AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

AQUARIUMと愛のうたをめぐる冒険

十六夜まよ(@daimarco16)がおんがくを考えるところです

決意を秘めて、無限の空へ

皆様こんばんは。十六夜まよです。

 

前回歌詞の紹介をしたアイドルグループ「SOL」が、約半年の沈黙を破り新曲「Sola」をリリースしました。

 

半年間と言えば、全世界を未だ混乱させ、我々から以前の日常を奪っていったコロナの影響がモロに出ている期間ですが、ライブアイドルの世界にも大変な爪痕を残しています。

日常的に人を集め、比較的狭いライブハウスを中心にライブ活動を行い、1対1での会話や軽い接触を伴う特典会をしていたアイドル達にとってそのすべてが封じられる自粛期間は相当に行動が制限され、未だにかつてのような活動には戻れていないと言って良いでしょう。

そんな先行きが見えない不安の中、多くのアイドルが引退や卒業をし、グループ単位で解散を決めたところも存在します。

そこまでいかなくても、活動自粛による影響で「これから」というタイミングで出鼻を挫かれ、なかなか陽の目を見ずにいるアイドルはきっと無数にいるのでしょう。

 

SOLも例外ではなく、その煽りを受けたグループでした。

 

歌声とダンスパフォーマンスの中核にいたメンバー・雪季の精神的な事情による活動自粛が発表され、一度は復帰を果たしたものの、そこから突然の卒業の発表。

1年半前にデビューしてから5人で活動してきたSOLにとって、最初の喪失となる出来事だったと思います。

幸いにも配信とはいえ卒業ライブも行い、この環境の中のアイドルとしては最大限に幸せな卒業を迎えることができたであろう雪季。彼女の未来が明るいものであることを私は切に願っています。あらためて、ありがとう。

 

ともあれ、残った4人はそこから約2ヶ月の時を経て、先日ついに有観客でのライブを行いました。

ソロパートを繋ぐスタイルの歌唱パフォーマンスが多いSOLの楽曲は雪季のパートの比率が自然と多くなっており、それを4人用に新たに組み直すのには相当な練習が必要だったことと思います。

特に、一番演奏機会の多かったであろう「スターゲイザー」では以前の歌割りが相当に身体に染み込んでいるようで、4人での演奏に慣れるのはまだまだ時間がかかりそうですね。

 

そんな中でも4人で前に進むことを決めて、改めて活動をする決意を固めてくれたSOL

 

彼女たちの決意と覚悟と、これまでのSOLとこれからの未来と、そんなすべてを歌に込めて遠く広い空を臨み、挑む新曲。それが「Sola」です。

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Sola

 

この曲を一人でも多くの人に知ってもらい、聴いてもらいたい。そんな想いを込めて、今私は筆を執っています。

 

※歌詞は斜体と下線で表記します。

また、歌割をメンバーごとに色分けし、

英莉(赤)かすみ(青)ゆうり(黄)こはる(桃)全員のユニゾン(緑)

で色付けしています。何かの参考にどうぞ。

 

●訣別と再始動の輝き

 

例えばだけれど 翳(かげ)りゆく空を
この手で包み込めたなら

消えてしまうほど 儚い光も輝き取り戻すかな
君は今どこにいるのだろう

 

ギターのアンニュイな響きとともに堂々と歌い出しを務めるのはかすみ

この曲、イントロがなくてメンバーソロからのスタートになるのですが、SOLの楽曲で冒頭ソロを歌う確率がとても高いのがかすみだったりします。

彼女の歌声は、水晶のようにクリアで儚さを持ちながら、最近はしっかりとした安定感も携わってきて、こういった大事な局面を任されることが多いように感じます。

透明感のある歌声で「例えば」を歌い出すかすみの声に込められた、その想いは如何なるものなのでしょうか。

 

そこへ続いて力強さと重厚な響きをもった歌声で切り込む英莉*1

SOLのメンバーの中でも一番パワフルな歌声を持ち、音域も広く、雪季と肩を並べて2本の柱となっていた彼女の歌声は新しいステージでも健在で、よりその存在感を強めています。

理知的なイメージが強い*2彼女が、情熱溢れるその想いを歌にぶつけるとき、その歌声もまた同じく炎のように燃え上がります

胸に秘めた数多の想いを込めた決意の歌声、それがこの曲での英莉の歌唱なのだと思います。

 

「翳りゆく空」によって「消えてしまうほど儚い光」というのは、今のこの窮屈な世の中で希望を失ってしまう人々のことか、それとももっと具体的に、自由な活動ができないアイドルたちのことなのか。それとも……?という、少し切なさを伴う歌い出しが印象的で、一瞬で心を鷲掴みにされてしまいます。

 

