AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

十六夜まよ(@daimarco16)がおんがくを考えるところです

水色の新世界:「今」を重ね向かう「未来」は

皆様こんばんは。十六夜まよです。

 

ラブライブ!サンシャイン!!TVアニメ2期 第12話「光の海」、そして挿入歌の

WATER BLUE NEW WORLD Sounded by Aqours

素敵でしたね。

今回も挿入歌があり、「歌」を中心としたストーリーの展開、そして物語の本質である高校生の部活動と、その大会出場への意味や意義、「勝つ」こととは?等多くの感動を引き寄せる内容が盛り沢山だったと思います。

この記事では私なりの視点から「大会に出場し、勝つこと」と、挿入歌の楽曲分析を中心に第12話を読み解いていこうと思います。

 

注)歌詞は例に倣い下線と斜体で引用とします。

 

 

●いってらっしゃい!Aqours

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いきなりですがアバンのここで学校に向かって「行ってきます!」と宣言するところ、なんかすごく泣けたんですよね。

学校の名前を、そして生徒や地域の人々の期待を背負うことを覚悟して、いよいよ大会へと臨む出発の段階で、各々がこれまでを振り返って順番に集合し、合流した最後に発する「行ってきます」。

今回、本番直前にAqoursメンバーがそれぞれ向き合うのは、自分自身と、そして「勝ちたいか」という大会出場への本質的なテーマでした。

その一番の動機となる学校のことを踏まえた上で、ここの出発のシーンを観ると感慨深いものがあります。

 

 

●「勝つ」とは

少し本編の内容とは逸れますが、ラブライブ大会は高校生の部活動における全国大会であり、そこには順位をつけ、優劣を決める競争のシステムが取り入れられています。

例えば得点を競う球技や、ゴールへの到達スピードを純粋に比べる陸上競技等と違い、スクールアイドルの大会も審査員や観客の投票というある種の「見えづらい」基準で優劣を決定する芸術分野の大会であると思われるのですが、こういった大会に付き纏うように考えられる1つの不思議な思想があります。

 

「勝ちたいか。勝つために(音楽を)するのか。」です。

 

……少し自分語りが入ります。

私も高校・大学を通して合唱団に所属しており、各種コンクールや大会への出場を経験しました。全国大会で金賞を取るレベルまで勝ち進んだこともありました。

それでもやはり皆壁にぶつかるのです。「勝つために演奏をするのか」と。

 

「いい演奏をすれば満足だ」「自分との戦いなのだから相手は関係ない」といった声もありますし、それはとても高尚なことでしょう。当時は私もそういった、いわば「平和主義な」考えをしていたかもしれません。

ですが同時に、「勝つこと」を見失ってしまうと何も叶えられないという限界も確かに存在しました。

大学時代、私の学年が中心となる年に、その年の開催を目指して計画していた他大学とのジョイントコンサートが頓挫しました。その活動予定だった時間を埋めるため、では何をしようかとなった時に出場を決めたのがコンクールでした。(毎年、コンクールに出るかどうかは協議の上で決める団体でした。)

傍から見れば八つ当たりです。仕方なく出ることにしたのか等と言われることもありました、が、我々はそこに情熱を集中させました。

結果は全国大会初出場、そして金賞獲得。プロの指揮者ではなく、学生指揮者による演奏での快挙でした。

成し遂げられなかったことの悔しさをぶつけ、歴史に名前を刻む。思い返してみれば、あれもある種の「キセキ」の物語だったのでしょう。

「今はただ、勝ちたい」という闘争心のようなものを、当時の私達は確かに持ち、それこそが結果へと繋がるエネルギーであったのは間違いありません。

 

「勝ちたい」も1つの根源的な欲求であり、「楽しむ」や「良いパフォーマンスがしたい」というキレイな動機にも迫るエネルギーを持つことができる。そんな「大会」としての本質に、真っ向からAqoursが挑むのが今回の話の根幹だったのではないかと思うのです。

 

μ'sは、今を精一杯楽しんで、一生懸命走ったら結果がついてきたという奇跡の物語を展開しました。それは本当に眩しくて、誰から見ても王道の素敵な神話です。

Aqoursの物語は、そんな神話に憧れた、ただの人間たちのお話でした。「やれることはなんでもやる」と千歌が宣言したように、やはり大会だって「楽しむ」「輝く」といった気持ちだけでは先に進めなかったのでしょう。

足掻き、もがき、自分を乗り越えて決勝への切符を手にした時に改めて考えるべき「勝ちたいですか?」という問い。

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1期第12話の意趣返し。たまらないですね。

当時は「勝ちたい」というSaint Snowの思想は、どちらかというと不純なものとして見られがちでした。音楽や芸術の分野では、どうしても「相手を倒す」という考え方は直接的には避けられているのかもしれません。

