?ドキドキWAVE)
一つになったユメよ走れ(そうだWAVE止まれないんだ)
この3パートでの掛け合いは、本来3人で演奏する曲がベースとなって作られていることも意味しているのではないでしょうか。つまり、ここにも初代Aqoursの想いが現れているように感じられます。
3年生コーラスの「WAVE」に合わせた波のような振り付けがアクセントとなっていて、曲にメリハリを与えていますね。
カメラワークも大胆に引き、一気に寄り、こういったところも寄せて返す波のようです。
そしてBメロ、満を持して千歌の登場です。
悔しくてじっとしてられない そんなキモチだった皆きっと わかるんだね
千歌自信の「悔しい」もありますが、そんな千歌を見て他のメンバーも大小様々な傷を作りながら、練習を重ねていました。
ただ千歌だけが頑張ったのではない、全員の努力あってこその技。ドルフィンによるフォーメーションダンスが炸裂します。
そして「奥義」となる千歌のアクロバット。
こんなの本番でキメられたら平伏するしかないです。伊波杏樹さんを信じています。
さらにさらに、強烈なカットイン演出*2からのサビ。もう言うことはありません。
できるかな?(Hi!)できる!(Hi!)叫ぶ心が 欲しがる輝きに 目の前で君に見せるんだ
できるかな?(Hi!)できる!(Hi!)それしか無いんだと 決めて
ここで自問自答して「できる」と言い切る気持ち、そしてそれを「君に見せるんだ」という歌詞は、千歌から3年生への「もう安心して任せていいよ」という宣言でしょうか。
この涙の演出は本当にずるいと思います。
この瞬間、初代Aqoursの3人から、新生Aqours9人への「継承」は完全に執り行われたのだと感じました。
それを受けての
アツいアツいジャンプで!
もう言うことはありません。(2回目)
この曲をライブで聴くことができる日、Aqoursと一緒に叫び、一緒に跳びたい。私の願いはそれだけです。
新しい光 掴めるだろうか 信じようよ!(yeah!)
MIRACLE WAVEが MIRACLE呼ぶよ
サビの後半まで抜かりありませんね……この曲本当何なんですか。
斯くして、千歌の覚醒と奥義の発動成功により「新しい光(=輝き)」を掴んだAqours。
波はお互いを増幅し、より大きなものへと成長していきます。
2年前に一度途絶えてしまった初代の波を、千歌が起点となり新たな波として復活させ、そこに初代Aqoursすらも巻き込み、一気に大きな波へと成長していく……
そんな様子こそが、「Aqours WAVE」だったのかな、というのが私の第6話、及び「MIRACLE WAVE」への感想です。
最後の千歌の台詞。
「皆、信じてくれて、ありがとう!」
これで完全にダメになります。
「ありがとう」という言葉について、2ndツアーのMCであんちゃんが
「演奏後に皆が『ありがとう』って言ってくれるのが聞こえる、『ありがとう』って言いたいのはこっちなのに、それが皆から返ってくるのって、相思相愛じゃない!?」
というようなことを言ってくれたのを覚えています。(一言一句同じではないですが……)
果南から千歌への「ありがとう」
千歌から皆への「ありがとう」
この応酬の中には、間違いなく愛があり、より強固になった絆を感じます。
果たして、予選の結果は。そして廃校の行方は。
アニメ2期も折り返しとなり、次回からも目が離せませんね。
それでは、また次の挿入歌が炸裂する時にお会いしましょう!