AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

十六夜まよ(@daimarco16)がおんがくを考えるところです

"Come on!!"の喚び声に引き出される可能性:北海道編・後編

皆様こんばんは。十六夜まよです。

 

 

唐突ですが、これまでのAqours楽曲には無く、μ's曲にはあったものは、何だったでしょうか?

もう一つ、「SELF CONTROL!!」、「No brand girls」、「Wonderful Rush」、「Super LOVE=Super LIVE!」……これらの楽曲の共通点は、何でしょうか?

 

 

正解は、「作曲家・河田貴央。この一言に尽きます。

 

今回はラブライブ!サンシャイン!!TVアニメ2期第9話「Awaken the power」と、それに関わる挿入歌「Awaken the power」の分析を中心に、挿入歌の意義や意味、そして河田貴央という作曲家の作る音楽の魅力について触れる内容にしたいと思っています。

また、Saint Snowの挿入歌「DROPOUT!?」についても触れることがあるので、公式から出ている試聴動画でサラッと曲を聞いておくと、より理解が深まるかと思います。

www.youtube.com

 

注)歌詞はいつものように下線と斜体で引用とします。

 

●前回の!\まよログ!サンシャイン!!/

ともあれ今回の第9話、前回からの続きということで、第8話ラストの「お姉ちゃん達へ贈る曲を作ろう!」というところからのスタートとなります。

手前味噌になりますが、まずは第8話の記事(と、番外編)の宣伝をば。

"気付き"の範囲と姉の嘘:北海道編・前編 - AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

アニメ描写から見る冬の北海道の歩き方:北海道編・番外編 - AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

前者にて散々触れた「役割」について、今回第9話ではその大幅な配置変更が行われます。

(後者はネタで書いた北海道ガイドでしたが、やきとり弁当や函館山夜景等、第9話の予言がそこそこできていて少し嬉しかったです。)

 

テーマの変更や、2週も連続で同じキャラにスポットを当てるわけにはいかないというメタ的な都合もあるとは思いますが、第8話が「姉妹の絆」をテーマにすることにより黒澤姉妹と鹿角姉妹を際立たせていた構成なのに対し、第9話は「秘められた力」をテーマに理亞を含めた1年生組にスポットを当て話が進行します。

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冒頭、ルビィが花丸と善子に「理亞の手伝いをしたい」と打ち明けるシーンによって、ルビィを補助するポジションがダイヤから完全に1年生組の2人へ移行したと言えるでしょう。

第8話の記事で、花丸のリアクションについて「過度な心配をしないのも信頼の形」と述べましたが、一転、今回正式にルビィの口から「手伝って欲しい」と要請が出たことで彼女は何の疑問も差し挟まずに「面白そうずらと協力を申し出ています。

「大丈夫なの?準備とか……。」と現実的な理由を出し、若干消極的である善子に対して行動原理が「面白そう」という理由だけで動き始める花丸は少し予想外とも思えましたが、これにはしっかり理由があり、曲の中でも表現されているところなので後述とします。

 

●人見知り四重奏

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第8話次回予告でもこのカットありましたが、「ルビィだけだと思ってたらなんか2人ついてきた」っていう理亞の不貞腐れた顔、めちゃくちゃ可愛いですね。

この4人、「話してみると意外と全員似たような人見知り具合だった」という共通点も見つかり、すんなり意気投合できたようでほっこりします。アイドルやってる高校生が人見知りも何もあったもんじゃ……とは思いますが、偉大な先輩たち*1だって意外と引っ込み思案だったりするので、問題はステージで輝けるかどうかなんです。

ここで理亞の持っていた歌詞

「私は負けない 何があっても 愛する人とあの頂に立って 必ず勝利の雄叫びを上げようぞ」

これも後述しますが、歌詞は心情の最も解りやすい現れです。

善子には「何のひねりもない」とバッサリだった言葉ですが、裏を返せばこれが理亞のストレートな想いと取ることができます。

予選が終わって尚、精神に眠る「姉と一緒に勝つ」という想い。気高く美しいものですね。

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ルビィの泣き落とし?により単独北海道に残る交渉に成功した1年生組。