夏大会にAqoursSaint Snowの差として現れた「勝利への渇望」については下記記事でも触れているのでお時間があれば目を通してみて下さい。

 

それでも「Come on」と呼ぶ相手は:吹雪と姉妹の円舞曲 - AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

 

ともあれ「勝ちたい」という本来であれば「楽しむ」とは正反対となり兼ねない要素を持つこと。そのくらいの覚悟と決意がなければ最後の舞台では戦えないこと、を最後に聖良からアドバイスされる形になったのだと思います。言わば、Aqoursが気付くべき「最後の勝利条件」とも言えるでしょう。

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そして「勝つ」ことを意識すると同時に見えてくる他者の存在

第7話で「他のグループなんて関係ない」と宣言した千歌でしたが、自分たちが、学校の皆が勝利への強い想いを抱いていると気付いた時に、他者もまた同じ想いと物語を背負って大会へやってきていることに気付きます。

「勝つ」とは、そんな他の存在すらも薙ぎ倒し、最後に自分たちだけが立っていることを望むということ。

敗者の物語を辿ってきたAqoursには、負けることの悔しさは誰よりも理解できます。

自分たちが勝つことで、他の誰かは敗者になる。そういった気持ちも全て背負って尚「勝ちたい」と言うことは、実際どれだけ強いことか。

神田明神に飾られた他グループの絵馬は、そんな「大会の残酷さ」を際立たせ、Aqoursが勝利へ向けて並の覚悟ではないこと、それでも勝つという選択をする意志の尊さを描写していたように感じました。

 

 

●春の息吹のリフレイン

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一夜明け、メンバーは本番前にそれぞれの気持ちと向き合うために個人行動を取ります。

ここで梨子の弾く想いよひとつになれからの「海に還るもの」は、それぞれの想いを紡いでいく演出と見事にマッチし、非常に感動的なものでした。

そもそもこの曲が上手に演奏できないことがキッカケでオトノキを飛び出し、内浦へとやってきた梨子。そこで千歌達と彼女が出逢ったのがAqoursの始まりのひとつでした。

その因縁とも言える曲を音ノ木坂学院の音楽室で晴れやかな表情で演奏できるようにまでなった梨子の成長と、その歩みには確実に意味があったことが感じられて、とんでもなく涙腺に来る場面でしたね。

梨子がオトノキの思い出をリフレイン。素敵でした。

 

そんな演奏をバックに千歌が他メンバーとの「勝ちたいか」というやり取りを思い返す演出は、決戦前の意思確認というような感じで王道を辿っており、徐々に高まるボルテージを彩るものでした。

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「勿論、勝ちたいですわ。」

と言い切る我らがダイヤさん。

スクフェスでパートナーに設定してあると聴けるボイスに、「黒澤家に相応しいのは常に勝利のみ。覚えておきなさい。」というものがあるのですが、メンバーで一番負けん気が強いのは彼女なのではないかな、と密かに思っています。

それと同時に、生きていく中で当然のように勝利を義務付けられている、なんて側面も存在するのかもしれません。

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そしてその上で、Aqours黒澤ダイヤとして誠心誠意歌いたい。どこであろうと心を込めて歌を届けるのが、スクールアイドルとしてのわたくしの誇りですわ!」

と晴れやかに語る表情には迷いがなく、本当に「好きなこと」であるスクールアイドルと向き合える喜びに満ちているように思えました。

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この想いは「ルビィは一人じゃ何もできなかったのに、スクールアイドルになれてる。それだけでも嬉しい」と語るルビィと共通するもので、スクールアイドルを愛した姉妹の想いはここで繋がっているのだとしっかり確認できました。

勝つことと同時に自分たちの満足をも求めている姿勢、実はとっても欲張りで難しくて、だからこそ「何かを掴むことで何かを諦めない」と唄う想いよひとつになれがBGMとして添えられているのかもしれないと思いました。

そんな、様々な理由を持ちながら、それでも全員がハッキリと「勝ちたい」と口にする決意の確認。少しずつ「想いの欠片」を集めていく、そんな千歌のリフレイン。温かかったです。

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そして動機をめぐる物語は千歌本人へ。

1年前、全てが始まった場所で曜とともに再び走り出す千歌。

伊波杏樹さんが一番好きだと語る1期第1話のアバンシーンと構図を重ねる演出は、24話越しの長く遠いロングパスとなって我々の記憶を掘り起こします。劇伴も重ねてきているあたり本当に憎い演出ですよね。