吹き抜ける風に さざめく緑と
並んで歩いた 僕らは
他愛もないこと 話してた日々が
いつまでも続いたらと

 

同様のメロディで再度入り直すのは、ゆうりの大木のようにしっとりとした安心感のある歌声。

自粛期間にフィジカル面でのパワーアップを果たした彼女は、基礎的な筋力向上により歌声の支えが抜群に良くなっており、元々低~中音域での声量があったのも相まって持ち味が抜群に出せる身体の準備ができました。特に他メンバーでは届かない低音域を力強く歌うことのできる今の彼女の歌声は、Solaのような重めの響きの曲にマッチしているように感じます。

そしてAメロリレーを締めくくる、こはるの華やかなマジカルボイス。

彼女が自分でも触れている*3ように歌の面で正直まだ不安定な部分はあるように思いますが、それは伸び代が多いということ。彼女の歌声も、またこの期間で個性が磨かれ、他の3人の誰とも違う響きとしてSOLの歌声を形作っています。

こはるの声、特に高音部のパリッとした響きは鋭く吹く風のようで、その表情の変化とともに春風のような柔らかさや突風のようなエネルギーを伴っていることもあり、その可能性は無限に広がっています。成長が楽しみなんですよね。

 

「吹き抜ける風」「さざめく緑」にセットなのはきっと紺碧の空。

眩しくて明るい世界の中の「他愛もない」日常がずっと続くと、皆そう思っていたんですよね。

 

だから 走り出す未来に希望託して
地図さえ 見ないまま進んだ 

 

Bメロは再び英莉にバトンが渡り、少し上向きになったメロディに乗り、「希望」を持ってがむしゃらに進む姿が歌われています。

「地図さえ見ない」進行方向は、だけど発見や驚きに満ちていて、きっと多くの人にとって輝かしく素敵なものであると、同時にそれだけのエネルギーを持って前に進めるということは不安がない状態で、きっと夢を見ているような状態なのかな、とも思います。

 

雨上がりの空見上げてみた どこまでも 澄み渡る青の下で
戻れない今を生きていくよ 君とまた笑いあえる日まで 

 

そしてドラムロールでの加速を伴い、一気に疾走感を得てのサビ。

ここでメンバー4人でのユニゾンです。

先日、Caelestis.という曲を4人体制で初披露した際に、これまでサビをソロで担当していた(冷静に考えるととんでもない)雪季のパートを誰かが引き継ぐのではなく「全員で歌う」という選択をしたSOL

このサビのユニゾンはその歌声を通じるものがあり、雪季の居ない現実と戦い、打ち勝ち、前へ進むための決意が込められた力強く前向きな意味合いのものであると信じ、願っています。

「戻れない今を生きていくよ」という言葉は、誰へ向けられた言葉なのか。

「また笑いあえる日」を願う「」とは。

勿論、特定の意味が付与されているフレーズではなく、描く人物や光景は人それぞれだとは思いますが、SOLにとって、そしてSOLのファンにとって、一人共通する姿があるような、そんなことを少しだけ考えても許されるのではないか、と思います。

 

 

新しい明日へ 歩き出す君の
眼差しはとても綺麗で
鈍色の日々に 潰されぬように
変わること恐れないで

いつか 満天の夜空で光る星が
離れた 僕らを繋いでく ほら

 

2番はこはるからゆうりのAメロ、そしてBメロは再び英莉が歌い、サビに入らずに間奏へと突入します。

「新しい明日へ歩き出す君」が誰かは語らずとも、その眼差しに決意と覚悟があったことはきっと確かで、だからこそ残される側もその決意に負けないようにと、強い意志を持って日々を進んでいきます。

時に鈍色に思える日々も、その中で変化を恐れずに。

そして、夜空の星たちを同時に見上げている時、きっと「僕ら」は繋がって、同じ世界で生きていることを思い出すことができるのでしょう。

 

この「新しい明日へ進んでいく姿」の要素は「トロイメライ」の歌詞を受けているように感じますし、「変化を恐れないで輝く」姿勢は「Twilight」、「同じ星空を見上げる」のは言わずもがな「スターゲイザー」であるように感じます。

それぞれの歌詞は下記参照。

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SOLのこれまでの足跡を感じる要素を多く持ったBメロから、感情が炸裂するようなギターの間奏。物語は一気に加速していきます。

 

掌からこぼれた感情 止め処なく流れる余韻が
愛しくて 何となくうつむいた
茜色に染まる世界が あの頃みたいに眩しくて
戻りたくなるよ 

 