ここの千歌の「いいんじゃないの?1年生同士で色々話したいこともあるだろうし、ね?」

という台詞は、既に1年生組に何かの可能性を感じ取っている千歌特有の直感が働いているように感じます。

 

●隠された力

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場面は一転、理亞の部屋での1年生組の会話。Saint Snow結成の想い出が理亞の口から語られ、ルビィが姉のことでムキになる場面、聖良に対して善子がきちんと振る舞えている姿等、「意外な」ところが沢山発見され、それが花丸によって「歌のテーマ」とまとめられます。

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「隠された力」は「秘められた可能性」と意訳でき、第9話のテーマは「未来への可能性」なのだと私には感じられました。
そして残酷ではあるのですが、その可能性を伸ばし、未来において輝きに昇華させられるのは「残された時間」が存在する下級生だけであるとも言えます。

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2年生はともかく、ダイヤ含めた3年生が沼津へ帰還したこと、聖良が諸々を知った様子で静かに見守り、背を向けている場面等は、ある種そういった対比とも取れると思います。

 

●Blessing

イベント出場に際しての面接の場面。

緊張してなかなか話が切り出せないルビィが「お姉ちゃん……。」とつぶやいたとき、思い起こされるのは過去の回想。

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ダイルビきたああああああああ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!

とか、そんな騒ぐ場面じゃないんです。違うんです。

額へのキスは、親愛・友情そして祝福の意があります。

姉であるダイヤにとって、妹であるルビィへ向ける感情は常に

「貴女の行く道の先に、安全と幸運がありますように」

という純粋な祈りです。幸福を願う、聖なる祈り-Holy Bless-なんですよね。

「聖なる日の祈り」のサビの歌詞に

Holy night 聖なる日だけど 
こころ 揺れ動いて
ひとりぼっち切なくなって
Holy night 祈りのことば 
ふいに こぼれてきた
しあわせがキミと共に
ありますように

というものがあります。この場合は理亞と2人ではありますが、直前の場面で

「お姉ちゃんが一緒にいないのがこんなに心細いなんて……。」と言っているので、心境的にはひとりぼっちに近いのでしょう。

そんなとき、昔受けた祝福の言葉と加護のキスが思い起こされ、勇気をくれる。

時は、奇しくもクリスマス直前。

多方面で囁かれている「既存曲裏テーマ説」、私は第9話には「聖なる日の祈り」推します。

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尚、この時ルビィが思い出した「お姉ちゃんがステキだった場面ダイジェスト」、私もこのシーン全部好きです。流石ルビィ。

 

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余談ですが、この時理亞を気にかけ、優しい言葉で支えるクラスメイト達、「なんとなくふわふわした黄色い感じの子」「ちょっとつり目だけど根は優しい感じの黒髪ロングな子」なんですけど、「姉がいるツインテールの引っ込み思案な子」を支える友人として、すごくどこかの3人組と似ている気がして、理亞にもルビィに負けない素敵な出会いが、今後の可能性がしっかりと用意されているなぁと嬉しくなりました。

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「なんでだろう?嬉しいのに、涙が出て来るの。お姉ちゃんに早く会いたいよ。」

前回も触れましたが、ルビィは人のために惜しみなく涙を流せる子です。そうして人のことを思い遣る時に持つ暖かい気持ちが「お姉ちゃんに会いたい」という言葉となって合流シーンへと向かう流れは鳥肌が立ちました。第9話で最も美しい場面転換だったと思います。

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●100万ドルの夜景の中で

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函館山展望台のシーンは、もう考察も何もあったものじゃないと思うんですよね。

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妹の成長と、自分に向けて最高のプレゼントを用意してくれたことに喜ぶ姉。

だって黒澤ダイヤが泣いてるんですよ?これ以上言うことは無いんです。

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やり切ったと言わんばかりで満足そうな妹たち。美しいんです。

ここまできたら、あとはもう、演るだけ。なのですが。

 

 