ラブライブ!サンシャイン!!そのもののリフレイン。あの時と同じ春風に乗せて、いよいよ最終局面へ動き出します。

残るは2年生の決意の確認です。

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「勝ちたい?」という千歌の問いに曜はノータイムで「勿論!」と返します。

「やっと一緒にできたことだもん。」と。そしてその上で

「未来のことに臆病にならなくて良いんだよ。」と今の千歌の僅かな迷いを拾い、想いをぶつけることに対して、曜自身ももう臆病ではありません。

ここまで積み重ねてきた千歌と曜の関係が最高の形で昇華され、この2人はもう大丈夫なんだと安心させられます。曜ちゃん、良かったね。

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そして梨子です。「奇跡」の文脈を用いた上で、

「この道で間違ってなかったって証明したい。今を精一杯全力で、心から!」

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「"スクールアイドル"をやりたい!」

1期第2話のリフレインです。ずるいですよね。ここにきてついに梨子が「スクールアイドルをやりたい」って願いを持ってくるなんて誰も思わないじゃないですか。

普段あまり涙を見せずに、冷静に全体を見ていた彼女が、ここまで感情を露わに「勝ちたい」と叫ぶ。これぞ青春です。

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「ありがとう。ばいばい。」

そして千歌は、最後に「あの頃の自分」と別れを告げ、勝つために普通のまま、怪獣で良いという決意で前に進みます。

「全力で勝ちたい!」という宣言は、先述した想いの全てを背負って勝者になるということ。ここで覚悟完了したことにより、最後の勝利条件はクリアされました。

 

あとは、演るだけ。

 

 

●過去から今へ、その一瞬の交差点

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考察と言うほどのものではないですが、集合のシーンでメンバーが集まっていく際に各学年ごとに時間軸が決まっているように感じました。

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過去を話す3年生。ですが、「ずっと一緒に」というダイヤの「書いたこと」が実現しているこれからは、過去であり未来です。

離れていても、同じ空の下、心は繋がっている。これ本当良い言葉ですよね。

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1年生は未来のことを語ります。きっと来年にもこの3人は一緒にいるのでしょう。

なんとなくそれを不安に思う善子も、それを察して大丈夫、と元気づける花丸とルビィも、1年を通して逞しく成長しました。

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そして「今」を駆ける2年生。千歌のこの後姿、EDと同じですよね。

この背中を追いかけて、皆が走ってきた。そんな「今」のAqoursそのものである千歌と2年生に引っ張られて、1年生も走り出します。

そしてそこへ合流する3年生ですが、いるのは道の反対側。

初代Aqoursと2代目Aqoursが、歩道橋という道の交点でその運命を交わらせます。

この後はまた、それぞれの道を歩む3人と6人が瞬間的に1つになれているその交点こそが、「今」そのものであり、その瞬間の輝きこそがAqoursそのものだという、刹那的な輝くの美しさを描くスクールアイドルの描写だったのかなと考えることができる気がします。

 

 

●高空から望む新世界

さて、いよいよライブパート、曲分析です。

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今は今で昨日と違うよ
明日への途中じゃなく 今は今だね
この瞬間のことが

冒頭、鞠莉→花丸→梨子のソロが繋がる歌声は、鞠莉の柔らかいタッチを活かす形で花丸がふんわりと引き継ぎ梨子がさらに後続の黒澤姉妹に受け渡す構図となっています。一番槍となり先陣を切るまるまりこ。春の風に乗り、ハリケーンブロッサムの本領発揮です。

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重なっては消えてく
心に刻むんだ WATER BLUE

ダイヤとルビィ、それぞれが曲の雰囲気に合わせてかなりの音色の変化をつけているように感じます。ダイヤは重たさを無くし、ふわっと軽い声にルビィはキンキンした高音を抑え、しっとりと優しい響きに。それぞれをキャラの声をキープしながら表現してきている小宮さん降幡さんの、技術レベルの高さを感じるソロでした。

歌詞は「昨日(=過去)」とは違い、さらに「明日への途中」でもないという「今」を刻むというAqoursらしい内容です。

神田明神Saint Snowの2人が語った、「まるで雲の上を漂っているようだった」という表現がそのまま演出となっているのですが、この「雲」は「憧れの舞台」の象徴でまさに「雲の上」の場所であること、そこでの演奏は天にも昇る気分である、という心理描写なのだと思います。その上で、もう一つ仕掛けがあるのですが……。それは後述します。

 

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ギターの疾走感あるイントロを抜けたAメロはまず残りの千歌→果南→曜→善子のソロとなります。

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悔やみたくなかった気持ちの先に
広がった世界を 泳いできたのさ