Cメロもメンバーのリレーで繋がれていて、それぞれの持ち味を活かした歌声で順番にSOLの世界観を形作っていきます。

力強いながらもどこか悲しさを伴うCメロ、「掌からこぼれる」のはどういった感情なのか、その余韻を感じて流れているのは本当は何なのか。

けれどもそれは、俯きたくなる感情でありながら、どこか愛おしくて、これから闇に向かう直前の眩しい茜色が「あの頃」を思い出させて。

そこからの全員での「戻りたくなるよ」という想いは、きっとそんな決意や覚悟の中でも偽ることのできない本音で、そんな気持ちすらも隠さずに表に出したまま進んでいく、という宣言なのかなと思います。

「戻りたくなる」、けれど、決して戻ることはできない、だからこそそれを大切に思い、無かったことにはせず、自分たちの1部として連れて行く。

そういう意思なのだと、私は思いました。

 

同じ空の下で見た夢は こんなにも こんなにも美しいから
どれだけ遠く離れていても 聞こえるよ 君の声が そう

 

そこからの落ちサビがこれまた美しい。

伴奏がずっとギターとドラムで力強く進行してきたところを、ここで一気に開放してピアノにバトンタッチするのも非常に感傷的ですし、こういった場面でこはるの張り詰めた高音は素晴らしいアクセントとなります。

激しい嵐のような「戻りたくなるよ」という感情、過去を想う叫びから、未来を想い優しく歌われる「夢」という言葉。歌詞の内容は過去を想っている段階ですが、そこには希望があり、気持ちは未来に向いているのだという決意をこはるの歌声の優しさと、かすみの歌声の透明感が支えています。

そして説得力に満ちたゆうりの歌声が「どれだけ遠く離れていても」と繋ぎ、極めつけに英莉が燃え上がるような歌声で「聞こえるよ 君の声が」と、同じ夢を見て共に歩いた存在へ、最後の言葉を投げかけます。

最後に、全てを振り切り、前へ進む本当に最後の決意を持って、力強い全力全開での「そう」から、ラストのサビです。

 

雨上がりの空見上げてごらん? 降り注ぐ光が僕ら照らすよ
さあ行こう言葉はもう要らない どこまでも続く空の先へ

 

1番で「雨上がりの空見上げてみた」と歌うSOLが、今度は誰かにその行動を促し、「見上げてごらん?」と問いかける構図が大好きで、そうすると何が起こるかというと「降り注ぐ光」(=太陽の光=SOL)が"僕ら"を照らします。

 

かつて「RAINBOW TRAVELLER」で「雨上がりの空に顔をあげて 涙拭いて歩き出すよ」と歌った彼女達が、「雨上がりの空見上げてごらん? 降り注ぐ光が僕ら照らすよ」と、顔を上げて歩き出す側から、顔を上げた人を照らす存在になっているのが非常に印象的で、やはり「雨上がりの空」をキーワードに「Sola」と「RAINBOW TRAVELLER」は対になっているのだと思います。

位置づけとしても「RAINBOW TRAVELLER」はデビュー曲、「Sola」は4人体制初の曲ということで、それぞれのスタートラインになっている部分も共通しています。

 

そして締めくくりは「さあ行こう」という非常に前向きな言葉と、英莉の「どこまでも続く空の先へ」という、行き先を示す言葉。

 

空は広くすべてを包み、色々な表情を見せます。

突き抜けるような青空や、雨が上がった後の澄み渡る蒼、時に暗雲が立ち込めて鈍色になることもあり、夜の前には過去を思わせるような茜色を見せ、夜は暗く冷たい闇の世界であると同時に満点の星空が広がることもあります。

そして雨上がりの空には虹がかかり、空を見上げた時、どんなに離れた人とだって、「同じ空を見上げている」という共通項で繋がることができる。

いつだって、どんなときだって、別々の志で別々の道を進んでいても、この空は繋がっているから……訣別があってもきっといつでも一緒に居られる、そんな気持ちがこの「Sola」には込められているように感じます。

 

SOLの「Sola」は、この曲に込められた訣別の決意と、新たな一歩を踏み出す覚悟と、過去をなかったものにせずに全部受け入れて進むという意思と、そして輝かしい未来への願い、そういった様々な感情が入り乱れる輝きが今の世の中とSOLの現状にマッチしているように感じて、非常に感情を揺さぶられるものになりました。

 

正直、この感情は一定期間彼女たちを観てきた人間に特有のものだと思いますし、バックグラウンドがない状態で聴いてもピンと来ない部分が多いかもしれません。

だけど私はこの曲が多くの人の耳に触れて、何かの感情をくすぐり、そしてSOLへ興味を持ってくれるきっかけになる曲であることを願ってなりません。

 

 

4人の活動への新たな一歩を踏み出したメンバーの決意の、その一助となることを祈って、今回の記事を終わろうと思います。

 

ここまでお読み頂きありがとうございました。

 

*1:やっぱりえりちが一番好きだ…

*2:アイドル×心理学の動画等、知性溢れるアイドルです

*3:公式ブログ参照