●効果的に使われる挿入歌

ラブライブ!サンシャイン!!に限らず、アニメにおいて挿入歌の持つ役割は大きいと私は考えています。

物語の雰囲気作りに一役買うのは勿論なのですが、「その場面で」「このシーンだからこそ」流れるというオーダーメイドの1曲が挿入歌であり、多くの文脈を辿る中で「今この瞬間だからこそ」という魅力を最大限に発揮するために用意されるものだと考えています。

私が挿入歌の登場ごとに記事をまとめるのも、そこが大きな区切りとなるため思考を整理するのに丁度良いという側面もあります。(本音は楽曲分析がしたいからですけど)

 

だからこそ挿入歌は物語の要所々々で導入されていくわけですが……。

サンシャイン!!2期においては特にその使われ方は顕著で、第3話の「MY舞☆TONIGHT」も、第6話の「MIRACLE WAVE」もそこまでのストーリーを引き締めた上で総括し、莫大なエネルギーに変換する作用を持っていました。

そして、限定的な場面だからこそその歌詞には意味があり、内容は物語に寄り添ったものであると考えています。

第3話での「諦めない心は答えではなく道を探す手がかりとなる」

第6話での「できるかなと叫ぶ心が欲しがる輝きを目の前で君に見せる」

そういったキャラクターの心情を細かく描写し、拾い集める手がかりとなるのがまた挿入歌の魅力なのではというのが私の考えです。

 

そして、第8話にも挿入歌は存在しました。

Saint Snowによる「DROPOUT!?」です。

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この曲はイントロのみが再生され、メロディはおろか歌詞を知ることもできないままEDクレジットで曲名だけを知ることとなりましたが、「DROPOUT!?」ってモロに視聴者が考えたことであり、そしてSaint Snowの2人が1番思っていたことだったんですよね。

特に鹿角姉妹の2人は、物語においてメインキャラクターではないため、どうしてもAqours9人に比べて登場回数や台詞が少なくなりがちです。であるならば、尚更その心情や思想は曲の中に現れて然るべきだと私は考えており、事実第8話の段階では(それしか材料が無かったとも言えますが)SELF CONTROL!!」を題材に彼女達の心情を推察していました。

なので、「DROPOUT!?」の歌詞が明らかになる時には彼女達の想いがわかるのだなあ、と考えていたのですが……。

第9話放送後に試聴動画が公開され、全貌ではありませんが曲の姿が明らかになりました。

ここまで来ても 答えが わからない
迷いの中 つかんだはずの光は
本物じゃなかった 闇に 飲み込まれて

これが聖良パートなのですが。

前回「私は後悔していません。」と理亞の前で言い切った彼女の本心が、やっぱりこれなんだと思います。

輝きを追い求めるスクールアイドルにおいて、「掴んだはずの光は本物じゃなかった」という心境には、「そこに後1歩及ばなかった」というとてつもない後悔を感じます。

理亞のラップパートからのBメロは、

DROPOUT!?
置き去りの passion
予想外 situation
なにを悔いたって lost sensation
必ず 手に入れるはずの 輝きは どこにある?

予想外のシチュエーションは視聴者もそうでしたが、1番それが意外で、あの日ステージの上にpassionを置き去りにしてしまった理亞の後悔がありありと唄われています。

そしてサビ。

それでも go to the world!
止められない 出口のない 夢の先を
探そう go to the world!
孤独がほら 今を 引き裂いてる
誰を呼びたいの 呼べばいいよ

ここのメロディ、何度聴いても本当に泣かされるんですけど、この先にAqoursとの邂逅があり、次の曲へと繋がっていくんですよね。

ちなみに時系列的には間違いなくこの曲はラブライブ決勝に進むため」作られているものなのではありますが、物語の効果として挿入歌という形を取った時にSaint Snowの敗退の後悔を映すもの」という役割を持つものに変化してしまっています。

冷静に考えればおかしいのですが、だからこそ本編では歌詞が明かされず、その終了後に内容が公開されています。

そのあたりは、演出材料としての挿入歌が持つ役割ということで素直に受け取るのが1番なのではという風に思います。

(尚、2番以降はフルを待つことになりますが、個人的にはこの先に何らかの「救済」があるのではないか、と期待しています。)

そしてこの最後の「誰を呼びたいの」というフレーズが、第9話挿入歌を読み解くにあたっての重要ワードとなっていきます!