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"諦めない!" 言うだけでは叶わない
"動け!" 動けば変わるんだと知ったよ

先述したダイヤとルビィの声質コントロールに合わせるような形で、曲前半では全員一貫してしっとりめの音色で声が作られているように感じます。普段高めでピリッとしがちな果南の声も、音程の割に上手く抑えられており、極めつけは善子の「知ったよ」の抜け方が本当に優しく、丁寧に表現されていました

歌詞の「言うだけでは叶わない 動けば変わるんだと知ったよ」はユメ語るよりユメ歌おうで唄われる、「理想を語るよりもまずは行動」という「輝きへの第一歩」の条件を提示しているものであり、Aqoursのこれまでの道のりを端的に表す素敵なフレーズだと思います。

ちなみに、大量の転調(=キーの変更)で印象をくるくると変えてくるこの曲ですが、このAメロからBメロの頭までは「MY舞☆TONIGHT」サビと同じキーが使われており、「道のり」を示すイメージとリンクさせているのかな、と考えることもできます。

 

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ずっとここにいたいと思ってるけど
きっと旅立ってくってわかってるんだよ

3年生パートと1年生パートの対比は歌詞の内容と振り付けそれぞれが真逆のことを行っており、去る者残る者送られる者送り出す者の立場をハッキリと描写しています。

この曲は、大会での決戦曲であると同時に、Aqours1,2年生から3年生への卒業ソングでもあると思っています。だからこそ、3年生は今を重ねた先の未来を見つめ、最後の舞台での輝きを精一杯に楽しんでいるのでしょう。

 

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だから この時を楽しくしたい
最高の ときめきを 胸に焼き付けたいから

そして、Aqoursを復活させて、「今」を創り出した2年生が「この時を楽しくしたい」と歌い上げます。

転調したキーは届かない星へ手を伸ばし、奇跡の波紋(=MIRACLE WAVE)を起こす変ホ長調千歌が掴み取った、決勝へ繋がるメロディです。

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1年生と3年生のハイタッチは、先述した「送る」「送られる」関係の現れのように見えました。立場のスイッチは、これからのAqoursを担うのが現1年生であることを示唆しています。

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そして、この曲最大の演出であるスカートのパージ。

舞い散る青い羽根は、Aqoursの掴んだ希望の象徴か、新たな輝きの可能性か。

モニターの前の少女達にも、その輝きは羽根の形で届けられます。かつてμ'sが掴み、飛ばした白い羽根はSUNNY DAY SONGで全てのスクールアイドルに平等に振り撒かれました。

1期ではそれを掴んだ千歌でしたが、あくまでもその輝きはμ'sの考え方の上でのもの。2期第7話で透明に消えかけるも、浦女の生徒の声で青く色づき再び舞い上がったWATER BLUEの羽根こそが、Aqours色の新たな輝きの形だったと言えるでしょう。

 

そして、「羽根を飛ばす」ことでAqours空から海へと降りてきます。
先に述べた「雲」のもう一つの仕掛けがこれで、サビ前に上昇音階で盛り上がりを演出するギターと同時に、舞台の視界が一気に晴れ、会場一面のWATER BLUEのペンライトが輝きます。これがまさに「光の海」

水の名を冠するAqoursは、「雨」を味方にし虹をかけ、「波」となってついに憧れの舞台へと届き、北の地では「雪」と共に秘めた可能性を呼び起こし、空に昇っては「雲」となり、そして最後にWATER BLUEの「海」に還るものとなります。

全てが自由に形を変える「水」だからこその柔軟な世界観の形成。2期の物語はそんなAqoursの成長と変化の物語だったのではないでしょうか。

 

 

●衣装イメージに込められたメンバーの役割

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ここでロングスカートをパージしたのは冒頭で最初にソロがあった鞠莉・花丸・梨子でした。この3人の衣装は共通で、純朴な「村娘」のようなイメージに見えます。

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そして次にソロがあったダイヤ・ルビィ・千歌の3人が同じモチーフです。これは正統派の「お姫様」でしょうか。

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最後に果南・曜・善子の3人がセットとなっていますね。こちらもドレス風ですが、黒が取り入れられ少し攻撃的に、「女王」といった印象です。

 

「村娘」は途中でそのスカートを脱ぎ捨て、ドレス風の衣装へと変身を遂げます。

梨子・花丸・鞠莉。「変化を望んだ」のがこの3人だったのではないでしょうか。

花丸は本の世界に篭っていた自分から梨子はピアノも、何もかもが楽しくなかった生活から

鞠莉の場合は他2人と少し違い、最初からティアラが頭にあります。これは生まれがロイヤルな家系でありながら、果南やダイヤと一緒にいること(=普通であること)を望んでいた彼女を表すものとして描写されているように思えます。