 

 

●加速するイントロ・河田節の降臨

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アバンで2人が背中合わせに立つシーン、間違いなくライブシーンの導入だ……となるので、冒頭で挿入歌を匂わせておいてEDまで引っ張ってくる構成は焦らしにも程がありますよね。

とはいえ妹達の「メリークリスマス!」の声から始まる挿入歌は、どうやらこの2人だけでは完結しない様相を呈し始めます。

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ここで千歌達が口にした「サプライズ」に関しては考察の得意な方がなんとかしてくれていると思いますが、そもそもことの発端が「(聖良の)最後のステージで失敗してしまった」と後悔する理亞に対してルビィが「じゃあ、最後にしなければいいんじゃないかな?」という力業を投げたことだったので、少なくとも聖良がステージに立つことはルビィ理亞の間では決まっていたことのはずです。

であるならば、函館山展望台では「妹達からのプレゼント」という形で曲を披露し、姉達がひとしきり感動したところで「じゃあイベントでは全員で歌いましょうか!」っていう流れがあったのかなぁとぼんやり考えていました。

「鞠莉ちゃんに連絡したら、協力してくれるって!」という花丸の話から、ダイヤと聖良以外のメンバーにはその演出は伝わっていたのだと推測できます。

 

なにはともあれ挿入歌です。

まず印象的なのはイントロの低音部でボーンボーンと鳴り響くコントラバス(?)の弦音。長さは1小節、全音符分です。

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音に合わせて映し出される「街の光」もキラキラしていて抽象的ですね。

そしていよいよ主旋律の歌詞が入ってきます。

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はじまる時は 終わりのことなど
考えてないから ずっと

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続く気がして 前だけ見つめて
走り続けてきたから

1年生である2人にとって、あまりにも早い「姉とのスクールアイドル活動の終焉」。

ですが、それを悲観することなく、彼女達は「次」を見据えます。

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どこへ? どこへ? 次はどこへ行こう?

ここの高音、黒澤ルビィとしての歌声で出せる限界を超えているのではないかと個人的には思っていたのですが、降幡愛さんはやってくれました。彼女の成長と、ルビィとして役を演じ切る、という彼女の矜持を改めて見せつけられ、平伏するしかないです。本当に美しく伸びやかで、かつルビィを見失わない素敵な高音だと思います。

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からの、テンポアップするイントロ2。低音部のベースは冒頭よりも早くなり、二分音符で加速していっています。ここでも泊が強調される場面でイルミネーションが花開き、どんどんと華やかなイメージが追加されていきます。

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そして視点が戻ると路地が色づき、イルミネーションも満開。イントロの加速はさらに増し、ついに四分音符でビートを刻み始めます

この一連の盛り上げるイントロの動きを聴いての私の最初の感想が「あぁ、ついに河田神がAqoursにも降臨した……!」でした。

この記事の冒頭でも触れましたが、河田貴央さんはμ'sの「No brand girls」、「Wonderful Rush」や「Super LOVE=Super LIVE!」を作曲した方で、「SELF CONTROL!!」も彼の作品です。

私はとにかく彼の作るサウンドが大好きなのですが、これまでAqoursへの楽曲提供が無かったのが本当に残念でした。

そんなとも言える河田さんの楽曲を、ついにAqoursが歌うのです。

これを皮切りに今後Aqoursへの本格的な楽曲提供が考えられるため、これもまた「開かれた可能性」と言うことができると思います。

話が逸れましたが、もうイントロの段階からわかるワクワク感、盛り上がっていく感情は、この曲が只者ではない……というメッセージを肌にビリビリと伝えていました。

 

 

Come on!!と喚べばいつだって

Come on!彼女はいつもそう叫んでいます。

SELF CONTROL!!」の2番では「聖良、Come on!と彼女が呼びかけることでAメロが始まり、呼ばれた姉は存分に歌声を振るいます。

そんな彼女が今回呼んだのは、ライバルでもあるAqoursのメンバー。

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Come on!!
Awaken the power yeah!! 
Are you ready? …Let's go!!

彼女の代名詞でもあるラップ調の歌声から、加速を果たした曲調の中で呼ばれて飛び出すのは、姉である聖良とAqoursのメンバー達。

Let's go!を一緒に歌うルビィが可愛いです、ほんとかわいい。

「DROPOUT!?」の最後にあった「誰を呼びたいの 呼べばいいよ」の答えは、姉だけではなく、味方へと転じたAqoursだった、ということです。

 

ヤスパースという哲学者の唱える説に「限界状況」というものがあります。

「人が一人でできることには限界があり、必ずそこで努力や意志によっては変えることの出来ない壁に衝突し、挫折してしまう」というものなのですが……。

彼はその状況から抜け出す手段として「他者との交わり」を説いています。

Aqoursがどんなに頑張っても廃校という現実を超えられなかった時、10人目となる浦女の生徒との関わりの中から光を見出したように。

理亞にとっても塞ぎ込むしかなかった予選敗退の挫折から、彼女を救い出したのは姉の聖良ではなく、"他者"であるルビィでした。

 

Come on!という力強い喚び声は、自身の挫折に向き合った時にそこを抜け出す答えとなる第三者を引き寄せ、新たな存在へと進化する祈りでもあったのだと考えています。

 

そしてこの「Come on!」は作曲者である河田氏の作品でも、印象的に使われていますね。

「Super LOVE=Super LIVE!」は「Come on!」と「Are you ready?」の曲です。

この曲がフルで解禁された時、もしかすると間奏のあたりで高らかに「Come on!」と叫ばせてくれるソロパート11連打が待っている、かもしれません(願望)

余談ですが、この曲でのAqoursSaint Snowの衣装カラーはそれぞれ黒澤姉妹鹿角姉妹の瞳の色がベースにデザインされていますね。

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何かを決意した時にルビィが魅せる、この表情が好きなんですけど、その時の瞳の力がすごく好きなんです。

そんな瞳の力をベースに作られた衣装、彼女達の決意と前向きな姿勢が出てきている気がして、すごく素敵だなぁって思います。

 

 

 

●姉の想い、友の想い

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言葉って いくつも知ってるはずでも
こんな時 出てこないんだね

聖良パートと、この先のダイヤパートではこの曲を受け取った素直な感謝が唄われています。「作詞も作曲もほとんど姉様がやっていた」と理亞が語るように、聖良はこれまで多くの言葉を紡ぎ、曲を作ってきたのでしょう。そんな聖良が、言葉を失うほどの衝撃。本当に嬉しかったのだというのが伝わってきて私も言葉が出てきません

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思いの強さで 胸がいっぱいで
声になる前に 泣きそうだよ

事実、言葉も少なくただ涙を流し、抱きしめていたお姉ちゃんです。

私だって胸がいっぱいで泣きそうです

 

ところで、この聖良のパートのメロディは青空Jumping heartのAメロと似ているように感じます。

調性は違うので完全一致ではないですが、メロディラインが似ているので気になりました。「始まり」の歌である青ジャンのフレーズメロディを「これが最後のステージ」である聖良が歌うことは始まりと終わりの円環となっており、Saint Snowは(もっと言えば理亞は)終わりではなく、始まったばかり」というメッセージのように受け取ることができて感慨深かったです。

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姉妹×姉妹×夜景。美しさのトライアングルです。

 

Bメロ。

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がんばるって 決めたら(絶対 負けないんだ)
一緒に がんばってきた(絶対 負けないんだ)

この歌詞は最初に理亞が考えていたフレーズと似ていますよね。

そこにルビィの代名詞である「がんばる」を入れ、さらに「負けない」という強い気持ちを取り入れた上でコーラスをSaint Snowに回す構成、完璧だと思います。

そしてよしまるパート。

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できないなんて やんなきゃ わからないね

花丸がAqoursに加入した際に千歌から受け取った「できるかどうかじゃない、やってみたいかどうかだよ」という精神。この言葉は彼女の中でずっと生きているのだと思います。