 

「姫」は各学年の実質的・精神的な「支柱」であると言えます。

千歌は言わずもがな2代目Aqoursの発起人であり、梨子も曜も彼女がいたからこそAqoursとして活動しています。
ですが、彼女だけ頭の飾りが逆に少し「村娘」っぽいのは、普通怪獣の名残でしょうか。

ルビィは函館でのライブを通して、Aqoursの次の時代を担えるリーダーへと成長しているのは第9話を観ても明白でしょう。

そしてダイヤは、空白の2年間を耐え忍び、千歌達にAqoursの名前を引き継ぐことで「Aqours」そのものを守り、繋げてきました。果南と鞠莉を再び繋げたのも彼女の働きです。

 

「女王」はその学年でのバランサーとして働くと同時に、もう一つの役割を持ちます。

現実的な意見を口にし、勢いづくAqoursへブレーキをかける役割が多い善子と果南に、千歌のストッパーである曜。

そしてこの3人は特に「勝ち」を意識した言葉を口にしていたように感じます。

もともと1流のアスリートである曜は、やっと見つけた「千歌と一緒にできること」で迷いなく「勝ちたい」と述べました

学校のため、生徒のためと立場を気にするダイヤや鞠莉に対して、「その2人ともこれで本当に最後だからこそ勝ちたい」と言った果南の気持ちは相当に大きいでしょう。

「勝ちたい?」の問いかけに対して「あんた何言ってるの!?」と反応していた善子にとって、勝つことは当然の目的であり、「感謝しかない」と言った先輩への恩返しであると思われます。

そして「勝ちたい」という気持ちは、北海道でステージを共にした仲間であるSaint Snowのシンボルとも言えます。

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菱形の髪飾りや全体的な色使いは彼女達の想いを受け継いでいるような気がして、さらに「村娘」も「姫」も全体的なドレス感は「Awaken the power」を演奏した時の衣装とイメージが一致しているように思えます。

惜しくも勝利を逃し、決勝では同じ舞台に立てなかった彼女達ですが、そんな想いもAqoursは引き連れて、この舞台に立っているように思えてならないのです。

 

 

●海を渡る歌声

そんな最高の盛り上がりを見せて入ったサビです。

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MY NEW WORLD 新しい場所 探す時がきたよ
次の輝きへと 海を渡ろう

3年生の卒業ソングである、と前述しましたが、このフレーズは特にそれが強いと思います。

それぞれの新しい場所を探して外の世界へと出ていく3年生。

「海を渡る」は海外へ飛び出す鞠莉や果南のことでもありますし、「次の輝き」が次世代のAqoursだとすれば、初代Aqoursを乗り越え、先へ進むことになります。その初代Aqoursを乗り越えるという行動は、大きな海を渡るにも等しい、偉大なことだと言えるでしょう。

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夢が見たい想いは いつでも僕たちを
繋いでくれるから 笑っていこう

ここにきてメンバーごとのカットが渾身の笑顔で映され、最後の転調で「輝かしく確信と希望に満ちる」と評されるイ長調へキーが受け渡されます。

勇気はどこに?君の胸に!もこの調で作られており、きっとこのメロディは「輝きのメロディ」そのものなのではないかと思います。

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今を重ね そして 未来へ向かおう!

そしてラストフレーズは、そんな「今」を重ねて、その先にある「未来」へ向かうというもの。千歌がぐりんぐりん動きます。

「過去」を大切に振り返りながらも巻き戻すことは望まず、「今」が最高と唄ったμ'sに対して、そのμ'sが残した最大の遺産とも言えるドーム大会の場で、「今」を重ね「未来」へ向かおう!という言葉はAqoursの明確な前進と新たな道を歩いて行く覚悟とで彩られていると思います。

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キラキラとしたステージから「未来」を指差す彼女達が見るものは。

 

転調を多用する曲の構成はMIRAI TICKETと通じるものがあり、梨子が繰り出す気合の入った曲ではそんな傾向があるのかなと感じたと同時に、想いよひとつになれ佐伯高志さんの作曲であるこの曲は、そんな「想いの欠片」を集めた第12話の、ひいてはラブライブ!サンシャイン!!のこれまでを総括する、最強の挿入歌であったように思えます。

 

このパフォーマンスがどういう結果を残すのであれ、次回でいよいよAqoursの物語は一旦おしまいとなります。

ホンキをぶつけ合った先に、どういったミライを手に入れたのか。楽しみに見届けることとしましょう……!

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次回は最終話挿入歌によせて。