ルビィに協力を求められた時に「面白そうずらという理由で行動を決めていたのも、その気持ちの現れなのでしょう。上下の指差しを反転させくるっと回す振り付けは、ネガティブな気持ち(できない)をポジティブ(できる)へ変換させるイメージなのだと感じます。

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自分の中 目覚めるのは 新しいチカラ

ここでリーダーである千歌と聖良が手を合わせ、合いの手を理亞が歌うのは、先述した「他者とのまじわり」を強くイメージしている姿です。

考えてみればAqoursの予選に際して、聖良はいつも親身なアドバイスをくれていました。自分たちだけの考えに囚われずに外からの客観的な意見を取り入れる千歌のスタイルは、自然と「限界状況」を突破する手がかりとなっていたのかもしれません。

 

 

●壁を壊す「Hi!Hi!Hi!」

サビです。

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このサビのメロディがそもそも「Super LOVE=Super LIVE!」と雰囲気が似ています。疾走感でガンガンと引っ張ってきたAメロBメロに対して曲調がメロディアスに変化し、サビで突如まろやかになる(でもテンポは落ちない)という緩急がそっくりなのですが、その上で挿入される「Hi!Hi!Hi!」のコール。これは最早壁を壊すあの曲のセルフオマージュです。

「壁は壊せるものさ」と歌った先輩たちも、強く手を突き上げることでそれを表現していました。

今回Saint Aqours Snowが壊すのは、それぞれが持つ可能性を秘めた自分の殻

世界はきっと (Hi!Hi!Hi!)
知らないパワーで (Hi!Hi!Hi!)
輝いてる だから いつまでも 夢の途中

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世界はきっと (Hi!Hi!Hi!)
知らないパワーで (Hi!Hi!Hi!)
輝いてる なにを選ぶか 自分次第さ (wake up my new power!)

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眠る力が 動き始める (start up now!)
じっとしてないで いこうよ
どこへ どこへ
どこへ いこうか?

「可能性」という無限の夢を、眠らせずに解き放て!という覚醒のメッセージであるように感じていますが、これは1年生だけに限らず、まだまだ若い彼女達全員にも関わることであると思います。

高校の部活動としては一旦の終わりを迎えるため、「その先」は無い3年生ですが、人生においてまだまだスタートに立ったばかり。

そんな姉達への新たな出発へ向けた祝福も、この曲にはメッセージとして込められているのではないか、だからこそ、プレゼントとして相応しいのではないかと思わずにはいられません。

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そして、千歌が神妙な表情で想うのは……?

今回「自分の力で歩き」、「新たな可能性を導いた」1年生組に対して、今後のAqoursのことや自分や2年生のあり方をどうするのか、そんなことを想ってのこの表情なのでしょうか。何度か本編中に見せた、悟ったような彼女のこの顔は、10話以降の展開と関わりが深い気がします(10話未視聴での感想です)。

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函館山からの夜景は本当にキレイなので、皆様是非!

 

●Holy StarとSaint Snow

アウトロメロディは行進曲的なスネアドラムの心地良い響きとともに、ゆるやかにクールダウンしていきます。

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最後の

wake up
wake up
my new world

で言われている「new world」は「DROPOUT!?」で「出口のない夢の先を探そう」と歌われる「world」なのだと思いますし、時系列等は全て無視して、やはりこの曲は「DROPOUT!?」へのアンサーソングである側面はあるのだと思います。

そして最後に11人全員で表現される星。

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このフォーメーション、9人じゃ無理なんですよね。(当然2人でも)

これも「他者との交わり」によって限界状況を突破した2グループの生み出した新たな輝きの形であり、さらには裏テーマとなる「聖なる日の祈り」で唄われる「Holy Star」でもあると言えます。

Holy star きよし光よ
いつもそこにあるの
ひとりぼっちじゃなかったみたい
Holy star 祈りのことば
そっとあふれてくる
よろこびはキミの胸を
星になって 照らしてるよ
しあわせがキミと共に
ありますように

新たな出発、新たな可能性の発露。そういったものへの力強い祝福の祈りが、この曲に込められているのではないでしょうか。

つまるところ、「Awaken the power」は「おでこへのキス」ってことなんです。(暴論)

 

終演後、Saint Snowはやっぱり続けない。」と聖良に語る理亞。

「これは姉様との想い出だから。世界に1つしかない雪の結晶だから。」

雪の結晶は、その温度や核となる物質、気象条件で様々な形をとり、全く同じものは複数存在しないと言われます。

聖良と理亞が作り上げたSaint Snowという雪の結晶はシーズンを終えて溶けてなくなってしまいますが……。

 

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「だから、新しいグループで違う雪の結晶を見つけて、姉様にも、皆にも喜んでもらえるスクールアイドルグループを作る。見てて!」

そう言う彼女の瞳には美しい結晶が1つ。

溶けた雪は水となり大地を循環し、やがて空に昇り、そして冬には雪となって再び舞い降ります。

雪もまた、不滅の象徴。炎の中から蘇る黒澤姉妹の不死鳥に対して、鹿角姉妹は正反対ではありますが同じ精神を持つ「雪」として描かれている、北海道編のラストに相応しい描写かなと思います。

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そんな彼女達の姿を見て千歌は何を想うのか。

1つのスクールアイドルグループの終わりに立ち会い、また新たな目覚めを見届けた彼女が想うところは。

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最後は陽光に輝くスノードームと共に、ダイヤの

「祝福しましょう。2人の新たな羽ばたきに。」の台詞。

やはりダイヤによる「祝福」が第9話のもう一つのテーマだった、と言えるでしょう。

 

 

●喚び起こされた「可能性」達

総括です。

「Awaken the power」における「power」は「可能性」と意訳しますが、このエピソードによりAwaken(=喚び起こされた可能性)は一体どのくらいあるのでしょう。

①新たな"Snow"
スクールアイドルを辞めるとまで言っていた理亞を勇気づけ、「新たなグループを作る」とまで言わせたルビィは、今後2年間に渡って戦い続ける厄介なライバル(そして戦友)を目醒させてしまったようです。彼女の今後の活躍に期待ですね。

②新たな"Aqours"
初代Aqoursは3年生達の物語でした。これはMIRACLE WAVEを通して昇華され、千歌へと受け継がれました。それは、千歌達2年生のAqoursです。
今回1年生組だけで多くの行動をし、結果を出したことを受け、千歌は何か思うところがあるようでした。学校が無くなった来年度、Aqoursは現在の形のまま6人で活動するのか、それとも……?を考えた時に、それでもルビィを中心とした1年生の3人はスクールアイドルとして活動を続けると思います。そんな新たなAqoursの、最初の1歩が北海道で踏み出されたのだと思います。

③新たな曲の広がり
これは現実世界での話で、梨子の作曲レパートリーの中に河田節が加えられたことにより、今後Aqours河田貴央さん作の楽曲が追加される可能性があります。これは個人的には大革命なので、その発表が待たれるところです。

そして、ユニットライブの発表。

今回、アニメ2期のBD特典曲がメンバーのソロで決定したため、単純にBDが全巻発売する頃には9曲もの楽曲が追加されることとなります。
ライブでそれらを網羅した時、全二十数曲というセットリストの中でソロが占める割合は多く、他を削らざるを得なくなります。

函館でユニットに注目したライブをやることで、Saint Snowの挿入歌を回収した上で3rdでユニットステージをキャンセルできる口実を作ることができた、というのはセットリストの構成に当たって非常に賢い選択だと感じました。

実際どうなるかはわかりませんが、各ライブで色のあるステージをするためにテーマがハッキリとする、というのは良いことだと思います。

 

こうした多くの可能性が今後に向けて提示された第9話分析、如何だったでしょうか。

故郷である北海道を舞台としたストーリーで、アニメのオリジナルキャラである鹿角姉妹にもスポットが当たり、姉妹の絆と可能性という私の大好きなワードで彩られた第8話、9話だったので、時間をかけてしまいましたがこうして感想ブログを連続で上げることとなりました。

大切な北海道編の、皆様に取っての新たな気付きや「好き!」への足がかりになれば幸いです。

 

次回は……ラブライブ決勝での勝負曲考察!?

*1:特にμ's3年生組はすごいよね